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キーウィの風

キーウィの祈り
偉大な存在が、風になって旅をされていた時
偉大な存在は、海に浮かぶひとつの大地を創りました
大地はみるみるうちに大きくなり大陸になりました
やがて、大陸は5つに分かれました
大陸は、海をただよい始めました
偉大な存在は、大地がひとつであった記憶を残すために、中心だった場所に小さな島、ニュージーランドを残すことにしました
すべての生きものと、5つの大陸は、地球の果てまで航海を続けました
やがて、5つの大陸は強いものが、弱いものをいじめる争いの世界になりました
争いを嫌う鳥たちは、5つの大陸から自分たちが生まれたニュージーランドを目指して飛び立ちました
ニュージーランドは、鳥たちの歌が一日中あふれる平和な島になりました
長い、長い時間が過ぎました
人間たちが、さまざまな動物をつれて、島にやってきました
4つの足を持つ動物たちは、次々と鳥たちをおそいました
憎しみと恐怖が、島を支配するようになりました
やがて、鳥たちは、歌を歌うことを忘れました
美しい笛のような音色で歌う、「キーウィ」という名前を持つ鳥が、ひとつの願いを南十字星に祈りました
キーウィは、「平和な島にしたい」と祈りました
南十字星が、輝きを増した夜
キーウィの前に偉大な存在が現れ、こう言いました
「お前が、4つの試練を受けいれるなら、願いを叶えてあげよう」
キーウィは、ためらいなく、大きくうなずきました
「この島が平和な島に戻れるのなら、どんな試練も受け入れます」
偉大な存在は、キーウィの翼と視力を奪いました
偉大な存在は、キーウィの身体を小さくし、鋭いくちばしを糸のように細くしました
「これで、お前は、自分を襲う敵を見る事も、逃げることもできない。身体が小さいお前は、戦う事もできない。キーウィよ。今なら、もとの姿に戻れるが・・・・」
「いいえ、かまいません。しかし、教えて下さい。こんな弱い私が、争いを止めさせることが出来るのでしょうか?」
偉大な存在はキーウィに言いました
「キーウィよ。平和とはみんなが武器を捨て、戦いの心を無くすことだ。お前は私から森で最も一番愛される鳥となるだろう。私は、永遠にお前とお前のこどもたちを守る事を約束しよう。無力なお前のこどもたちが祝福され、生きながらえる姿を見て、他の動物は争わなくても、森で生きられることを学ぶであろう」
キーウィは、あまりのうれしさに、涙を流しました
キーウィの流した涙は、森に流れる清らかな川になりました
偉大な存在は、キーウィの心に感動しました
偉大な存在は、キーウィに、かたい殻を持つ巨大な卵を産める力と、森を自由に旅が出来ように、丈夫な脚を与えました
偉大な存在は、くちばしの先にするどい嗅覚を与え、細いくちばしでも食べられる小さな虫を、地中につくりました
キーウィは、すぐ行動を開始しました
キーウィは、次々と争いを止めさせました
無抵抗のキーウィの勇気は、敵に恐怖を与えました
もちろん、キーウィを襲おうとした動物は数多くいました
しかし、ずるい動物は、他の動物から嫌われるようになりました
やがて、キーウィを襲うものがいなくなりました
キーウィの精神は、ついにこの島に平和をもたらしました
キーウィのこどもが、お母さんにたずねました
「ぼくたちは、もう大空を飛べないの?」
お母さんキーウィは、こどもたちに言いました
「そうね。飛べないかもね。たいせつなものを手にいれたのだから」
「たいせつなもの?」
「本当にたいせつなものは、目にみえないものなのよ。目に見えるたいせつなものを捨てると、目に見えないたいせつなものが手にはいるの」
「目に見えないたいせつなもの?」
「それはね。こうしてこの森で、なかよくみんなで一緒にすごせることなの」
キーウィが住む、ニュージーランドは自然と動物と人間が一緒に生きる平和な島になりました
それから長い月日が流れました
やがて、世界中に戦争が起こりました
すべてを焼きつくす戦いの炎が多くの生きもの生命をうばいました
戦いの炎が、地球上の美しい自然をこわしました
暗闇が地球上をおおいました
長くむなしい戦いの後、キーウィの祈りを受け継ぐ人間と国が誕生しました
その人間の名前は、誰とも戦わないと言ったインドの聖人「ガンジー」です
その国の名前は、どの国とも戦わない憲法を持つ、
「ジャパン」です
キーウィの祈りは、やさしい風となりました
キーウィの風は、永遠に南太平洋に浮かぶ小さな島ニュージーランドから吹き続けます

by masashirou | 2010-05-16 21:29  

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