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日本人は歴史から学ぼうとしない。

日本人は歴史から学ぼうとしない。

欧州各国で、他国のスリーマイル原発事故やチェリノブイリ原発事故や福島原発事故を、国民自らの問題として考え、国民が原発を廃止又は減少させる決議をしている。
興味深いことに、第二次世界大戦で日本と共に連合軍と戦った同じ敗戦国として、連合国側から敵国条項により、核兵器保有の夢を絶たれている日、独、伊三ケ国の中でも日本にだけ核兵器を持ちたいとあきらめない保守勢力が存在する。これにより、原発再稼働についてその対応は全く異なっている。

福島原発事故の後ただちに、ドイツではそれまで原発を推進していたメルケル首相は順次、原発を廃止することを決定し、自然再生エネルギーの割合を高めていく選択をした。イタリアでも福島原発事故の三ケ月後に原発再稼働を推進するベルルスコーニ首相に対し、国民投票を要求その結果、95%の国民が原発再稼働反対を決定した。

なぜ原発事故を体験し、世界で唯一のアメリカによる多くの民間人を対象にした原爆テロを二回も経験をした日本が原発を続けようとするのか?日本の保守勢力が、核武装したいという悲願を抱いていることもその理由の一つではあるが、それはアメリカからの強い命令があったからである。

そのアメリカが日本に原発を辞めさせない理由

1)日米原子力協定というのがある。この日米原子力協定っていうのは、原発をアメリカが日本に売るため、逆に日本から見ると、日本はアメリカから原発を買うためのルールです。「原発の慎重な再稼働こそが日本にとって責任ある正しい選択である。原子力の民間利用において、日本がロシア、韓国、フランス、中国に遅れる事態は回避すべきであり、日米両国は連携を強め、福島原発事故の教訓に基づき、国内外の原子炉の安全な設計と規制実施の面で指導力を発揮すべき」という二〇〇〇年、二〇〇七年、二〇一二年と三次にわたって出されたアーミテイジ・ナイ報告書(リチャード・アーミテージとジョセフ・ナイの二人の知日派による報告書)は「(原発の)再稼働こそ日本の責任ある正しい選択」と強調している。 「『日米原子力協定』の存在が、原発ゼロの障害になっています。矢部宏治著『日本はなぜ、“基地”と“原発”を止められないのか』がズバリ指摘していますが、この協定によって『アメリカ側の了承なしに日本側だけで決めていいのは電気料金だけ』という状態です。

日本の原発で使用するイエローケーキはアメリカから購入しなければならない約束がある。日本が原発に依存するほどアメリカは日本のエネルギーの生命線を握ることができる。アメリカは国益が対立した時に日本へのイエローケーキ輸出を止めれば日本経済を破綻させることができる。
2)欧米諸国に原発建設反対運動が起こったので、世界的な原発市場の縮小をカバーするために日本に対し、原発中心のエネルギー政策を要求、次々と新規の原発を造らせた。それと同時に、経営悪化するアメリカの原発メーカーを市場価格の二倍に近い異常に高額な買収金額に次々に日本企業に買収させた。

原発市場を操る国際組織が日本政府をアメリカの原発メ―カーの代理人として新興国への原発売り込みをさせる仕組みを完成させた。
日本政府が売り込んだ原発が同様な福島原発事故を起こした場合は日本政府が国家補償するような条件で契約をさせ、アメリカは一切のリスクと責任を回避し、利益だけが入るグローバル原発ビジネスモデルを作り上げることに成功したのだ。そのような世界的な流れの中で、増大するエネルギー需要を満たすためと、核兵器保有の道を開くために原発を欲しがる後進国が次々と出現した。
日本政府は「自国の国土と国民を地獄に陥れた原発」を日本経済復興のために、インドやアセアン諸国や中近東諸国に、アメリカの代理人として、世界中にアメリカ製の原子力発電所を輸出するために、ODA融資をつけて売り込みに奔走している。

二〇一六年春には、プルトニウムの夢のリサイクルを実現するべく建設された≪もんじゅ≫が破綻、廃炉になる決定がされる。そうなると、すでに残り保管スペースが三十%しかない青森県六ケ所村の工場に保管されていた使用済燃料が日本各地の十七ケ所の原発敷地内に戻される。政府はその受け入れ促進のために突然、放射性使用済燃料保管について地元の交付金を三倍にした。これにより、今後原発再稼働による使用済燃料も原発内で溜められることになる。
日本がもし、原子力発電市場で外貨を稼ぐと考えるなら、放射能汚染の無害化技術や十万年間、地下深い洞窟内で管理しなければならないという使用済燃料保管システムの技術革新の分野であるべきだ。

また、最大の国際貢献は福島原発事故の経験を生かした廃炉システムの技術やより安全性が向上した原子炉開発をすべきである。また、中国やドイツが力を入れているプルトニウムを作らない、コントロールが容易なトリウム原発の実用化、欧米でなされている大地を汚染から守るコアキャチャー方式のより安全な原発発電システム、さらに二〇一五年にアメリカの高校生が試作した低温のガスを使用する安全性が高い小型原子炉などの実用化技術などに研究投資をすべきである。

現在、九州電力は太陽光発電申請の新規受つけを中断している。九州の電力需要は省エネ技術革新や省エネ意識の向上で毎年低下している。二〇〇八年の最大需要1771万キロワットから二〇一五年では1500万キロワットにまで下がってきているのだ。九電が既に認可した太陽光発電設備容量は818万キロワット。
二〇一五年では最大発電量407万キロワットが記録された。九電は太陽光発電事業者から更に700万キロワットの太陽光発電の受け入れを拒否している。
理由は六基の既存の原発(廃炉がすでに決定している老朽化した玄海原発1号も含まれている)すべてが再稼働された時に送電線の容量が不足するからという理由である。九州は太陽光、地熱に恵まれている。東京の霞が関が全国一律に決めた二〇三〇年のエネルギー構成を原発が20%とすることこそ、おかしいのである。   

地域で異なるエネルギー資源が存在する。九州では太陽光発電や地熱発電のシェアーが大きいとする電力のエネルギー―構成が異なる方が自然である。事実、二〇一五年六月四日正午からの一時間の需要1016万キロワットの約40%の407万キロワットが太陽光発電か生産された電力で賄われた。
そしてこの二〇一五年の夏、原発ゼロの九州で、太陽光のお蔭で余裕の電力供給で電力需要のピークを安全に乗り越えることができた。太陽光発電量が増加する夏場には中国電力に売電すればいいのである。太陽光発電の電力を効率のいい蓄電システムを導入するべきである。テスラ社がアメリカで販売を始めた、格安の蓄電池と太陽光発電を組み合わせた技術や、太陽光発電から生まれる電気を水素や酸素にして蓄電できる燃料電池システムも導入すべきだ。
九州の有り余る豊かな太陽を、もっと有効に使えるような知恵や技術を検討しよう。

政府は「原発を無くす」から「原発をできるだけ減らす」に、そして今「できるだけ残す」と方針を変更した。

戦争は大国の「石油」の奪い合いのために画策される。
しかし、大国はその目的を隠蔽し、正義と大義の旗を掲げ、若者を戦場に送る。

「戦争」の反対は「平和」ではない。
「戦争」の反対は「話し合い、交渉」である。
「戦争」は単なる「手段」であるにすぎない。
「平和」の反対は「無秩序」である。
「戦争」は無秩序を作り出す。
原発事故も「戦争」と同じように、
国土と国民を「無秩序」の状態に陥れる。
原発を直ちにゼロにするべきである。
今ならまだ間にあうはずだ。

今ならまだ九州の原発をゼロにすることができる、

「人は集団で考え、集団で狂気に走る。
だが、分別を取り戻すのは一人ずつである」
歴史学者チャールズ・マツケイ

平成二十七年二月六日

# by masashirou | 2016-02-08 20:21  

原発テロは脅威である!小説「龍を見た男」より

この時、山崎がこの後、世界を震撼させるテロ事件に巻き込まれることになろうとは知る由もなかった。

二〇一六年が始まった。

スリーマイル原発事故、一九七九年三月二十八日から37年目、
チェリノブイリ原発事故、一九八六年四月二十六日から30年目、
福島原発事故、二〇一一年三月十一日から5年目。

日本では、三つの人類が経験した悲惨な原発事故の記憶が風化、再び日本政府と電力会社による新しい美しい完璧な安全神話が創られ原発再稼働が始まった。そうした日本を震撼させるテロ事件の準備が、中東の砂漠のテントの中で密かに進められていた。イスラム国は有志連合アメリカ、英国、フランス、ロシア、ドイツなどと共に、有志連合国の友邦としてイスラム国に対し「宣戦布告」した日本でのテロを実行に移すことを決定。

その攻撃目標は、再稼働したばかりのプルサーマル型の福井県の近畿電力の高岡原発三号機と、佐賀県の筑紫電力の巌山原発三号機。イスラム国は、攻撃した場合には、従来の軽水炉よりプルトニウム・アメリシウム・キュリウムなどの超ウラン元素の放出量が多くなるプルサーマル原発を選んだ。時期は、日本海側に多くの原発が立地するので、日本列島に放射性物質を広く飛散させる偏西風が強く吹く五月に決定。世界中が注目する、イスラム国テロ対策を話し合う伊勢志摩サミット開催当日と定めた。イスラム国は、大型ドローン六機に生物兵器と爆弾を搭載して空からのテロ計画を立案。脆くひび割れた石棺と呼ばれるコンクリートで覆われた、チェリノブイリ原発テロ攻撃計画を断念、全くの無防備とも言える日本の原発を攻撃する戦略に変更した。

自爆テロを決行する意思を固めたテロリスト十二名がシンガポール発のLCC航空の飛行機にて福井空港から日本に潜入し、イスラム国を支持する在日北朝鮮特殊工作組織から必要な情報を手に入れ、福岡市内と福井市内に、韓国博愛光のキリスト教会支部という看板を掲げたアジトにて、着々と準備をすすめた。

五月二十四日、伊勢志摩サミットに出席するG7の各国首脳たちが伊勢国際ホテルに集結した。皇太子殿下主催の晩さん会が行われた夜の深夜、イスラム国のテロリストによる、生物兵器と爆弾を使用した同時多発原発テロが決行された。テロ攻撃による破壊ターゲット施設は使用済核燃料冷却プールと放射能廃棄物施設、送電線施設、非常用発電施設及び燃料タンク施設であった。

いずれの原発も原子炉本体は無傷であったが、巌山原発三号機の破壊された使用済核燃料プール施設から多量の放射性物質の塵が偏西風にのり、事故後一時間で福岡市、北九州市上空に拡散した。その日のうちに北部九州及び山口、四国の愛媛県と徳島県は避難勧告が発動される放射能汚染地域となった。

一方、福井県高岡原発三号機から飛散した放射性物質の塵は二時間後には大阪や京都などの関西まで拡散し、五時間後には伊勢志摩サミットが開催されていた伊勢半島まで放射能による汚染地域が拡大した。原発テロ事件発生から30分後に、各国の首脳たちは自衛隊が緊急に手配した大型ヘリに乗り、関西空港に無事に避難、自国の政府専用機にて関西国港から次々と秘密裏に帰国した。

日本の原発は自然災害については、多重の安全システムを組み込んだ設計を基に建設されている。その結果、どんな地震や津波でも安全だという完全なる安全神話の下で、狭い国土に五十四基もの原発が建設された。その安全神話は、東日本大震災でもろくも崩れた。しかし、政府は福島原発事故の汚染水による放射能漏れや廃炉や、住民救済も完了させぬまま、電力会社救済のために、原子力安全委員会が新しく作成した安全神話をマスコミに流させ、次々と再稼働を開始した。その矢先の原発テロである。

原発テロは日本の原発安全設計ではほとんど考慮されていない。特に空からの攻撃については無防備に近い。これは当初から政府内部の機密文書で指摘されていたが、コストを優先する電力会社の意向で先送りされ、決して公表してはいけない機密事項となっていた。

山崎は阿蘇の龍上川地熱発電所の会議室にて原発テロのニュースを聞く。

≪本日未明に福井県の高岡原発三号機と佐賀県の巌山原発三号機に対する同時多発テロ攻撃がありました。昨年暮れに、北九州市の安岡工業戸畑工場から盗まれた大型ドローンが犯行に使用された模様です。犯行声明がイスラム国のサイトに掲示されていますが、現在のところ北朝鮮工作員組織の可能性も指摘されています。犯人グループは警察官三名を射殺し、現在高速船で釜山方面に逃走中です。原子炉本体に損傷がありませんでしたが、放射能使用済核燃料プールに被害があり、多量の放射性物質が飛散した模様です。強い偏西風の影響で高濃度の放射性物質の塵が福岡市及び北九州市に流れています。該当する地域の皆さまはただちに南九州の方向に避難してください。もう一度繰り返します。放射能物質を多量に含む塵が福岡市及び北九州市方面に飛散しています。当該地域の皆さまはただちに南九州方面に避難してください・・・・公共の交通機関はすでに閉鎖されました。車での・・・・・混み合う・・・・高速道路は・・・》

山崎は兄の会社のドローンが使用された原発テロ事件発生に驚いた。楽しいはずの兄たちの北欧のクルージングの旅が中止され、その上、兄の工場も被災する。兄夫婦が帰国するには三日はかかるだろうと思い、山崎はただちに北九州に戻る決意をした。北九州に向戻る車の中で突然ミッキーマウスの着信音が流れだし、モニター画面に電話が入ったという文字が出た。
山崎はフリーハンドで車を運転しながら話をした。兄からの電話であった

「誠一か、・・・つながって良かった。戸畑の本社から原発テロの話を聞いた。わが社の製品が使用されたらしい。至急帰国するが、お母さんも一緒だろうな」
「いや、それが・・昨晩、血圧が198あったので、留守番するって・・・」
「一緒に阿蘇に行くといってじゃないか・・・お母さんが心配だ・・・」
「今、北九州にもどっているところだ。俺も、さっきそのニュースを聞いたばかりだ。政府は、スピーディの放射能汚染予想マップをやっと発表した。事故から六時間、何がスピーディだ。今の風速で放射性物質が拡散される場合、風向きが西寄りに変化すれば二十四万人の住む佐賀市、そしてさらに西に変われば四十キロも離れていない百十八万人都市の福岡市が一時間で汚染され始めることを示している・・・・」
「俺は今、海の上だ。バルト海を航行中のクルーズ船にいて動けない。すまんが、母を頼む」
「わかった。いつ帰れるんだ?」
「明日の朝、ヘルシンキの港に寄港する。本社が手配した切符で、フィンランド航空で明後日には成田に着く。福岡直行便は福岡空港が閉鎖されてとれなかった。東京から新幹線で帰るので到着は三日後になりそうだ」
「放射能の雲がそのころ東京にまで拡散しなければいいけど・・、ISの犯行声明のサイトでは『炭疽菌の生物兵器を使用した』と書いてあるけど、政府は何も生物兵器について発表していない。大丈夫だろか?」
「たぶん大丈夫だ。重油タンクの大爆発で死滅したはずだ。今回使用された炭疽菌は2グラムで、大きさは2ミクロン、一兆五千億の炭疽菌が含まれ、八千から一万個の菌が肺に入ると肺炭疽を発症する。二十万人を死に至らせる量だが、生物兵器は濃度が殺傷能力にもろに関係しているから、薄まるとほとんど効果が出ないんだ。これは日本人に恐怖を与えるために使用したんだ。むしろ、これから拡散する放射能が心配だ」
「2グラムで、二十万人か・・・ずいぶん、詳しいね・・・」
「会社で、農薬散布用の人工頭脳搭載、運搬荷重百五十キロの大型ドローンが、生物兵器に使用される場合のあらゆるケースについて防衛省と十分協議したからね・・・」
「お兄さんのドローンは防衛省がらみ? ということは米軍も?」
「・・・・・」
兄はその質問には無言で答えた。仕方なく山崎は別の質問をした。
「お姉さんは?」
「絹子は落ち着くまで、この船で待機させる」
「それがいい。日本がどうなるか、被害情報を少しも政府は流さない。『今のところ、ただちに身体に深刻な影響は無い』と繰り返すばかりだ。状況が少し、わかってから帰国させたほうがいいと思うよ。姉さんは英語がはなせるの?」
「片言ならできるし、何とか船の中で飯は食える。だから、あと十日は大丈夫だ。それより、母を頼む」
「OK」
「ところで、会社は大丈夫?」
「わからん、電話が通じないんだ。会社よりも母が心配だ。じゃ切るからな」
「母が心配だ」、会社だけに命を捧げて、働いてきた兄がそんな言葉を口にするとは、山崎は嬉しかった。やはり家族だ。

人間は危機の時に本当の自分が現れる。兄貴のことを誤解していた自分が恥ずかしかった。
山崎は車から、自宅にいるはずの母親に安否を確認する為に電話をしたが不通。不安のまま車で北九州市に向かう。途中、高速道路は汚染が広がっていない安全な地域に避難する南下する車で混雑していた。
しかし、北上する車はほとんどなく、思ったより早く母の待つ実家に到着した。無事だった母を無理やり車に乗せ、北九州市を後にしたのは、テロ発生から十二時間後であった。山崎は車が少ない久山から大牟田に抜けるルートで友人が温泉旅館を経営する湯布院に向かった。

夕陽に輝く久住連山の懐かしい山並みが見えてきた。阿蘇で行われた、地熱エネルギーを促進するニューサンライズ計画の阿蘇掘削レースに参加した頃の出来事が、鮮明に脳裏に蘇ってくる。あの時、日本が地熱エネルギーを利用して無限の自然エネルギーである地熱資源を促進していれば、このような災害を被ることは無かったのだ。バックミラーに映る老いた母の姿を見ながら、同じ大学で日本史を専攻するアメリカ人のスミスから言われた言葉を思い出した。

「日本人は起こってほしくないことは絶対に起こらないと盲目的に信じる民族。日本人は歴史から何も学ばないということを僕は日本の歴史から学んだよ」
広島と長崎の原爆被災で二十一万人の民間人の命を失った経験や、福島原発事故で今でも十万人がいまだに故郷に帰還することが出来ず、故郷を失う経験をしても、わずか四年で再稼働される原発。
山崎は思う。
「もし、出来るならあの三十年前の日本に戻りたい」と。あの時も、政府は大きくエネルギー政策を変えようと動き出していた。チェリノブイリ原発事故の教訓から、原発に依存しない石油に代替する自然エネルギー推進をめざしたニュ-サンライズ計画が動き出したあの頃・・・。由布盆地が望める高台に車を止めて、三十年前の記憶を思い出そうとしていた。目の前には朝霧に包まれた由布盆地が広がっている。山崎はこれが現実だとは思いたくなかった。すべてが夢の中だと思いたかった。長い苦難の日々が始まった。




第二十四章  金継ぎ


悪夢のようなテロ事件から、四年が過ぎた。
日本は見事な奇跡の復興を遂げた。この背景には、二〇一七年からアメリカやカナダから安いシェールガスやシェールオイル、経済制裁を解かれたイランからの原油やロシアからの天然ガスが輸入されるようになり、日本経済が大躍進し、元気を取り戻した。株価も32000円台を回復していた。

二〇二〇年、五十年ぶりの東京オリンピックの開催の日を迎えた。これは、二〇一六年に誕生した台湾の親日の女性総統、蔡英文の呼びかけで、台湾・インド・インドネシア・ベトナム・フィリピンなどの親日・反中のアセアン諸国などが中心になり、国際世論を動かした成果であった。二〇一七年、中国は、習近平体制が軍のクーデターにより崩壊し、七つの軍の将軍たちが治める連邦国家になった。
歴史をひもとくと未来が見える。アドルフ・ヒットラーが率いるドイツ帝国が首都ベルリンでオリンピックを開催したのが、一九三六年、それから九年後の一九四五年に連合軍に負け、ドイツ帝国は崩壊し、西ドイツと東ドイツに分断された。ソビエト連邦がオリンピックを開催したのが、一九八〇年、その九年後、一九八九年、ベルリンの壁が崩壊し、分断された。中国も二〇〇八年にオリンピックを開催し、その九年後二〇一七年に分断した。歴史は繰り返す。情報を遮断する独裁国家が世界中から情報と人が集まるオリンピックを開催すると、九年後に異変が起きるという不思議な原理が働き、国が分断されるのだ。

かつての旧中国であった七つの連邦国家から、三つの国、チベット共和国・ウイグル共和国・上海国民共和国なども日本支援する国々として参加し、《日本復興を支援、アジア再生》をサブテーマにしたオリンピックをという機運が盛り上がり開催にこぎつけた。しかし、一番の原因は中国の分裂により、日本がふたたびアメリカに次ぐ、世界二位のGDP大国に復活して、アジアの盟主に返り咲いた事である。
旧中国が投資したインフラ事業はすべて凍結され、日本に事業継承と融資をもらうことをアセアン諸国は熱望した。

放射能汚染で被災した九州も少しずつであるが日常を取り戻そうとしていた。
原発テロによって汚染された西日本地区では、画期的な放射能を無害化する技術が実用化されて、広域の放射能汚染除去作業が進められている。

その技術とは次のような技術である。水を不規則な振動で撹拌しながら陰陽の両極を同じ水槽内で電気分解すると、HHOガスと呼ばれるガスが発生する。火をつけると、「爆発」の逆の現象、つまり、「爆縮」し温度を下げるという不思議なガスである。このガスを使用して放射能を無害化するのだ。

原理は電解ガス発生場に振動を加えると発生したHHOガスが乳化状のマイクロナノバブルになり、 その微泡の中心から正、反ニュートリノなど情報量子エネルギーが湧き、正ニュートリノの作用で別の物質が生成する。このガスにより物質の元素番号を減らしたり増やしたりして物質を変化させる。放射能物質を無害化する革新的技術である。例えばこの技術を使えば、放射性物質である原子番号55のセシウムが原子番号56のバリウムという胃潰瘍のレントゲンに使用される放射性の無い安全な無害化された物質になる、下町の工場の発明家の八十歳の大政龍二博士が、二十年前から有明工業大学と合同で開発を進めていた研究が花開いた技術である。

福島原発事故の除染の際にも政府に提案していたが、地方大学の技術であると採用されなかった技術であった。あらゆる学会が東大を頂点とする中央中心の派閥で構成されている。こうした常識を覆す研究や発明や発見は地方の大学や町工場の技術者から生み出されるのが日本の現状である。チェリノブイリ原発に隣接する汚染された水源の無害化実験をこのHHOガスを使用し、二年間かけて検証され、ついにロシア科学アカデミーが認めたのだ。その後、日本でも一年間の放射能無害化実証試験が成功した。

しかし、北部九州地区の除染作業が完全に完了するのは30年以上要すると判断され、九州の中心都市は福岡市から熊本市に移動した。九州は原発ゼロを掲げた新しい政府決定により日本の自然エネルギーの産地として復活する道を歩き始めていた。ただし、新鮮な水産物と農産物の生産拠点として注目されていた佐賀県や長崎県や福岡県は、放射能汚染地区指定され、ブランド価値を完全に失った。
その失った価値の代償として政府は、九州復興対策として二兆円の九州原発被害復興予算を計上した。立ち入り禁止となった巌山原発周辺地区50キロ周辺に十二ケ所の放射性廃棄物最終処分場が建設された。その特別地域に、全国の原発の今まで保管されていた使用済核燃料や福島原発事故で最終処分場受け入れ反対で宙に浮いていた放射性廃棄物をすべて受け入れるという条件が付帯されていた。しかし、その密約は地元住民には秘密にされていた。

原発で潤っていた地方自治体は近隣の自治体の反対決議を抑え込むために政府首脳部に隠然と力を持つ引退した首相経験者に依頼した。その高額な九州再生交付金利権をめぐって、新しい「被害補償原発村」が出来上がった。今回のテロ事件による原発事故の責任問題は、結局、電力会社も政府も責任を取ることもなくうやむやに処理をされた。

さて、この物語に登場した人物その後の人生を最後にお話して物語を終えようと思う。

山崎の元妻の尚子は証券会社を早期退職し、東京でNPO法人の子供難病センターの理事を務めている。また、尚子は今回の原発テロで両親を失った子供たちの教育を支援する新しいNPO 法人を北九州市に立ち上げるためにこの数年間、奔走していた。偶然、テレビで知った二十四歳の女性社長がその趣旨に共鳴し、クラウドファンド「DREAM  LADY4」から五千万円を出資してもらい、テロ事件で被災した子供たちの育英奨学組織を設立した。
難病で苦しんでいた山崎の息子龍三は新薬で奇跡的な回復を遂げ、母のNPO 法人で自分と同じように難病で苦しむ子供たちを助ける仕事をしている。


若かった義明は今年55歳になる。康次郎の事業を継承し西部興産の社長に就任し、今でもレベッカと一緒に熊本で仲良く暮らしている。
志保は義明の母として、12年前に他界した亡き夫風間康次郎の設立した西部興産会長として社長となった義明を支えている。孫の風間ケンはひとりフィリピンのマニラに暮らしている。

レベッカがフィリピンを去った後、マキノ大統領は、翌年の一九八七年、憲法改正をおこなう。《外国の軍事基地、軍隊及び施設は国内に置かない》とする憲法である。その五年後の一九九二年、アメリカの軍隊が治外法権状態で占領していたアメリカの軍事基地を完全撤退させた。これをもって五百年続いた欧米の軍隊がアセアン諸国から完全に撤退することになる。『日本はなぜ基地と原発を止められないのか』の著者、矢部宏治氏はこう言う。「憲法とは小国が大国に立ち向かう最大の武器である」

マキノ新大統領は、二〇一四年、風間ケンをフィリピンに呼び寄せ、27歳の若さで内閣参事官に抜擢した。アメリカの軍隊を、対等な条件でフィリピン軍が管轄する基地に期間を定めて駐留させる交渉を風間ケンに担当させた。風間は、見事に国家の主権を守りながら、アメリカ軍隊を駐留させる難しい交渉をまとめ上げた。現在、南沙諸島のサンゴ礁に中国が造成した領有権問題の解決に当たるために働いている。実は、二〇二〇年東京オリンピック支持をフィリピン政府に決定させ、アセアン諸国首脳たちを説得したのが、この風間ケンであった。

山崎の母は避難生活の心労から事故から二年目に他界、94歳で人生の幕を閉じた。母の最後の二年間を看取る事ができ、山崎は長くコスタリカでの仕事のために親の面倒をみられなかったという後悔の念から解放された。山崎は母の葬儀を終えると、再びコスタリカに戻った。
山崎は飛行機のなかで、母の最期の言葉を思い出していた。

「お母さん、今、北九州の除染も進んでいるからいつか、また家にもどろうね・・・」

山崎が母を励ますためについた最後の嘘である。

「帰れるものなら、帰りたいね。でも、一度壊れた茶碗は二度ともとにはもどらないんよ。昔の人は、壊れた茶碗の破片を丁寧に拾い集め、金をまぶした漆で金継ぎして使用したんよ。大切なことはね、壊れた茶碗でも更に価値をもたらす、その金・・・知恵を見つけることなんだよ・・・そしてどうしてこんなことになったのか、どこで間違ったのか伝えていかなくてはね・・・」

≪金継ぎ≫という言葉から「金で接着する」と誤解する人が多いが、天然の接着剤である「漆」を金継ぎの主役として使用する。漆で接着すると継ぎ目に漆の跡が残ってしまうので、それを隠すために金粉を使う。金粉を施すには、蒔絵<まきえ>と同じ技法が使われるが、修理後の継ぎ目を「景色」と称し、破損前と異なる趣を楽しむのだ。金継ぎされた茶碗は「景色」が変わるので、茶碗の裏表が変わることもある。日本人は人為でない自然の傷がつくる景色を楽しむのだ。
壊れた茶碗の思い出を高価な修復費用をかけることで子孫が大事にし、金継ぎされた茶碗や漆器を次世代に受け継がせ、その物語を語りつがせる知恵ともいえる。それはもとに戻らない事実をはっきりと認識して、その災いの中から更に素晴らしい価値をつくろうとする。日本人は金継ぎされた傷は偶然が作り出した美と認め、造形の中に自然、神を見出すのかもしれない。日本人はこうして、壊れた陶磁器に侘<わ>びや寂<さ>びを感じる感性をはぐくんできた。壊れたから捨てるとういう西洋の考えの対極にある文化である。「禍福あざなえる縄の如し」という老子の考えにも通じる。

山崎は、日本の奇跡的な復興成功の理由には、この金継ぎの精神があったのかもしれないと考えている。

分裂そして対立と憎しみの連鎖が拡大する国際社会に、日本が貢献する道は、壊れた世界を金継ぎ精神で、素晴らしいひとつの世界に再び蘇らせる道しかないと山崎は思う。母の手を握りながら、故郷の父との思い出がいっぱい詰まった故郷や家で最期を迎えることができない母を哀れに思い、流れる涙を止めることができなかった。

山崎は、美しい多様性に満ちた森と共存する美しい国で自分の生涯を終えるつもりだ。日本の海外協力隊からコスタリカの小学校で地熱エネルギー素晴らしさを啓蒙する巡回授業をこの夏から始めることを依頼されたことも、山崎がコスタリカに戻る決意をした強い要因になったことも事実だ。子供たちは未来の懸け橋だ。山崎が借りている別荘があるアレナル火山の周辺は日本商社が融資する地熱発電計画が進行している。国は違っても日本企業と一緒になってコスタリカの子供たちの未来のために地熱エネルギーを普及させるお手伝いをするつもりだ。

あの原発テロによる放射能被害を経験した日本だが、山崎は熱しやすく冷めやすい日本人が、今後とも日本の地熱資源活用を真剣に継続してくれるとは期待できないと思っている。石油価格がバーレル当たり30ドルを切れば再び、経済性優先路線が復活して電力会社や官僚たちが地熱開発を妨害するするだろう。その時、歴史を学んだ若い世代が大きく声をあげて、彼らに次のように告げることを山崎は信じたいと思う。

「この九州の大地を安全でクリーンな大地として、我々は子供たちに残したい。地熱などの自然エネルギーで全てのエネルギーでまかなえる大地にしてください」と。

# by masashirou | 2016-02-08 20:18  

日本の本当の支配者ℋいまだにアメリカである!

「山崎さんなら、ご存知かもしれませんが?日米原子力協定には、原発を停止した場合のアメリカ企業が受けた損害についてアメリカ企業に日本政府が補償する条項が盛り込まれているのです。アメリカ側の了承なしに日本側だけで決めていいのは電気料金だけなんです。日本は戦後七十年以上たった今でも完全にアメリカの完全な植民地なんです」

「そんな・・・・・」山崎は言葉を詰まらせた。男は淡々と言葉をつないだ。
「日本の総理大臣は、・・・アメリカの傀儡(かいらい)でないと存続できません。大臣もそうです。TTPでアメリカに妥協しなかった甘木大臣が調印百万円の贈収賄事件で辞任しました。はめられたのです。アメリカの命令したことを忠実に実行する総理大臣や大臣のみが長期政権を担当することが約束されるのです。名前を言わないでもお分かりになると思います。私は田中角栄さんに二年間おつかえましたが、一番官僚として誇りを持てる日々を過ごせました。すごい総理大臣でした。いまでも、尊敬しています。
角栄さん、あえて角栄さんといわせてもらいます。角栄さんは、アメリカに無断で中国との国交回復を企てました。アメリカにとって、日本と韓国、中国に手を組まれることは脅威であり、再び、日本がアメリカに対抗できる強いアジアの大国になることに恐怖を感じるのです。あらゆる手段をつくし、CIAが三つの国を永久に憎みあうように仕掛けます。田中さんはアメリカという虎の尻尾を踏みつけた。だから、贈収賄情報を検察にリークして田中総理を失脚させたのです」

突然、男が激しく咳を始めた。ヒューヒューという音が山崎の胸を締め付ける。しばらくして、男が荒くなった呼吸を整えるように深く深呼吸をした。男は重い呼吸器系の病に侵されていた。男は数秒の間、上を見て呼吸を整えようとしたが、ふたたび、激しい咳が止まらなかった。まるで、日本を覆う闇の中の汚い塵を必死で吐き出すように思えた。

「大丈夫ですか?」
「水を・・・ください」
水をコップに継ぎ足すと、男は一気に飲み干した。再び低い声でゆっくり、喋り出した。
「欧米の国が植民地から手を引くとき、その国の周辺にトラブルの火種を仕掛けてから撤退する戦略をとるのが常套手段です。北にロシアの北方領土問題、西には韓国の竹島問題や慰安婦問題や北朝鮮の核武装問題。南には中国との南京大虐殺問題や尖閣列島問題。国内では沖縄問題こうして、アメリカは日本がアメリカの命令を聞かないと、CIAがその火薬に火をつけて日本がアメリカの軍事力を必要とする緊張状態をいつでも作れるのです。
自分の国益のためならどんなことも企てるからこそ大国になれるのです。まず、国益を最優先するのです。ロシア、中国も同じです。日本はどの大国と組むのがベターなのか?。ロシアと中国は共産主義の独裁国家、アメリカ以上に野蛮な卑劣な国です。選択肢として、これからも、おそらく、アメリカが最も信頼できる唯一の大国でしょう。だから、国を守る為に、我々官僚は政治家に少々の不条理な要求でも呑むように指導してきたんですよ・・・」

男はワイングラスに手をかけ残っていた赤ワインを飲みほした。
山崎を真正面から凝視しながらつぶやいた。

「アメリカの日本占領政策に『ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム』(戦争についての罪悪感を日本人の心に植え付けるための宣伝計画)があったことをご承知と思いますが・・・」
「太平洋戦争は、日本と米国とが戦った大戦であった。それを、日本の「軍国主義者」と「国民」とを対立させ、現実には存在しなかった「軍国主義者」と「国民」とのあいだの戦いにすり替える計画ですね」

男は、再び、グラスに残っていたワインにすべて飲み干した。
「そうです。これがまだ続いているんです。日本を分断する。古い日本と新しい日本を分断させ、対立させる。伝統的秩序を破壊し、アメリカに戦いを挑まない日本の永久革命を完成させる。日本人が大戦のために燃え上がったエネルギーは、二度と再び米国に向けられることない。恐るべきCIAの占領政策です」
「今もですか?」
「政府が、日本が『戦える普通の国』になるために憲法改正をすることを最大の政治課題にしています。二十一世紀の日本の真の独立と国益を基盤にした戦略もなく、本当に国土を焦土とする戦争の覚悟もその対策もせず、特に、慰安婦問題では、短期的な国益のために、日韓合同声明を出した政府に失望しました。未来の子供たちに禍根を残す決定です。『日本軍が二十万人の少女を拉致し、強制連行し性奴隷にしたことを日本政府が認め、10億円のお金で韓国政府と解決することに合意した』と一斉に世界中のメデイアが報道しました。産経新聞ソウル支局長の突然の無罪判決もそうです。アメリカが日本の外務官僚と韓国に命令したんです。アメリカにとって、日本や韓国の名誉など、関係ないのです。アメリカと戦った日本の軍隊の名誉を貶める・・・それこそが目的なのです・・」
男はしばらく上を見上げていた。まるで神に問いかけるような仕草をした。

「原発再稼働デモには、日の丸の旗を掲げ、街宣車から大きな声で『愛国日本』を叫ぶ過激な右翼団体が妨害行為をします。英国のテレビBBCによると、その中には、韓国や北朝鮮の在日エージェントが組織した団体が紛れているそうです。日本のマスコミではタブーですが・・、街宣車に《韓日同盟》と書いて北朝鮮の核ミサイル反対を叫びます。これが、韓国系。《竹島返還》《慰安婦像撤去》という旗を掲げているのが、北朝鮮系です。どちらも「《中国の尖閣問題とロシアの北方領土問題、反原発撲滅》は同じ活動目標にしています。彼らは、日本で過激なヘイトスピー・デモなどの反韓国運動や反北朝鮮運動を展開しています。いわば、南北対立を愛国右翼に偽装して、日本で活動しているのです」
「《日韓同盟》と書いてないので、すぐわかりますが、しかし、どうして、尖閣問題、北方問題、原発再稼働には、両方の右翼団体は協力して行動をしているのですか?」と山崎が尋ねた。
「どちらも、CIAから命令を受けているのです。アジアの三つの国を永遠に分断させるためです。『美しい国日本を守る・・・』とかいう美名のもとで活動しているので、普通の日本人には,彼らを愛国的日本人が運営していると勘違いしています。彼らを使い、反米的な政治家や経営者に対し、ほめ殺し、殺人や脅迫などの右翼テロを仕掛けるのです・・・、日本人による愛国運動という仮面を被って行動しますから、国際問題にならないで、テロ活動ができるのです。
かつての玄洋社の頭山満や西郷隆盛のような、欧米の理不尽なアジアでの行動に抗議するような本当の愛国者とは異質の右翼といえます・・・」
「よく、敵対している相手が実は協力関係にあるという、よくある例ですね。六十年安保の時も極左と極右にアメリカの資金が流されていましたから・・・、アメリカはそういう仕組みを作るのがうまいですからね」と答えると、男は笑みを浮かべた。

「そうなんです。『美国日本』を主張する右翼的な組織は、韓国の世界真理キリスト教会が資金を提供しています。この宗教団体は北朝鮮の金ファミリーとも強いパイプをもっています。日本の保守の先生方も知りながら、選挙協力やお金目当てに彼らの会合に参加します。何しろ『美しい日本を取り戻す運動』ですから保守としては反対できません・・・韓国や中国ではアメリカを美国と書きます。日本が《美しい国》になるということは、日本がアメリカの属国になるという意味です」
「先生は、・・・憲法改正に反対のお立場なんですか?」
山崎は目を大きく開いて、見上げるように質問した。

「この憲法はアメリカが、二度とアメリカと戦えなくするために、日本を弱体化する目的で敗戦国日本に押し付けた憲法ですよ。自衛権や交戦権も認めないような憲法ですから、海外で働く百二十万の日本人や観光で海外旅行する千六百万の日本人が戦争に巻き込まれて、帰国できなくなっても、自衛隊が救出に行けない。また敵が本土に上陸しも、国内で国民を守るために戦えないように縛っているのが、今の憲法です。日本には保守派は存在しません。保守とは《伝統文化、国土と国民、国体を守る》のが保守ですが、その意味で保守は、敗戦後、この国には、存在していません・・・」
「私もそう思います」
「しかしね、山崎さん・・・国の形を変える、国の憲法を変えるには、国民自身が自からが考え、国民自らの意思で変えるべきものです。ところが、今回の憲法改正は国民に十分論議もさせずに進めようとしています。今までの日本政府は、アメリカが強く自衛隊を戦場に派兵することを求めても、『これはあなたから創っていただいたアメリカがおつくりになった素晴らしい平和憲法ですから、派兵できません』と答弁してきたのですが、・・・アメリカは、そうした日本の対応が気に食わなくなったのです。二〇〇四年、リチャード・アーミテージは当時の中川防衛大臣に対し、『憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている』と発言しています。つまり、

『平和憲法を改正してアメリカと集団的自衛権を発動してシリアやイラクでの軍事行動がとれるようにしろ』と命令しているのです。安保関連法案、特定秘密保護法、原発再稼働、従軍慰安婦問題は、すべてアメリカが政府に提出したアーミテージ・ナイレポートを、そのまま実現したものです。日米合同委員会という組織でアメリカが直接、霞が関の高級官僚とあらゆる分野について毎月二回話し合い、すべてが合意した密約として決まります。政治家は手足にすぎないんです。
日本が原発を受け入れた時と同じです。原発導入にはCIAのエージェント名『PODAM;我、通報す』である正力松太郎が動きました。十分な国民の合意を形成する手段を踏まずに、一部のアメリカに追従して利権を得ようとする《正力》のような日本人たちにより、すべてが既成事実として進められていく。
国民全員の理解と合意を取った上で行動してゆくことが一番の国の安全保障の要のはずです。山崎さん、未来永劫、日本の経済と政治を、今度は軍事を裏でコントロールする。アメリカにとって日本をいかにコントロールするかは、アジア戦略上最大の問題であり、安全保障にかかわる重要な問題なんです。これは戦後、少しも、かわっていないですよ・・・」

山崎は沈黙した男につぶやくように話した。
「僕の友人で防大出身の官僚が、日本蜜蜂について話をしてくれました」
「蜂?」男が不思議そうな顔をして山崎を見た。
「僕は子供のころスズメ蜂にさされたことがあり、もう一度刺されたらアレルギー反応で死ぬと医者から言われています。そういう話をしたときに、友人がこの蜂の話をしたんです。日本蜜蜂は小さな体しかありませんから、最初から集団で戦う戦法でスズメ蜂と戦うのです。日本蜜蜂が羽を高速振動させて出す熱エネルギーは相当なものです。スズメ蜂などの外敵の襲来にあったとき、スズメ蜂を大群で取り囲み、中心の温度を摂氏五十度近くまで上げて熱で殺してしまいます。蜂球と呼ばれます。自分の身体より十倍もあるスズメ蜂でも、この集団攻撃で倒すことができるのです」
男が深くうなずく。
「彼は、その話の後こう言いました。『自衛隊だけで日本の本当の国防はできない。国民全員が自分の国土や国の文化、伝統を愛し、守るという強い合意形成が不可欠なんです。軍隊まかせの武器だけの防衛は弱い』って。今回の原発事故は大型のドローン、わずか六機で日本を破壊しました。《ドローン》とは戦う雄の蜂を意味します。今こそ、この強大な大国、スズメ蜂と戦うには日本蜜蜂のように国土と文化を守るために、集団で戦う情熱が必要だと思います・・・・」

桝井幸三の目に涙がかすかに光るのを見た。
山崎が立ち上がり、深くお辞儀をして、まだ語りたい様子の桝井幸三に別れを告げた。
ひとり漆黒の闇が広がる皇居前広場の森の中をひたすら歩いた。山崎は言いようのない深い悲しみの中にいた。その闇は日本の中枢部、東京の霞が関まで広がっているように、いや、日本全体を包み込んでいるようにも見える。高校の修学旅行以来五十年ぶりに、靖国神社についた。鳥居前に立つと、靖国のうっそうと広がる闇の中に参道にともされた小さな灯篭の薄暗い灯りが見える。確かにこの森にはアジアを五百年間、侵略の限りを尽くした欧米列強諸国に勇気をもって戦い、死んでいった無名の《日本蜜蜂》たちの魂たちが眠っているように思える。

そして、目を凝らすと、この漆黒の森には鎮魂されてない、無数の孤高の《日本蜜蜂》の魂が悲しげに覆っている。日本古来の道義を失わせる魂の西洋化に異を唱え、独立自尊を訴え、強大な明治政府に戦いを挑んだ英雄たち。反乱者という汚名を着せられた西郷隆盛や玄洋社の頭山満、そして、佐賀の乱、神風連の乱、萩の乱、秋月の乱、福岡の変などの、九州や長州で決起した真の愛国者たちの魂がこの深い森に向かって、言葉に出せない悲しみを訴えているように思えた。
山崎は神殿のある方向に、しばらく目を閉じ、頭を下げた。

地下鉄虎ノ門駅から品川駅まで地下鉄で移動し、品川駅前から『相模屋』旅館跡まで歩いた。旅館『相模屋』は、十七人の水戸浪士と一人の薩摩藩士が宿泊した宿である。桜田門外の変の刺客たちは、アメリカとの不平等な条約、日米和親条約を調印した井伊直大老暗殺の為に、ここから黎明に愛宕山にある愛宕神社に詣で、ことが成就することを祈念し、桜田門に向かったという。
山崎はその旅館跡に建てられたビジネスホテルに宿泊した。

我々は時間と共に進化していると考える進歩史観は、ここ200年くらいの話なのだ。科学が人類を進化させているのは物の世界だけに限られている。むしろ、精神世界では退化している。現代人が2000年以上前に誕生した宗教や哲学を心のよりどころにしているのがその証拠だ。天皇が支配した古代が本当の国の形であるという水戸史観も同じだ。素晴らしい未来は過去にあった。イスラム国の原理主義も、ムハンマドの時代に戻ろうという下降史観に起因している。西洋でも同じだ。ローマ・ギリシャ文明を復興しようという中世のヨーロッパのルネサンス運動も、キリストの時代のキリスト教に戻ろうというプロテスタント運動も、世界を2分したマルクスの共産主義も原始社会に素晴らしいユートピアが存在したという歴史観をベースにしているのだ。古いものから新しいものが産れる。これが、人類共通の歴史観といえるのだ。過去を学ぶことでより良い未来を創る。『温故知新』『初心忘るべからず』の日本人の知恵は現在でも生きている。「昔はよかった」と年寄りが語るのも5000年以上から世界中の老人たちが口にしている。21世紀は科学に対する信頼が崩れ、古い精神文化が蘇る世紀だと言えるのだ。

山崎は朝早く、品川駅から浜松町へ向かい、モノレールに乗り換えて、新しく生まれ変わった新羽田空港に到着した。モノレールの車窓から見えた光景は、アメリカの都市そのものだった。高層ビルが林立する東京が山崎の眼前にあった。巨額の負債を抱えて一度、破たんした日本航空は、JALという英語の会社名を斜線で分断した不吉なマークから、日本を象徴する鶴のマークに戻し、見事に再生した。山崎はその鶴のマークを尾翼に大きく描いた日本の翼、日本航空の飛行機で、アメリカのコロラド州ダラスに飛び立った。

三十五年前にロスに逃げるように、飛び立ったときに感じた日本に対する否定的な感情は無かった。むしろ桝井幸三のような、真剣に信念を持ち日本を変えようとする官僚たちがいることに誇りをもった。また、いつの日か日本に戻ろう。

山崎はこの日本が好きだ。
自由を求める移民を受け入れ、多様性を受け入れるアメリカも好きだ。
しかし、いつの日か、アメリカから独立した誇りある日本を見てみたい。
それは見果てぬ夢かもしれない。
時代が移り変わる。
世代が交代する。
肉体が滅びても生きざまが継承される夢がある。
この夢の中でしか生きることができない「龍」の物語は日本人が夢を見る限り長く語り継がれるであろう。



# by masashirou | 2016-02-08 20:13  

「龍を見た男」小説からの引用です。

山崎がこの35年間、抱き続けた三つの疑問がある。

《なぜ、夢の高速増殖炉もんじゅが成功しなかったのか?》
《なぜ、日本だけがチェリノブイリ原発事故があった一九八六年以降も原発を作り続けたのか?》
《なぜ、ニューサンライズ計画の地熱有望地区での試掘がすべて失敗におわったのか?》

桝井幸三は初対面の山崎に三つの疑問の解というべき驚くべき真実を語りだす。

「それはですね。オフレコでお願いしますね。いまでも、関係者がまだ政府中枢部に生存しておられますからね。また、CIAは自前でプルトニュウムを生み出す福井県白木に作られた高速増殖炉もんじゅは初めから失敗させるためのプロジェクトとして発足させたんです」

母の先祖が信長の執拗な追手を避けるため白木谷に落ちのび、誇りある名前『朝倉』から『白木』に変えた。そのいわれにつながる高速増殖炉もんじゅが姉川の戦いから四百三十年の月日を超えて自分の前に突然現れた。 

「もんじゅは、あの事故さえなければ、成功していたんですよ。何者かが、もんじゅ運開から三ケ月後 ナトリウム漏洩火災を発生させました。わざと、角のついた温度センサーを配管内にセットし、それが原因で、配管内に渦がおこり、ナトリウムが漏れだしました。ナトリウムは激しく発火し、大火災になりました。また、五年後、非常用ディーゼル発電機を故障させ、さらに、最終的に今度は三トンの鉄のかたまりを原子炉内に落下させたのです。これにより完全にもんじゅを停止させることに成功しました。事故発生後、復旧作業の担当課長が、謎の自殺。変死体が敦賀市内の山中でみつかりました。ご存知だと思いますが次々と関係者が死んでいくんです」
「はい、事故のビデオ隠蔽問題を内部調査していた担当者である総務部次長が、ホテルから転落し、亡くなった・・死因が警察発表と違うことが後で発覚し、大問題に・・・」

「CIAの手口です。秘密を知った、真実を知る人間がこの世から消えてしまうのが最大の安全策です。反対しました。そんな馬鹿な話があるかって。上司から脅されました。部署を変えられ、三年間、仕事を取り上げられました。それで、早期退職を申し出ました。退職金はなぜか想定の二倍でした。私は抗議して通常の退職金以上は返済しましたが・・・、一九八六年当時、アメリカが一番懸念したのが最大の原発マーケットになりつつある日本で、発生したチェリノブイリ原発事故により、原発反対運動が再燃することでした。欧州では激しい脱原発の運動がおこっていましたから、そこでニューサンライズ計画を立ち上げさせたのです。結果はご存知のように、太陽熱、風力も地熱もすべてだめだという結論になりました」

「では、最初から新エネは、だめだとする答えがあって仕組まれたニューサンライズ計画だったんですか?」
「そうです。日本人を洗脳するためです。自然エネルギーがいかに使えない脆弱なエネルギーであるかを日本人が完全に納得するように。次に、地球温暖化キャンペーンを行いました。安い石炭や原油を使えなくするためです。マスコミや学界を総動員した地球温暖化キャンペーンは成功しました。これが、チェリノブイリ原発事故のあとでも、日本だけが原発を作りつづけた理由です。将来にわたり、二度と自然エネルギー開発運動が日本で盛り上がらないようにする。それが、CIAに課された使命だったのです」

山崎は突然しゃべりだした。「世界のマスコミと日本のマスコミが全く異なる報道をしているのが、地球温暖化問題である」と地球物理学者のスミスから馬鹿にされていた憤りが噴出した。

「地球温暖化のキャンペーンは、EUが排出権取引でお金を日本と中国から引き出すために作った虚構です。実はこの20年以上、地球の平均温度は変わっていないのです。むしろ、最近の観測結果から、寒冷化を懸念すべきという科学者が多くなりつつあります。南極の氷も近年、増加しているとNASAが発表しました。世界中の都市の人口集積に起因するヒートアイランド現象と定期的に発生するエルニーニョ現象による異常現象を、全て地球温暖化の影響としてマスコミに流しています。
日本人は、『地球温暖化は人間が排出する二酸化炭素ガスによる』と90%が信じていますが、欧州では40%、アメリカでは25%ぐらいの人しか信じていませんよ。アメリカ、オーストラリア、スイス、英国、カナダなどの国々は温暖化対策予算の削減や関係役所を閉鎖しています。スイスでは、炭素税も見送られました。2009年のクライメートゲート事件、IPCCのメールがハッキングされ、恣意的なキャンペーンの嘘が世界中に広く知れ渡り、一気に信用が失墜しました。また、近年のNASAなどの観測結果が公開され、予測シミュレーションと大きく違うために、地球の平均温度が、この20年以上、変わらない事実がばれてしまいました。
日本のマスコミだけが国民に伝えていないのです。原発再稼働を推進するため、利権の巣窟の《温暖化村》を支える環境庁の官僚、および東京大学の御用学者、マスコミによる陰謀でしょうかね。
寒冷化と温暖化は常識で考えても、生命にとって温暖化の方が生命活動を増加させることは科学的事実です。先日、わずかな降雪で、日本全体が交通や水道や全ての社会的インフラが止まりました。とくに、海に囲まれ、大陸国家でない、日本列島は南北に延びている点でも、温暖化の影響が一番、出にくい国です。その日本が温暖化対策費として、毎年4兆円の税金を無駄に使用しています。経済的マイナスを考慮すると、年間の10兆円から15兆円も国富を失っています。これを止めれば、消費税なんか上げなくても財政再建ができるんですよ。これも、日本人がマスコミの情報を真実だと信じる無知からくる弊害ですね・・・日本だけが、世界中からカモにされているんです」

男はすこし、微笑しながらいきり立つ山崎を見ている。ゆっくりと喋りはじめた。

「そうですね。もともと、欧米が、日本と、成長をする中国などの発展途上国から排出取引のお金を奪い取る計画でした。ところが、逆に、発展途上国が、文明を先取りした先進国に資金援提供を強く要求するようなり慌てたのです。風向きが変わり始めて、日本以外の先進国は、温暖化キャンペーンには距離を置くようになりました。日本の常識が実は、世界の非常識と言われています。日本だけが、テレビや学校で地球温暖化を真実のように伝えています。英国やオーストラリアの小学校では温暖化については疑問があることをちゃんと教えています・・・」

冷静に話す男をみて、山崎は少し恥ずかしくなり話題を変えた。
「地熱発電つぶしの陰謀をロシアに対して日本もしていたことをご存知ですか?」
「本当ですか?それは初耳です。教えてください」

「日本は北方領土返還交渉の時です。外務省にロシア側から北方四島の電力を日本の技術援助で、地熱発電で賄えないかと打診されたんです。日本側は無償で地熱調査し、有望なデータをあえてダメなデータにねつ造して地熱開発を止めさせたんです。その代わりに、日本は重油発電機施設を寄贈したんです。そうすると、ソ連の重油は質が悪く使えませんから、日本からの重油を使う限り日本の援助が必要になります。北方領土四島の世論を親日に仕向け、ロシア側と有利な交渉ができるようにしたんです。いったん、地熱発電ができると永久に日本からの援助がいらなくなりますからね」
「そうですか。外務省もなかなかやりますね。では、こちらの地熱の話を続けさせていただきます。CIAが通産省からアメリカに留学していた通産省トップエリート官僚内山をエージェントに仕立てたんです。帰国し数年後、内山は華々しく通産省のアメリカのロビーイストとして舞台に現れました。独立した時から数十億円の現金が彼の預金口座にあったと聞いています。その資金を使い、ニューサンライズ計画を資源科学省に持ち込んだのです。
工作活動が実行されたのです。日本の地熱発電を本気で取り組むと同じ安定したベースロードとして最大の原子力のライバルとなるんです。地熱が増えると、アメリカの原発やウランを濃縮したイエローケーキを売り込めなくなる。
日本が本当にアメリカから独立した国家にならないために、《エネルギーと食糧》を自給自させないことが必要なのです。
そこでアメリカはCIAに 内山を使い自然エネルギー開発をお題目とするニューサンライズ計画を立案させた。わざと、ことごとく国立公園内の有望地区の地熱プロジェクトを破たんさせたんです。これにより今後、未来永劫、日本での地熱開発の可能性が完全に消滅したわけです・・・」
山崎が沈黙していると、男は話を続けた。
「こんなことを言うと、いわゆる陰謀論と日本人は考えるかも知れませんが、アメリカはエネルギーに関して、CIAを使い、世界中でこのようなアメリカの産業を守る陰謀を≪通常業務≫で繰り広げているのは事実なんですよ」
「質問をしてよろしいですか?」
「どうぞ」
「あなたが週間文秋に内部告発の情報を流したのですか?」
「私じゃないですよ。上司からは、私だと疑がわれましたがね、相当いじめられましたよ」
「もう、ひとついいですか?」
山崎が最後の質問を男に尋ねた・
「内山さんの突然死はあまりにもタイミングが良すぎます。内山さんもCIAに消されたんですか?」
「それは私もわかりません・・・、知らない方がいいと思います。あなたにとって。世の中には、知らなければいけないことと知らない方がいいことあるでしょう、山崎さん」
男は山崎をすこし憐れむような表情を見せてつぶやくように語った。

山崎が帰ろうとすると、男は地熱と原発のもう一つの深い闇について、ダムから水があふれるかのように山崎に語りだした。

「それに関東電力OL売春婦殺人事件の事はご存知でしょう?」
「関東電力OL・・殺人事件ですか?」
「そう・・・」男が山崎の顔を見ながらつぶやくように言った。
「関東電力という有名な企業の中枢の企画部副長というエリートが毎晩、売春婦として街にたって客を取っていた。テレビや週刊誌で連日報道されましたからよく知っています」
「本当は、全て、でっち上げなんですよ」
「えっ。そうなんですか?」

「彼女は渡部通産大臣と関東電力との重要な交渉役でした。当時の通産省は原発推進派と自然エネルギー派で壮絶な戦いがなされていました。被害者は電力会社が導入しようとしているプルサーマル原発の危険性を示す論文を通産省に提出する準備をしていました。事故の時に放出される放射能汚染が著しく増加し、操作性の難しさを指摘する論文です。福島原発事故で、黒煙と炎と黒い煙を上げて、すごい爆発音で、三回爆発する映像が世界中に流れました。あれがプルサーマル原発の爆発です。一,二号機の水蒸気爆発とはまったく異なる爆発です。最初の爆発は水蒸気爆発、二回目の爆発は核爆発でした。これこそが被害者が、最も危惧し、指摘していた事故です。つまり、一部の燃料棒のみにMOX燃料を入れると、発熱量にムラが生じる。温度の不均衡が進行すると、高温部の燃料棒が破損しやすくなる。水蒸気管破断のようなPWRの冷却水温度が低下する事故や、給水制御弁の故障のようなBWRの炉内圧力が上昇する事故が発生した場合において、出力上昇速度がより速く、出力がより高くなるのです。この論文が、左翼系のマスコミや通産省の自然エネルギー推進派に渡れば、プルサーマル計画が宙に浮いてしまいます。だから、殺されたんです」

「やはり、そうでしたか・・・どうして、命を懸けて行動したのですか?」
「当時、関東電力内部でも阪神大震災、スリーマイル原発事故発生による反原発思想が大きくなりつつあったのです。被害者のお父さんが関東電力本社の副部長時代、脱原発を主張していましたが、突然、左遷され、癌で亡くなります。父の意志を彼女は受け継いだ。会社が導入しようとしていたプルサーマル原発の危険性を通産省や大臣に警告する彼女が邪魔だった。『原発に比して地熱発電の優位性に関する論文』が受賞するくらいの超エリートで、関東電力初の女性総合職のトップエリート社員でした。単なるOLではありません。また事件の後、被害者が研究を進めていた地熱発電は新エネ法から除外され国の補助金が打ち切られました。そして、プルサーマル原発が稼働します。不可解なことに、事件の直後、被害者の上司の男たちが異例の出世をします」

「つまり、被害者が原発よりも地熱の優位性を検証した研究論文を書き、受賞。世間の注目を集めている被害者が、今度は、プルサーマルの危険性を論文にまとめて通産省に提出しようとした矢先、異常な性癖の売春婦という汚名を着せられ、殺害された」というシナリオですか・・・殺すにしても凄い憎悪を感じますね。ネットでみると被害者はかなりの知的で美人ですから、違和感があります・・・関東電力ぐらいの力があれば、単なる殺人事件として、警察とマスコミ隠蔽工作ぐらいできそうな事件ですけど・・不思議にも、関東電力広報部は動かなかった・・むしろそれを大きく広めた感が見受けられます…変ですね。この事件を題材にした本が、何冊も出版され、映画やテレビなどが多く製作されていますが、事件の被害者の異常な性的猟奇性を強調する内容ばかりです。企業の信用を傷つけた場合、上司たちは降格されるのが普通ですよね・・・・・・」山崎は自分自身に言い聞かせるように呟いた。

「真実を隠蔽する方法には二つの方法が用いられます。ひとつは大衆が理想とする犯人像にぴったりの犯人を作り上げ、逮捕して事件を早く収束させる方法です。この場合は、貧しい、アジア、有色人種、肉体労働者、不法滞在者、これで大衆は納得しますこれに類似した事件が、鹿児島での強姦事件です。早朝、路上で強姦して逮捕された青年は無実でした。五年後に冤罪事件と判明した事件です。この時の大衆が期待する理想の犯人像は、金髪、ホストクラブの売れないホスト、元非行少年でした。警察はDNA検査で本人以外のDNA鑑定が出ているのを隠蔽して、被害女性の証言にもとづき、逮捕しました。
二つ目の方法が、事件の本質から大衆の目をそらさせる方法です。沖縄返還時の核持ち込みに関する密約を暴いた毎日新聞の西山記者の事件では、この方法がとられました。情報をリークした外務省エリート女性官僚との情交が何回あったのか?大衆の大好きな不倫スキャンダル事件にしてしまうのです。そうすれば、だれも、沖縄返還の真実を追求することができなくなるのです」

「CIAが世界中で展開している基本戦略ですね。私もそんな事例をアメリカの石油企業が行うのを、いくつか見てきましたからおっしゃる通りだと思います・・・」

「そうですか。ご指摘のとおり、この事件について異常に多くの本や映画やテレビドラマが製作されています。そのほとんどが被害者の異常な性癖に焦点を当てたものばかりです。逆に、そこに、私はある強い意志を感じるのです。私は、かなり周到に作られた偽装事件だと推測しています。あくまでも、これは、私の推理です。まず、被害者が売春婦であると第三者の証言を得るために地元の暴力団幹部に依頼して、被害者の体形に似た本当の娼婦に、目立つ服をきせます。
厚化粧をさせて、数ケ月前から街に立たせ、働かせる。そうやって、噂を広げる目撃する人間を複数作ります。娼婦は事件後、歌舞伎町の路上で、中国マフィア蛇頭にでも依頼して、ナイフで刺し殺す。死人に口なしです。売春を記録する手帳や売春相手のアドレスや様々な証拠を、犯人側、被害者側の両方でつじつまがあうように、第三者の証言も含めて完璧に仕組みます。
しかし、それでも漏れがありました。売春相手からは激ヤセで、厚化粧だったので、本人確認が困難という証言や、容疑者が絶対行かない高級住宅地で、被害者の定期券が見つかるとか…しかし、すべてが闇にほうむられたのです。すべてがシナリオにそってねつ造されました。
突然、犯人逮捕から、十五年後、二〇一二年、状況証拠のみで、自白を強要され、犯人とされたネパール人の冤罪が確定し、国から釈放金六千九百万円渡され、帰国しました・・国家ぐるみの冤罪事件の終わりです・・・・」

「なんで、十五年も無罪を主張する被告が監獄にいれられたんですか?」
「このタイミングこそ、この事件の真犯人の姿が見えてくるヒントがあります」
「たしか、釈放は二〇一二年でしたね・・・あっ・・・」

「そうです。事故です。福島原発事故が二〇一一年。検察は釈放するつもりは最後までありませんでした。正確には、・・・ある男から、指示が無ければ・・・・唐突ともいえる突然の釈放には、理由があります。関東電力と経産省の原発推進派が力を急激に失ったからです。わかりやすく言えばその事件に深く関与した、名前はいえませんが、ある男の力がなくなったからです。被害者が警告した福島原発事故が無実のネパール人を救ったのです。真犯人は、まだ逮捕されていません。いや逮捕するわけにはいかないのです・・・・真実が明らかになりますから・・・」
「女の怨霊が原発事故をよびおこし、男に父の復讐をしたということになりますか・・・・・」
「すべて、アメリカのCIAが仕組んだ事件です。日本は、原発をやめることを自分の意志では止める訳にはいかないんです。いいかえれば、地熱発電を推進してはいけないのです。原発と地熱は似た者同士でから・・・」
「そうですね。地熱発電はいわば、原子力発電のお母さん。違いは、地熱は地球が原子炉で、原発は人間が運転、地熱は大地の母なる神ガイアの運転です。しかし、危険なエネルギーである放射能は、神でも運転事故を起こします。地熱の原発事故は火山爆発や地震、原発事故と同じで、甚大な被害を人間に与えますが、地熱は放射能が地下深く、眠ったままで、地表に出てきませんから安心です・・・」山崎がすこし、おどけながら、地熱の特性を話した。
「面白いたとえですね。しかし、地母神ガイアは、神様ですから、火山は、ニキビが治る時に流れ出る血、地震は寒気を調整するときの身震い、津波は熱い時に流した汗のつもりでしょう。被害というのはあくまでも、人間にとつての話ですよ・・・」

「そうかもしれんね。我々はいつも人間本位な考えをしてしまう傾向があるようです。これは、まいりました・・・いやほんと・・・」

# by masashirou | 2016-02-08 20:10  

おすすめの本

龍を見た男という小説を書きました。以下が参考にした本です。

『日本にテロが起こる日』佐藤優 二〇一五年 時事通信社 一三〇〇円

《イスラム国」が原爆を持つ可能性は。英秘密情報部長官の「重大メッセージ」の内容は…、メディアの報道だけでは分からない国際情勢の「筋読み」を提供する。内外情勢調査会主催の懇談会で行った講演に編集を加えて書籍化した本。イスラム国は、イスラム国の唯一の指導者カリフの下で世界中を支配することを究極の目標としている。イスラム以外の国は、全てがテロの対象になる。中立的な立場に日本は立ちたいと考えたがるが、彼らにとっては、敵と味方しかいない。『今まで日本は中東世界では植民地支配をしたことが無い、むしろ、欧米から弾圧を受けるイスラム世界を援助してきたからイスラム国は、日本に対して好意を持っているはずだ』という希望的な意見が日本にはあるが、テロ集団イスラム国に関しては通用しない。二〇一六年伊勢志摩サミット、二〇二〇年東京オリンピックの日本をターゲットにしたテロ事件は必ず起こりうると考えて対策を練るべきであると主張する恐ろしい内容の本です。 

また、作者が、外務省ロシア担当の官僚の時、北方四島の電力を日本の技術援助で、地熱発電で賄えないかと打診され、日本側は無償で地熱調査し、有望なデータをあえてダメなデータにねつ造して地熱開発を止めさせた。その代わりに、日本は重油発電機施設を寄贈した。そうすると、ソ連の重油は質が悪く使えないから、日本からの重油を使う限り日本の援助が必要になる。北方領土四島の世論を親日に仕向け、ロシア側と有利な交渉ができるようにした。いったん、地熱発電が出来ると永久に日本からの援助がいらなくなることを恐れたと書いています。エネルギーと食糧を自立させないことが外交戦略では常識である述べています。》

『日本が知らない「アジア核戦争」の危機』日高義樹 二〇一五年 PHP研究所 一六〇〇円
《冷戦時代は米ソとも核を核抑止力として考え、実際に使用すれば、人類は消滅するという認識を両国とも共有しており、本当に核を使用して戦争をすることを公言する将軍は存在しなかった。しかし、中国や北朝鮮は実際に核爆弾を搭載したミサイルを使うことについて何のためらいが無いのだ。イスラム国などは報復される国が無いので、自由に核攻撃をする決断ができる。今までの常識が通じない勢力が核を持ち始めたのだ。アジアの核の脅威について警告した驚くべき内容の本です。》

『イスラム国衝撃の近未来 先鋭化するテロ、世界と日本は?』
拓殖大学客員矢野義昭 二〇一五年 育鵬社  千四百円

≪イスラム国の日本を標的とした原発テロに備えよという衝撃の警告の本です。日本の原発は、婦人団体や子供会が、昼食つきで訪れるような平和で安全な施設だという電力会社のイメージ戦略が奏功していますが、それがいかに世界の常識から乖離しているかを、テロ防衛の立場から警告した本です》

『日本は本当に戦争する国になるのか?』
池上彰 二〇一五年     SB新書 八〇〇円

《安全保障関連法案と集団的自衛権について右翼的、左翼的な見方を冷静に比較する資料を詳しく書いてある本です。原子力についてアーミテイジ・ナイ報告書では、最近の法案が全てこの命令通りに忠実の遂行されたことを筆者も驚いて「なんだ、結局はアメリカの言いなりなんだな」というのが正直な気持ちですと書いています。池上彰はマスコミから消えるかも?と心配になるくらい本当のことを書いています。》

『天才』石原慎太郎  二〇一六年 幻冬舎 一四〇〇円

《田中角栄を俺という視点から描いた珍しい本、アメリカに対抗した総理がいかに簡単に、CIAの指示によりマスコミと検察によりつぶされていくかを描いた本。発売一〇日で、一〇万部のベストセラー本です。


『東京電力研究』斎藤貴男 二〇一五年 角川文庫 一〇〇〇円

≪東電の闇を深く調査する真実を求めて様々な角度から原発の歴史を紐解きます。原発の空からのテロ攻撃について、その危険に関する歴史的考察を興味深く読みました。原発を歴史的に解説する本です》

『石油とマネーの新・世界覇権図』アメリカの中東戦略で世界は激変する。

中原圭介  二〇一五年   ダイヤモンド社   一五〇〇円

《シェールガスがエネルギー業界にもたらす結果を予測した衝撃の内容。
また、中東戦略をアメリカが大きく変えてくることも予言しています。中原圭介さんの近未来予測は全て当たっていますから、すごく読む価値のある本です。》

映画『天空の蜂』と小説『天空の蜂』 東野圭吾  講談社
物語の舞台は一九九五年。防衛庁から奪取された最新鋭にして日本最大のヘリコプターが、稼働中の高速増殖炉がそびえ立つ原発上空に現れ、日本全国の原発の停止を求める犯行声明を出す。東野氏が「今まで書いた作品のなかで一番思い入れが強いのはどれかと訊かれれば、これだと答えるだろう」と語るほど思いがこもった原作は、時代の先見性、社会性に満ちており、今も多くの人々の関心を惹きつけるロングセラー。
映画『天空の蜂』
原作:東野圭吾「天空の蜂」(講談社文庫)
監督:堤幸彦(『20世紀少年』シリーズ、『BECK』、『明日の記憶』)
脚本:楠野一郎
出演:江口洋介、本木雅弘
《原発技術者が原発の存在に危機を感じ自衛隊の無人大型ヘリコプターで高速増殖炉もんじゅの上空にダイナマイトを搭載した状態でホ―バリングして、政府に全ての原発停止を要求するという物語です。二〇一五年、映画化されかなりの人が映像で見ました。作者はもんじゅの未来に希望を持つイメージで書いています。今、もんじゅが廃止されるかもしれないという現状をどう考えられているかお聞きしたいですね。それにしても全ての原発が二年間停止された今の日本は作者も信じられないと思います。福島原発事故以前の十数年前にだされた本なので、未来を予見した小説。その先見性には驚かされます。》


『オールド・テロリスト』村上龍 二〇一五年 文藝春秋
一八〇〇円
二〇一一年から三年間にわたって連載された『オールド・テロリスト』が、このほど単行本として刊行された。
 本作品では、近未来の日本を舞台に、《満洲国の亡霊》とも思える謎の老人グループが、日本を焼け野原にすべく次々と凄惨なテロを仕掛ける。

《八〇歳の老人たち私設軍隊を作り、原発にミサイルを発射して脅し、政府の原発再稼働を中止する物語です。本の中ではみんな秘密裏に殺されてしまいますが、有名作家の村上龍さんが二〇一五年にこのタイミングで出版したことに深い意味を感じ、驚きました。ワクワクドキドキする本です。》

『新戦争論』 小林よしのり 二〇一五年 幻冬舎一七〇〇円

《独自の日本主義の精神で右にも左にも、同調せず命がけで自分の信念を漫画という独自の媒体で、優れたメッセージを発信する漫画家です。『新戦争論』は『戦争論』にとともに、深い示唆をこれからの若者たちに与えるでしょう。すごい本です》


『ザ・原発所長』黒木亮 二〇一五年 朝日出版社  一七〇〇円


《原発の下請工事のずさんさと原発村の実態を理解するのに参考になる本です。東京電力の本社と現場の危機意識が違うのには驚くばかりです。原発メーカーや電力会社の中で事故を起こさないために命がけで働くまじめな技術者の苦悩する人間模様が理解できます。素晴らしい本です》 

『東京が壊滅する日』 広瀬隆  二〇一五年 ダイヤモンド社 一六〇〇円
《原発のロスチャイルド、石油のロックフェラーの国際エネルギー業界の隠された真実を描いた本です。東京にこれから発生する福島原発の放射能に起因する甲状腺疾患の拡大を予言する衝撃の内容です。》

『原発ホワイトアウト』若杉冽 二〇一三年 講談社  一〇〇〇円

 再稼働が着々と進む原発,しかし日本の原発には,国民が知らされていない致命的な欠陥があった」と訴える著者の身辺には,「この事実をしらせようと動きはじめた著者に迫り来る,尾行,嫌がらせ,脅迫」がある。 権限を引き継いだ副知事は新崎原発の再稼働を認める。だが大雪の日、テロリストが高圧送電線を吊った鉄塔をダイナマイトで破壊する。新崎原発は電源を喪失、新潟、柏崎刈羽原発。外部電源車が置かれている高台には大雪のため近づけない。新規制基準では「外部電源車を各原発に配置すること」とした以上、ヘリで電源車を運ぶ方策を別途講じているはずもなかった。海から運ぼうにも大シケで岸壁に近づけない。原発は あれよあれよ という間にメルトダウンした。格納容器の圧力は高まる。格納容器の爆発を避けるにはベントする他ない。ベントが始まり住民は逃げ惑う。発電所内は そこそこ の警備体制が敷かれているが、送電鉄塔がある場所は無防備だ。新規制基準はテロリストの襲撃を想定していない。全電源を喪失した場合、復水器で冷やせるのはわずか数時間である。メルトダウンは簡単に起こりうる。住民の被曝は避けられないのだ。「(新)規制基準は安全基準ではない」。新潟県の泉田裕彦知事は繰り返し説く。だが政府も東電も泉田知事の警告に耳を貸そうとしないという内容。

《原発がいかに外部電源に依存するか簡単に原発テロが可能であるということがわかる怖い本です。》

『安倍政権の裏の顔 攻防 集団的自衛権ドキュメント』朝日新聞政治部取材班  二〇一五年 講談社 一六〇〇円
これまでの政府が集団的自衛権にいかに慎重に対処してきたか、それを壊そうとする安倍政権の執念じみた情熱の裏に何があったのか?面白い本です。》


『日本遥かなり』門田隆将 二〇一五年 PHP研究所 
一七〇〇円

《動乱のイランからトルコ政府の好意により、二〇〇人の日本人が無事脱出するに至ったかを描いたドキュメント小説、海外にいる日本人が戦闘に巻き込まれた場合、自衛隊が憲法の規定で救出ができないという日本国憲法に対して疑問を投げかけた衝撃の本です。二〇一五年に映画化がされました。》

『地球はもう温暖化していない』 深井有 二〇一五年      平凡社新刊  八二〇円

《やっと本当のことを語る科学者が出てきた。世界中が伝える事実を全く異なる情報を伝える日本のマスコミ。科学者の良心に従い、温暖化を支持する偽科学者たちを告発する書。原子力を推進したい英国のサッチャー首相が仕掛けた、『地球温暖化を防ぐためには、原発しかない』というあらかじめ決められた結論にいかにかに学者たちが、がそれに沿う論文を書いて多くの予算を取ろうかを競った。この本は、現実の観測データに基づく忠実に科学的な検証を試みた解説書。私が10年前に書いた「ミッテラン・コード」で指摘したIPCCの欺瞞についても、気持ちの良い論評しています。毎年10兆円~15兆円ものお金が温暖化対策費用として日本が失っています。これで、炭酸ガスをださないことを目的とする日本のエネルギー戦略も大きくこの告発で変わると思います。2016年2月6日、驚くニュースが報道されました。今まで最新の石炭火力発電所をつぶしてきた環境庁が突然、11ケ所の申請を許可したのです。それは、この本が貢献したのかもしれません。隠蔽された事実が1冊の本により日本を変革する力になるかもしれません。マスコミが、いかに嘘のニュースを流して洗脳するか恐ろしくなります。》



『日本はなぜ基地と原発を止められないのか』矢部宏治          二〇一五年 集英社インターナショナル 一二〇〇円 

《矢部氏は、日本には裏の政府が存在する。それは今でも日本植民地支配をするアメリカである。アメリカが基地と原発を必要としている。だから日本人には、決定権はもともとないのだ。CIAは、治外法権の状態で自由に日本に入国や出国できる米軍基地のいうどこでもドアを使い、政治家や官僚に対する諜報活動を自由にしている。米軍は日本国を超えた存在である。本当の日本の支配者であるアメリカは日米合同委員会という組織をつくり、月二回の会合を開催し、日本の検察やほとんどの分野の高級官僚を直接コントロールする。また、フィリピンの米軍基地完全撤去を可能にしたのは憲法であるとし、次の様に述べている。憲法とは小国が大国に立ち向かう最大の武器である。こんなこと書いても大丈夫?と思えるほど深刻な実態を書いている本です。》

『日本人を狂わせた洗脳工作』 いまなお続く占領軍の心理作戦
関野通夫  二〇一五年 株式会社自由社 五〇〇円

《アメリカのWGIPの証拠文書を発掘。占領軍の巧妙な日本人洗脳工作を公文書から発掘した話題の本。アメリカホンダの社長であった関野氏がみずから見つけた機密文書から占領下の日本で行われた洗脳工作を明らかにした。未来永劫にわたって日本を属国にする為に、どのようなことを今でも行っているかを検証した内容である。》


『地熱発電事業で暗躍、旧通産省OBが企業から引き出した六百億円』と『日本経済「黒幕」の系譜』
二〇〇七年 別冊宝島編集部、宝島社文庫、
《あるエリート通産省官僚内田元亨の地熱事業での汚職事件の裏側を描いた本です。》

武田信弘のブログ  http://blogs.yahoo.co.jp/taked4700
「フジタ地熱開発の無残と欺瞞」のまとめ ( 地震 ) - taked4700のブログ
《鹿児島の地熱豊富な指宿市にお住いの大変ユニークなブログです。なぜ、地熱開発が30年間停滞していたかを、疑問に思い、内田元亨事件が日本の地熱開発を妨害したのではないか?という推理で小説を書き終えて、データを集めていましたら、武田信弘さんのブログに詳しく地熱汚職事件の全貌が記載されていました。私だけが想像していたわけではなく、別の人もそのような推理をされていることに驚きました。「内田元亨、地熱」と検索したら出てきます。非常に詳しい裏の情報を提供してくれています。どんな方なのか不思議な人で調べましたら、宮崎県知事にも立候補したりしている人物。謎に包まれた経歴の持ち主でした。鋭いユニークな視点を持つ人物のブログです。》

高橋真理子氏,朝日新聞編集委員の個人ブログ〈二〇一四年〉http://bylines.news.yahoo.co.jp/takahashimariko/20141015-00039960/

「なぜ、日本では地熱がすすまないのか?」と検索したら出てきました。

《原発をなくしていくためには大型地熱発電所の開発は避けて通れないと思う。なぜ地熱発電の開発が90年代に入ってピタッと止まったのか。その理由を突き詰めて考えてみると、地熱発電の欠点として挙げられるあれこれの理由は「言い訳」に過ぎず、要は日本政府が原発を推進してきたからだという点に行き着く。何しろ地熱発電の特徴は原発にそっくりなのである。変動せずに安定に発電でき、二酸化炭素もほとんど出さない。しかも投入エネルギーに対する電力生産量は石炭や石油を上回る。こういうそっくりな特徴を持つ二つの発電方式のうち、一方だけを日本政府は厚遇した。原発だけに至れり尽くせりの制度を作った。つまり、政府は原発を選んで地熱を捨てたのである。だから、インドネシアを始めとする世界各国で地熱発電所が次々と開発される中で、日本だけが「眠りに入ってしまった」のである》と書かれています。




【まだまだ、調べると、多くの作者たち書いたが原発テロの危険性を警告する内容の本がありますが、これまで、日本はまともにこの事実に対して向きあっていないように思えます。】

# by masashirou | 2016-02-08 20:06