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映画「ミッテランコード」日本語脚本その9

94パリ市警 テロ対策室

ハーバード長官、バルマン警部、ベッソン警部そしてロナウド教授がいる。

ハーバード「ロナルド教授ご協力ありがとうございました。そして、バルマン隊長・ベッソン副隊長、細菌兵器の処理にあたりその功績を称えたい。しかし、テロはまだ終わっていない。これからの調査も引き続きバルマン隊長にお願いしたい」
バルマン「了解しました。それでは早速、ウォンの事情徴収を始めます。そこで、ロナウド教授にお願いがあるのですが」
ロナルド「何でしょう?」


95ベルサイユ警察病院のある部屋

ガラス越しにウォンが寝ている。
女性の看護士が点滴を取り替えているとウォンが意識を取り戻す。
看護士はガラス越しに目で合図を送ると部屋を出てゆくと、ロナルドが病室に入っていく。

ウォン「ここは?」
ロナルド「病院ですよ」
ウォン「あなたは……?」
ロナルド「もう忘れてしまいましたか?」
ウォン「確か……。オックスフォードの教授ですよね。その怪我は?」

ロナルドは包帯が巻かれている左腕をかばいながら撃たれた魔笛をウォンに見せると、

ロナルド「あなたには2度助けられた。これと、そして、あなたと連れの女姓に。本当に感謝している」
ウォン「マリーは無事だったのですね」
ロナルド「覚えていないのですか?」

ウォンは黙り込む。

部屋のガラス窓を覗き込むバルマン。
そこに、女性看護士が入ってくる。

バルマン「ロナルド教授はこちらに気がついているか?」
看護士「いいえ。私が警官だということすら気がついてない様子です」
バルマン「録音しろ」

警官が録音機にスイッチを入れる。
バルマンが録音機の隣に座りヘッドフォンをつける。

ロナルド「いずれ警察の事情徴収があると思うが……。その前に少し協力して下さい」

ウォン「覚えていることであれば……お話は出来ます」
ロナルド「ありがとうございます。まず、あなたはピアニストであり指揮者のリー・ウォン27歳。父リー・ケソン、母キム・スヒョンの長男で韓国人。間違えないですか?」
ウォン「母は北朝鮮から拉致された日本人です」

バルマンが驚いてガラス越しにウォンを見る。

ウォン「父も韓国で拉致されたと聴いています。二十二歳になった時、朝鮮音楽大学院の教授から、一緒にオーストリアに亡命しようと誘われました。もちろん、私は即座に亡命することを決意しました。
 その後は製薬会社ゲッペル社が運営するフェルゼン音楽財団の支援で、ピアノと指揮学をウィーン音楽アカデミー学院で学びました。そして、ゲッペル社がスポンサーの『モーツァルト生誕二五〇周年欧州イベント』で、オペラ『魔笛』の指揮をする栄誉をいただくことになったのです……」

ロナルドがアメリーの写真をウォンに見せる。

ロナルド「この人を知っていますか?」
ウォン「ルーシーさんですね」
ロナルド「……!? 知っているのですね」
ウォン「はい。マリーを紹介してくれたのも彼女です」
ロナルド「マリーさん? 彼女はフェルゼン財閥の親族ですか?」
ウォン「フェルゼン5世のお孫さんだと伺いました」

盗聴している、バルマン隊長と部下の隊員が目を合わせる。

パトリック「これで、フェルゼンを落とせる手がかりが……」

バルマン隊長の耳元で囁く。
ロナルドは一枚の写真をウォンに見せる。
その写真にはフェルゼン・ファミリー15名が写っている。ロナルドは右端に写っている長い髪の女性に指差す。

ロナルド「この女性ですか?」
ウォン「いいえ、違います」
ロナルド「この女性がマリー・アロイジア・フェルゼンですが……。この写真の中にいますか?」
ウォン「いいえ……。では、マリーは誰なのです?」
ロナルド「そうですか。それは私にも分かりせん。ただ分かっていることは、今回のテロでフェルゼン5世が関与している疑いがかけられていること、そして、貴方にもその疑いがかけられていることです」
ウォン「私が!?」

ロナルドはゆっくりと頷く。

ロナルド「私はあなたが犯人だとは思っていません。もちろん、あなたに不利になるような証言もするつもりはありません。なぜなら、あなたは私の命の恩人なのですから……。
あなたに起こったすべてのことをお話していただけますね」
ウォン「信じていただけるかは分かりませんが全てお話しします。」


96フランス パリ エリゼ官

シラク大統領とロナルドが壇上に立っている。
付近には300名を超えるジャーナリストと各局の報道がカメラを向けている。
シラク大統領からロナルドにレジオン・ドヌール勲章が授与されると会場はフラッシュの光がたかれる。
ジャーナリストがロナルドに質問する。

ジャーナリスト「ロナルド教授はテロをどうやって予測したのですか?」
ロナルド「私は、類似した歴史を研究していく間に、ユング博士の『シンクロニシティ共鳴説』とエドワード・ローレンツ博士の、混沌の中で発生する一見関係ないような出来事が、実は一つの数字的パターンに従って発生するという『カオス理論』をヒントにして、新しいロナルド仮説を完成させました。カオス—混沌の中の秩序こそ、宇宙の基本構造であると思います。私の研究は、人間の心や魂、思念という眼に見えない世界が眼に見える現実世界にどれほど大きく影響を与えているのかを証明しようという研究です。その研究において300年前のフランス革命が人類に新しい時代をもたらしたことが、この現代にも酷似していたのです。そこで、古い時代と思想の最期を生きたマリー・アントワネットについて着目しました。そして、歴史からすべてを紐解いてみたのです」

ジャーナリスト「なるほど。ところで、ミッテラン大統領は、なぜパリにメッセージを残したのでしょうか?」
ロナルド「古代エジプトのファラオは、自分を象徴する角度を持っていました。その角度に従ってピラミッドを建設したのです。ナポレオン皇帝が6度というルクソール神殿の秘密の角度をパリに再現した事は有名です。ミッテラン大統領は3度という角度を使い、偉大な皇帝に見習って『ミッテランの暗号』を残したのだと思います


ジャーナリスト「なぜテロリストはミッテラン大統領の残した暗号を利用したのでしょうか?」
ロナルド「ミッテラン大統領がマリー・アントワネットを処刑したギロチンを廃止し、死刑制度をフランスから消滅した大統領であることに、着目して、何らかの因縁を暗示させる為だと推測されます。もうひとつの可能性ですが、犯人グループは、EU連合推進に反対する勢力がミッテラン大統領の名誉を傷つける目的があったのかもしれません。今、テロ集団の背後関係を捜査している最中ですので、いずれ明らかになるでしょう。」

ジャーナリスト「パリに描かれたVの文字の意味は?」
ロナルド「ご承知のように、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画『最後の晩餐』のなかには、聖杯を示すVの文字が描かれています。ミッテラン大統領もこのパリという巨大なキャンバスに、Vという文字を残したいと考えたのでしょう

ジャーナリスト「ミッテラン大統領がガラスピラミッドの地下に、マリアとサラの遺体を安置したという噂があります。そして、ミッテラン大統領のシオン修道会やフリーメイソンとの関係について、教授はどうお考えですか?」
ロナルド「シオン修道会の目的には二つあります。ひとつには、キリストの血脈を受け継ぐメロヴィング家の再興を願うこと。もうひとつがヨーロッパ連合体の創設です。1940年代にシオン修道会がヨーロッパ連合体の旗として提案していた紋章は、現在のEUの星の輪の紋章になっています。シオン修道会の存在を示す証拠のほとんどが、ミッテラン国立図書館に収納されています。多くの研究者は1950年以降、必要な文章がほとんど入手不可能になると口をそろえて指摘しています。もちろんミッテラン国立図書館を建設したのは、ミッテラン大統領です。23代シオン修道会総長で、有名な詩人であり、作家でもあったジャン・コクトー氏の死後1963年からプランタール氏が25代総長に就任する1981年までの謎の空白期間、ミッテラン氏が24代シオン修道会総長を務めていた可能性があります。1981年の5月に、ミッテラン氏は大統領に就任していますので、総長の座をプランタール氏に託したのかもしれません。コクトー氏の親友であったシャルル・ド・ゴール大統領もシオン修道会のメンバーでしたから、EU連合を推進したミッテラン大統領もシオン修道会に関与していても不思議ではありません。
そして、彼はアメリカの上院議会の公聴会において、ミッテラン大統領が『3』という数字を神秘の数字と信じるフリーメイソンの高級幹部であったという報告もなされています。・・・・、しかし、誰にも知られずに、その計画を実行に移すとしたら、ガラスピラミッドの建設を命じた最高権力者であったミッテラン大統領本人以外に、考えられません。私自身としては、現代と古代と繋ぐミステリーとして興味がありますが、ひとつのファンタジー、謎に包まれた都市伝説のひとつだと思います・・・」

ジャーナリスト「ロナルド教授の理論は今後の世界も予測できると伺いましたが?」

ロナルド「私の研究では、800年周期をもつ大きなパラダイムシフトの到来があると予言しています。世界は急速に危機に向かっています。しかし、私はその絶望の闇の中に光が見えます。21世紀は世界がひとつになることを考えなくてはなりません。西洋の陽の文化と、東洋の闇の文化が、融合して、新しい高度な世界文明が到来する。特に、日本文明の中にある自然と共存する知恵や、異なる神々が共存出来る『和を大切にする』知恵を学ぶべきである。その光こそが世界をひとつにする希望だと確信しています」



97パリ市警 テロ対策課

バルマンはロナルドがレジオン・ドヌール勲章を授与しているテレビ中継を見ている。
そこにパトリックが入ってきてバルマンに耳打ちする。
バルマンは表情を変えずに頷く。


98DST(フランス国土監視局)情報局

ペレ長官がバルマン、ベッソン、パトリックを集めて会議をしている。

バルマン「世界中がテロの脅威に怯えることで莫大な利益を得ている組織や国家や人物が存在するかぎり、テロ事件は永遠に終わらないでしょう。一連の事件で最も利益を得た人物は誰だろうと考えたのですが・・・」
ベッソン「今、レジオン・ドヌール勲章を受賞しているロナルド教授とでもいうのか?
バルマン「そうです」
ベッソン「たしかに、ロナルドがこう我々にしゃべっていた。『人間は見たいように事実を認識する』ってな。」
パトリック「実は、奇妙な事実があるのですが・・・」
ベッソン「なんだ?」
パトリック「アメリー警部の先祖の出身地が、北フランスのアルデンヌ地方のステネーなんです」」
ベッソン「それが?どういう意味があるのだ?」
パトリック「1070年に、シオン修道会の組織が創設された場所です。その場所で、アメリー警部の母方の先祖だった修道士が、シオン修道会の秘密をローマカソリック教会に漏らした罪で処刑されています」
ベッソン「それが?どういう意味があるのだ?」
パトリック「もう、ひとつマイケルの先祖について調査しました。
ベッソン「マイケルの先祖は、スウェーデンの国王フェルゼン公だと聞いているが、違うのか?」
パトリック「それは、父の方で、母方の先祖は、シオン修道会が再興を願うキリストの血脈を受け継ぐメロヴィング家ダゴベルト2世を、暗殺した裏切り者の肥満王と呼ばれた大宰相ピピンに行き着くのです」
ベッソン「君は何を言いたいのか?結論を言え」
パトリック「ロナルド仮説が本当だとすると、死んだ魂が共同で今回の事件を起こした可能性も否定できないと・・・・」
ベッソン「君までもが、愚かしいオカルトの学説を信じるのか?」
パトリック「我々は事件の全容をロナルド教授とアメリーやウォン容疑者からの供述からの一方的な話をベースにして組み立てきました。もし、ロナルドが事件のすべてのシナリオを書いていたとしたら・・・もし、アメリー警部もマイケルもウォンも、マリーも全員が仲間だったとしたら・・・アメリー警部もマイケルも生きているとしたら・・・」

会話の裏でイメージ映像が流れる。

シーン1)ドバイのホテルでアラブ人の王子と電話しているロナルドのシーン
シーン2)病院でウォンとロナルドが盗聴を確認しながら話すシーン
シーン3)オペラ劇場でマイケルが身元不明の男サイート(化学者、ウィルスNERO666を開発者)の死体を運び込むシーン
シーン4)オペラ劇場でアメリーが空を向けて銃を撃つシーン
シーン5)マイケルがロナルドの腕を撃つシーン
シーン6)アメリーとマイケルが身元不明の女の死体ソフィア・ロドリコ(スペインの女性彫刻家)を無線自動操縦のヘリコプターに積み込むシーン
オシン7)ロナルドがマリーとウォンに飛び立ったヘリの爆破を命じるシーン

ベッソン「死んだと思われるメアリーもマイケルも生存している可能性がるというのだな・・早速、遺体のDNA鑑定を依頼しろ」

ペレ長官「ベッソン君。ロナルドの研究所は、ドバイのファンドから巨額の資金援助を得ている。9/11事件の背後にドバイファンドがいたという報告を受けている。事実、9/11事件以降アメリカに流れていたオイル・マネーはドバイに環流した。世界が危険であればあるほど、産油国の王族の資金がアメリカや欧州に流れ込まずに、このドバイに流れ込んでいる。本当の悪魔は、正義の仮面をかぶって舞台に登場する。ロナルドはフランスを救った英雄である。ロナルドこそ真犯人である可能性があるかもしれない」

バルマンはペレ長官に言う。

バルマン「ペレ長官、今後、フランス国家警察総局長官の命令で、ロナルドの動きを
監視する旨の許可を願います。」
ペレ長官「よくわかった。今、われわれが発言したことは、すべて記録から削除される。フランス国を代表してシラク大統領がレジオン・ドヌール勲章を授与した人物に対する侮辱となる。もしもロナルド教授が真犯人だと確定された時の政治的混乱を考えるべきである。フランスの大統領閣下の恥を世界中に公表する国家的損失を考え無ければならない」
バルマン「はっ・・・・」
ペレ長官「ただしだ。極秘事項として、追跡捜査チームを組むことを命令する。すべて政治的に判断されることを前提にして捜査を続行する。いいな」
バルマン「はっ、はい」
ペレ長官はバルマンの目をジッと見つめる。

99パリ警察 玄関

バルマン、ベッソンが警察署を出てゆく。
二人が空を見上げると双頭の鷲が飛んでいるのを目撃する。


101コンコルド広場

ロナルド、空を見上げると双頭の鷲が空を飛んでいる。
ロナルド、不思議そうに見つめる。


102ロナルドの回想
1)ロナルドが幼年時代を過ごしたアイルランドの村は、ほとんどの地域が花崗岩に覆われている。村人は、石ころだらけの荒れた土地で、貧しいながらも信仰心に篤く、相互に助け合い、誇り高く、つつましく生活していた。アイルランドの土着宗教のドルイド教は、自然崇拝の多神教で、さまざまな物や動物、例えば岩や鮭や牛や豚、犬などにも神が宿ると信じていた。文字を持たないケルト民族には、口述で神のお告げや神話を伝承する「ドルイド」と呼ばれる預言者、神官が、神と民衆の間に存在した。
ロナルドの祖父は、「お前は『ドルイド』の血脈を受け継ぐ子孫であることを忘れてはならぬ。人間は輝く光は深い闇が支えられている事を知らなければならない。」と語った。


2)ロナルドの義父「歴史は繰り返すという言葉があるが、あまりにも類似点が多すぎる。どうだ、歴史は面白いだろう。歴史から学ぶべきものが多くある。しかし、ドイツの詩人ハイネが『人間が歴史から何にも学ばないことを、歴史から学ぶことができる』と嘆いている。お前は歴史から多くのものを学ぶ人間になれ。特に故国アイルランドのこと、ケルト人の文化のことなど、そうしなければ、この移民の国、歴史のないアメリカで、お金が唯一の価値を持つ愚かな根無し草のアメリカ人に堕落する……歴史には奇妙な時空を超えた「偶然の一致」、「歴史の類似性」がある・・・」


3)ロナルドと祖父が海歩いている。
祖父は波を見つめながら言う。
祖父「ロナルド。よく波をみてみなさい」
ロナルド「?」
祖父「打ち寄せる波の白い所を見てごらん」
ロナルドはジッと白波を見つめる。
祖父「打ち寄せる波の数を数えなさい。それを、よく観察しなさい」
ロナルド「1,2,3・1,2,3。あっ」
祖父「ブランコを揺らす時、なぜ、1回、2回、3回で、大きく揺さぶるのか?力を込める時、ジャンプする時、何故、3回で動き出すのか?分かるかい?」
ロナルドは不思議な顔で祖父を見つめる。
祖父「それは、③という数字が波動を最大にし、また、波動を最小にする神秘の数字なのだよ。だから、波が押し寄せる時も、引く時も、3つのピークで変動する」


103コンコルド広場

ロナルドは小さな声で呟く。

ロナルド「1,2,3.1,2,3」

ロナルドが『3』と言った瞬間に強い風が吹くと公園が真っ白く包まれる。


104イメージ映像

緑に溢れるイスラム風の宮殿が砂漠の中に現れる。
黄金のテーブルの上に赤いバラが飾っている壺が置かれている。
マイケル、マリー、アメリー警部と思われる後ろ姿がみえる。
3人の姿が黄金の扉の中に消える。
ロナルド、その後を追う。
双頭の鷲が上空からその光景を見ている。
鷲は砂漠から急上昇しながら飛んでいく。
鷲は白い雲を通り抜ける。

105イメージ映像 ウィーンの宮殿

不思議なモニュメントの上に鷲が止まるとそのまま鷲は彫像に姿を変える。
透明の双頭の鷲が鷲の彫像から抜け出すと周囲は暗闇に包まれる。
鷲は闇が支配する銀河宇宙に飛んでいく。
アンドロメダ星雲が太極図に姿を変わる。
光が消える。
再び闇の世界が現れる。
マリーが歌う「夜の女王のアリア」が聞こえてくる。


  地獄と復讐の炎が私の心の中に燃え上がる
  死と絶望の炎が私のまわりに燃え上がる
  お前のために悪魔ザラストロが破滅の恐怖から逃れたら、お前はもう私の娘ではない
  お前は、永遠に追放され、見捨てられ、永久に打ち砕かれるだろう。
  お前との絆は打ち砕かれることを覚悟せよ
  聴くがいい、復讐の神々よ
  聴くがいい、母親の呪いの誓いを

FIN
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by masashirou | 2009-12-10 09:48  

映画「ミッテランコード」日本語脚本その8


81ビルの屋上

7名の狙撃兵がそれぞれのビルから指揮者のウォンを狙っている。
スコープから音楽に合わせて激しくタクトを振るリー・ウォンが見える。


82コンコルド広場

ロナルドはウォンの後頭部に光る望遠照準の赤い十字架のマーカーを見つける。
アメリーに無線が入る。

狙撃兵「アメリー警部、いつでも狙撃できます」
アメリー「了解。ロナルド教授、劇場の支配人によると、魔笛はウォンの楽屋の机に保管し、カーテンコールの時にウォンが自ら楽屋に取りに戻るそうよ……」

ロナルドは頷く。

ロナルド「アメリー警部。魔笛を探すのは私一人に任せて欲しい。私が失敗した場合だけウォンを撃ってくれないか?」
アメリー「教授が一人で!? それは出来ないわ」
ロナルド「テロが起こるまではあくまでも私の仮説なのです。捜査令状さえ出ていない捜査でパリ市警に迷惑をかけたくない」
ロナルドはアメリーに囁く。
アメリー「わかった」
ロナルドに無線を手渡す。
メアリー「何かあったらこれで話して。全員と交信できるから……、ただし、フランス語で……」
ロナルド「メルシー」
ロナルドは微笑む。
アメリー「みんな聞いて」


83新凱旋門広場の彫刻展示会場

ベッソンが左手に探知機をあてると反応が起こる。

ベッソン「反応があります。おそらく小型爆弾です」
バルマン「取り出せるか?」

ベッソンは時計を見る。
時計は19時52分を指している。

ベッソン「時間が足りません。それに本部の指示は右手をと・・・・」
バルマン「とにかく、やれ。責任は私が持つ。各自、防毒マスクを付けろ。左手を電波遮断幕で覆った後で、爆発処理作業にあたれ」
ベッソン「本部への連絡は?」
バルマン「いい。向こうは起爆装置の確保に忙しいはずだ。それに俺は、ロナルド教授を信じていない」
一瞬の沈黙。
ベッソン「了解しました」


84ウォンの楽屋

舞台はクライマックスを迎えている。
ロナルドがウォンの楽屋に入っていく。
楽屋の机の上に、白いパソコンが置かれている。
画面の中で、舞台の音に反応してグラフが激しく上下に揺れていた。
その横に小さな笛が絹のスカーフに巻かれて置いてある。

ロナウド「これだ」

ロナルドはゆっくりその笛に手を伸ばし、ゆっくりと背広に入れると同時に、マイケルが銃を構えて楽屋に入ってくる。

マイケル「そこまでだ」
ロナルド「マイケル……」
マイケル「喜んでください教授。ロナルド仮説がついに証明されました。教授の言われる共鳴現象が僕にも起きたのですよ」

シェーン・ブルン宮殿のモニュメント―――
マイケルの苦痛に満ちた顔―――

マイケル「私の先祖は王女マリー・アントワネットを救出しようとして、果たせなかった王女の恋人、スウェーデンの国王ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン公。彼は王女を死に追い込んだ民衆を憎むあまり、過酷な圧制をしいた。そして、大衆の反乱により撲殺された悲劇の王。その魂が突然、私の中に……」

沈黙が続く。

マイケル「その魔笛を渡してください」
ロナルドが胸の笛を触る。
マイケルの人差し指がわずかに動く。

ロナルド「わかった。だが、諦めたほうがいい。すでにグラン・ダルシュの手も電波遮断防護幕でシールされている」
マイケル「爆弾は左手のほうに仕掛けましたよ」
ロナルドの顔に緊張が走る。
マイケル「あなたが石を持つ右手の彫像を推理することは想定範囲内なのです」
ロナルドの額にうっすらと汗が滲む。ロナルドは、ゆっくり振り返る。
マイケル「さようなら。ロナルド教授。僕が学説は僕が引き継ぎます」
マイケルは拳銃の引き金を引く。
バーンッ―――
ロナルドはその場にうずくまる。
マイケルはゆっくりと、前屈みで倒れ潤んだ目でロナルドを見つめる。
その向こうに拳銃を構えてアメリーが立っている。
ロナルドはマイケルに駆け寄る。
アメリー「動かないで」
アメリーはマイケルの死体を踏みつけて、呆然と佇むロナルドに歩み寄る。
アメリー「ロナルド教授……」
アメリーはロナルドの首から無線を外し踏みつける。
ロナルドはアメリーを凝視する。
アメリーは手袋をはめるとマイケルの手から銃をとり、銃口をロナルド教授に向ける。
ロナルド「なぜだ?」
アメリー「ご協力有難う。ここでマイケルと一緒に死んでいただくわ」
ロナルド「君がこの事件の黒幕なのか……?」
アメリー「いいえ。だけど、この計画を組織に提案したのは私」
ロナルド「組織? マイケルも組織の一員なのか?」
アメリー「いいえ。彼は間抜けな死体よ」
アメリーはマイケルを足で転がす。
ロナルド「なぜこんなことに……」
アメリー「あなたが死ぬまでは私の協力者ですから教えてあげるわ」
ロナルドはマイケルを見つめながらうな垂れる。
アメリー「黒幕はオーストリアの製薬会社ゲッペル。ゲッペル社は、白人だけに効果的に効くエイズ治療薬の開発に膨大なお金をつぎ込んだ。しかし、完成しなかった。その時、精製過程で生まれた悪魔のウィルスNERO666」
アメリーはカプセルを取り出すとロナルドに見せる。
アメリー「なぜかこのウィルスは、フランス人の遺伝子配列に多く出現する特定の遺伝子配列に強く反応して肺機能を著しく低下させ死に至るの。 まさに、イエス・キリストの血脈を持つ、世界中のフランス民族を根絶やしにさせるウィルス。そして、このウィルスの治療薬が去年のクリスマスに完成したの」
ロナルド「すべてが罠だったのか?」
アメリー「馬鹿な学説を証明するために彼は良く働いたわ」
ロナルドはマイケルの手を掴む。
アメリー「偶然にも、彼の父の先祖がマリー・アントワネットを愛したハンス・アクセル・フォン・フェルゼン公だったのには私も驚いたわ。偶然とはいえ正直言うと、あなたの学説を利用するのにうってつけの人物だった」
ロナルド「では、ウォンも私の学説を証明するための……」
アメリー「ウォン? ウォンは著名な共犯者として選ばれたの。彼とは偶然ウィーンのシェーン・ブルン宮殿で出会った。彼には、モーツァルトの霊が共鳴する役回りを演じてもらうことにしたの」
ロナルド「ウォンはそのことは知らないのか?」
アメリー「もちろん彼は知らないわ。暗号に太極図を描いたのも、韓国人のウォンに疑惑を向けさせる工夫なのよ。彼はテロリストとなり、銃殺されるという筋書き。あなたとマイケルの会話は警察官全員が聞いている。最初の銃声はあなたがマイケルから撃たれる銃声。二発目の銃声は私がマイケルを撃つ銃声、すべての警官がそう証言してくれるわ。ただ順序が違うだけ……」
ロナルド「質問がある。爆弾はどうやって起爆させる?」
アメリー「起爆装置はこれ、この鈴の音色が増幅されて無線で爆弾に信号を送られる
マリー・アントワネットが鉄格子越しに鈴を渡している―――
アメリーはネックレスの鈴をロナウドに見せる。
ロナルド「魔笛は?」
アメリー「あなたをここに呼び寄せるための偽物」
アメリーは時計を見る。
アメリー「あと数時間で世界中のフランス人がパニックになるわ」
ロナルド「その時に救世主のごとく、ゲッペル社が免疫の血清を発売する」
アメリー「そう、お察しのとおりだわ、フランス政府はゲッペル社の言い値で買い取る。もちろん、私には巨大な報酬が渡される。決定事項なのよ。あなたが、ここで命を失うことも……教授」
アメリーはロナルドに銃口を向けると引き金を引く。
バーンッ―――
ロナルドは胸を抱えて倒れる。
血しぶきがウォンの楽屋の鏡に飛び散る。
アメリー「さようなら、ロナルド教授。……永遠に」


85コンコルド広場付近

一機のヘリコプターが待機している。
黒装束に身を包んだ女性がヘリに爆弾を取り付けている。
爆弾の装置が赤く点滅する。
フードの中から女性の顔が見える。
マリーである。
マリーは走りながら、ウォンがいる会場へ戻る。


86コンコルド広場 仮設会場内

アメリーが足早に歩いて、黒マントのマリーに目で合図をする。
マリーは、箱から時限装置爆弾を通路の柱に設置してボタンを押す。
ピピーッピピッ―――。
カウントダウンが始まる。
150・149・148……。

アメリー「急いで!!」

アメリーの声で、二人は一斉にテントの出口へと走りだす。
アメリーは走りながら警備中の警官達に叫ぶ。

アメリー「爆弾が仕掛けられたわ! 観客を非難させて!」

警官たちが観客たちを誘導して一斉に避難させる。
数発の銃声と叫び声が聴こえる。
オペラ劇場が逃げ惑う観客たちで混乱する。
アメリーは、遠くに見えるグラン・ダルシュに向けて、鈴につけられた起爆装置の紐を引く。
鈴が音を奏でる。
リンリンリン―――鈴の音


87コンコルド広場

大きな爆発音がパリの空に響き、凄まじい炎が天空に舞い上がる。
人々の叫び声がコンコルド広場に響く。


88新凱旋門広場の彫刻展示会場

爆弾処理班が右手に電波遮断幕を被っている。
ベッソンが風を感じると

ベッソン「爆風が来るぞ!! 全員電波遮断幕を抑えろ!!」

全員が電波遮断幕を抑えているが、今にも電波遮断幕が飛びそうになる。
爆弾処理班の向こうに観覧車がゆっくりと崩れ落ちる姿が見える。


89コンコルド付近 

アメリーがヘリに飛び乗ると同時に、ヘリが飛び出す。
ヘリのガラスに、コンコルド広場の炎が写っている。
やがて、シェーン・ブルン宮殿の奇妙なモニュメントの悪魔になる。
その場所からアメリーが薄ら笑いを浮かべて、パリ市民が逃げ惑う姿を覗いている。


90コンコルド広場 会場付近

ウォンとマリー、燃える会場を見ているとヘリが上空に現れる。
二人は見つめ合うと同時に頷く。
その瞬間、ヘリは大きな爆発音と共に墜落する。
ヘリは、黒煙とガソリンの大きな炎に包まれながら、エトワール凱旋門に激突し大破する。 マリーがヘリに仕掛けた爆弾の起爆装置を手に握り締めている。

マリー「ウォン、これでいいのね」
ウォンは静かに頷き、女の肩を抱き寄せた。震える女の唇にキッスをした時、闇の向こうから爆発の閃光が、二人を照らし出した。爆風による強い風が二人の周りに渦巻く。
 風がやむと同時に、ウォンは全身の筋肉が溶けていく感覚に陥った。女の細く長いカマキリのような指に、挟まれた注射器の針が、妖しく光った。その注射器の中には、南米の密林ジュバという木から採取された緑色の強力な幻覚剤が入っていた。密林の王、巨大な大蛇アナコンダでさえ、一滴の雫で数週間、眠らせる威力を持つ薬である。それは、小さなエッフェル塔のような形状をしていた。そして、幻覚剤は甘い香りを放った。
 ウォンの柔らかくしなやかな肉体が、スローモーションのように倒れ込んでいく。十八世紀の石畳の上に、ゆっくりとウォンの頭が数回、バウンドすると、ウォンの表情が苦痛に歪んだ。
 消防車から放水される水しぶきがウォンの顔にかかる。一つ、二つ、やがて無数の雫でウォンの美しい顔が被われていく。雫の球面には、燃え上がる劇場の炎が映し出されて、揺れていた。消防車のサイレン音が次第に大きくなっていく。



91 ウォンの幻覚

ウォンの瞳の瞳孔の中に、女が立ち去る靴音が響く。女のシルエットが次第に小さくなっていく。はっきりしていた女の輪郭がぼやけていった。
 ウィーンの奇妙なモニュメントで聞いた、幼い笑い声が、薄れゆく意識の中で、聞こえてくる。ウォンの動かない瞳孔に、幼い男の子と女の子が手をつないで、炎上する凱旋門に向けて走っていく姿が映っていた……。

オペラ「魔笛」最終章の映像が、蜃気楼のように画面に現れる。
太陽が光り輝き、夜の女王軍は打ち負かされる。大きな太陽が舞台中央に浮かび上がる。正義の軍は夜の女王軍に勝利する。全員が新しい時代の到来を祝う。


92パリ市内 

凱旋門が復旧されている。
コンコルド広場で子供たちが遊んでいる。


93ドバイのあるホテル

サイートがテレビを見ている。
CNNニュースからアナウスが聴こえる。
キャスター「コンコルド広場での爆破テロでは35名の負傷者と死者2名。死者はパリ市警のアメリー警部と、オクスフォード大学大学院生のマイケル・ペイドンさんと思われる遺体が発見されました。いずれの遺体も爆発の為に損傷が激しく確認作業は困難が予想されます。今回のテロに深く関与されたと見られるゲッペル社は、今回の事件にまったく無関係というコメントを表明しましたが、フェルゼン会長はじめ、社長および重役陣が辞表を提出しました。しかし、すでにフランス政府から事件解明の要望書が提出され、国際裁判所で刑事責任がまだまだ追及される予定です。」
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by masashirou | 2009-12-10 09:47  

映画「ミッテランコード」日本語脚本その7

66コンコルド広場

「魔笛」の舞台が始まる。
夜の女王が王女パミーナに剣を渡す。夜の女王は悪魔ザラストロを刺すように命じて去っていく。王女パミーナが悪魔ザラストロに、母の命令のことを話す。悪魔ザラストロは『この神聖な殿堂には復讐などない』と告げる。

67 1798年 エジプト テーベ近郊

絵画に描かれたナポレオンが動き出す。
軍隊を率いて馬に跨り、エジプトへ向かう。


68ルクソール神殿

6人の学術調査団が古代エジプト文字ヒエログリフの解明の鍵となるロゼッタストーンを発見するシーン。
3人のフランス兵が砂に下半身が埋まったスフインクスの鼻を遊びながら射撃している。
スフインクスの鼻が次第にかけていくシーン。


ナポレオンは学術調査段から報告を受けると、ルクソール神殿でエジプトの街を見下ろす。
ナポレオン「余は、偉大な新しいフランスのファラオになる。パリの街をこの偉大な歴史を持つルクソール神殿に似せて作り替えるぞ」
学術調査団が画家にスケッチを描くように指示する。
画家が街並みをスケッチしている。
ナポレオンはスケッチを覗き込む。
ナポレオン「なぜずれている?」
画家「よく観てください皇帝陛下、神殿と神殿に通じる道はナイル川の形に似せて6度だけ中心の軸がずらされて建設されているのです。この6度は母なるナイル川とルクソール神殿を支配したファラオを象徴する角度なのです。」
ナポレオンは建物を注意深く見ると笑みをこぼす。
ナポレオン「面白い話だ・・・」


69コンコルド広場

オペラ「魔笛」が続く。
王女パミーナと王子タミーノは、夜の女王が悪魔であり、悪魔ザラストロは新しい時代の救世主であることを知る。


70会議室

ロナルドは頷く。
バルマン「それで、教授が解読した暗号から推測してテロはいつどこで起こるとお考えですか?」
ロナルド「テロリストは、象徴的事件にしたいという強い願望から最も有名な塔と門を選ぶはずです。この二百年の間に、パリで旧市街地の高度規制が除外され、建設された高い塔が二つ、そして観光客がコンコルド広場で必ず目にする有名な塔……」
バルマン「エッフェル塔とモンパルナス・タワー、それにコンコルド広場のオベリスク…。」
ロナルド「そう、その通りです。とくに、このオベリスクこそマリー・アントワネットが処刑された場所に建設されました」
バルマン「では門といえば、それは、カルーゼル凱旋門、エトワールの凱旋門と、新凱旋門グラン・ダルシュということになりますか?」
ロナルド「そうです。素晴らしい答えです。ムッシュ・バルマン。パリの市街地図はありますか?」
バルマンが軍事作戦用の距離と方位が分かる大きな地図を取り出す。
ロナルド「そう、普段われわれが見ているパリの地図では気がつかないのですが……」
ロナルドは赤鉛筆で机にある定規を使い、地図にルーヴル美術館前の広場、カルーゼル凱旋門からエトワール凱旋門、そして新凱旋門まで、シャンゼリゼ大通りの上に線を引くと、芯が折れてしまう。
ロナルドは表情を変えずに、話を続ける。
ロナルド「二つの塔の関係は、人の目では見抜けません。この秘密の線は、聖なる女姓の器に導くミッテラン大統領のローズラインなのです。聖なるローズラインの作者、ミッテラン大統領は、秘密を隠すために巧妙な仕掛けをしました」
モンパルナス・タワーからエッフェル塔、新凱旋門を結ぶ中心線とエッフェル塔の前のシャン・ド・マルス公園とエッフェル塔、シャイヨー宮と結ぶ中心線は北東に三度ほどずらして建設されていることがわかる。

聞き入る警部たちの顔のアップ

ロナルド「ご覧下さい。中央線は北東に三度ほどずれています。そのために、今まで誰も、この秘密には気がつかなかったのです。この法則は、ミッテラン大統領がナポレオン皇帝エジプトのルクソール神殿と門の中心線の軸が六度ずれていることを模倣したのです。こうしましょう。そのチョコレートをお借りしてもよろしいですか?」

ロナルドはバルマンからチョコレートを受け取ると、地図を斜めに折りたたみ溶かしたチョコレートを、その地図の折り目の中に流し込む。
そして、地図をゆっくり傾ける。
顔を見合わせる3人。
ロナルド「そろそろいいでしょう」
ロナルド教授が地図を開くと、折り目に沿ってチョコレートが一本の線を描いている。その線上には、見事に、モンパルナス・タワーからエッフェル塔、そして、新凱旋門の三つのポイントが乗っており、先ほど赤く引いた線と交わっている。
パリの地図の上に、巨大なVの文字、神の聖杯が現れる。
ロナルド「ここが、恐らくミッテラン大統領がパリに残した暗号、ミッテラン・コードです」
バルマン「ここが!? しかし、なぜテロリストはこの場所を標的にしたのでしょうか?」
ロナルド「恐らく、死刑廃止を宣言したミッテラン大統領が残したミッテラン・コードに気がついたテロリストがその象徴として標的にしたと考えられます。これは、被害者がマリー・アントワネットの死に関係した子孫。そして、マリア・テレジアの怨念ということにつながります」
バルマン「では、日時は?」
ロナルド「パリが歓喜に満ちるフランス革命の記念日。7月14日です。」
ペレ「今日じゃないか!」


71コンコルド広場

オペラ「魔笛」の舞台。
火と水の試練に立ち向っている王子タミーノを王女パミーナが、魔法の笛を吹き助ける。やがて、夜の女王が、悪魔ザラストロを裏切ったモノスタトスと一緒に、神殿を襲撃しにやって来る。王子は「両軍が武器を捨てて、話し合いで平和な新しい希望の世界を建設しよう」と呼びかける。


72会議室

ロナルド教授が沈黙を破る。

ロナルド「『二つの太陽が出現する時間』この暗号には結構時間がかかりました」
バルマン「では、分かったのですね」
ロナルド「もちろんです。太陽は本当の太陽のことではありません。マリー・アントワネットとルイ16世が処刑されたコンコルド広場、これが『聖者の王の血が滴り落ちた大地』、ここに大きな太陽を想像させる観覧車が今年から再開します。これが一つ目の太陽」
バルマン「では二つ目の太陽は?」
ロナルド教授は壁に貼ってある一枚のポスターを指さす。
ロナルド「コンコルド広場の野外オペラ劇場で、今日の十八時から、モーツァルト生誕二五〇周年記念オペラが開かれます。オペラの開始に合わせて、観覧車にネオンの明かりが一斉に点灯されます。題目は確か、『魔笛』でしたよね?」
ロナルド教授は、自分を凝視する警部たちを見回しながら言う。
ハーバード「そうですが……」
会議室を沈黙が包む。
ロナルド「オペラ『魔笛』のラストシーン。新しい時代の指導者ザラストロが、太陽が夜に打ち勝ったと宣言します。全員がエジプトの冥界の支配者オリシスと、殺された夫を魔術で復活させた女神イシスとともに讃える合唱のうちに幕となります。
皆さん。『パリ』の語源をご存じですか?Parは『等しい』と言う言葉です。Issisは、冥界の支配者オリシスの妻、エジプトの女神『イシス』です。まさにその時こそ、パリが死者を魔術で蘇生させる冥界の女神イシスと同化するのです。そこで、舞台に大きな太陽が出現します。」
アメリー「その時が二つの太陽が出る時……」
ロナルド「そうです。帝マリア・テレジアの怨霊が冥界から呼び起こした魔界の王『赤い竜』の蘇生です。」
バルマン、腕時計を見る。
時計は19時12分を指している。
バルマン「終わるのは二十時……。あと39分!?」
バルマン、無線でベッソン副隊長に連絡する。
バルマン「テロの標的が分かった。5分後に出発だ!!」
ベッソン「了解しました」
バルマンは無線を切る。
困惑するバルマンがロナルドに尋ねる。
バルマン「でも、どこを探せば……?」
バルマンはロナルドを見つめる。
ロナルド「テロリストは次のように書いています。『聖なる竈に記された文字を持つ、三つの言葉が、時を告げる双頭の雄鶏の宮殿から水星の神を蘇らせる。水星の神は宇宙に突き出た脳をあぶりだし、薬草の神ディアン・ケヒトを呼び起こす』という言葉がありますね。邪悪な左脳と右脳というのはパリの旧市街地区のことでしょう。宇宙に突き出た脳」

ロナルド、カバンから写真を取り出す。
グラン・ダルシュのヘリポートが写された衛星写真である。
時計が19時15分を指す。

ロナルド「ここに『H』と書かれています。聖なる竈に記された文字というのは『H』です。 三つの言葉の二つはマリア・テレジア女帝の家の名前『Habsburg(鷹の城)』の『H』、もう一つが『Hatred』の『H』、憎しみという言葉です。ウィーンのシェーン・ブルン宮殿に造られた魔竜のモニュメントの頂上に輝くハプスブルク家の紋章双頭の鷲が、このグラン・ダルシュの屋上に、文字として、書かれているのです。
 最後の言葉に、『宇宙に突き出た脳』という記載があります。これは、哲学者カントが『手は外部に突き出たもう一つの脳である』と言っています。つまり運命を知らしめるのが『Hand』の『H』、手なのです。三つの言葉を合わせると、『ハプスブルクの憎しみを示す手』という意味になります」

バルマン警部が、ロナルドを見つめる。

バルマン「手……?」
ロナルド「暗号文の『双頭の雄鶏の宮殿』とはベルサイユ宮殿のことです。
庭園の中心に黄金に輝く木星の神が、水の中から宙に向かって石を投げている彫像があります。その手が爆発するのです」
バルマン「ベルサイユ宮殿が標的?」
ロナルド「いえ、パリです。グラン・ダルシュの広場に先週から、木星の神の『右手』と『左手』という彫像が展示されています」

ロナルドは、写真を取り出す。ロナルドは石を握っている右手の写真を指さす。

バルマン「まさか!? 街の真ん中で爆弾を仕掛けるなんて不可能です」
ロナルド「爆弾を仕込むことができるのは製作時です。この彫像作家ソフィア・ロドリコはこの彫像製作後に、アトリエは不審火による火災で消滅しました。また、ソフィア・ロドリコは行方不明になっています。この石の中に仕掛けられた小型の爆弾で、細菌カプセルが炸裂するのです」
アメリー「どうしてそう言えるのですか?」
ロナルド「暗号の言葉『邪悪な赤い竜が目覚め、大きく息を吐き、紅の炎が燃え盛り、小さき悪霊たちを解き放つ』、『薬草の神ディアン・ケヒト』、『ディアンの悪霊たち』というキーワードからそう推定されます。赤い竜の吐く息の中には猛毒があるという伝説があります。新種の細菌が仕組まれた爆弾に違いありません」

 ロナルド教授はそう言うと、壁に貼られた地図に赤いインクのペンで大きくグラン・ダルシュに五芒星の印を書き入れる。
バルマンは無線でベッソンに連絡する。
時計が19時17分を指す。

バルマン「爆弾処理チームを編成しろ。細菌爆弾を覆う拡散防止テントも用意しろ」

アメリーの表情が歪む。

バルマン「とにかく出発だ!」
ベッソン「了解しました!」


73パリ警察

爆発処理班の装甲車とパトカーが、物凄いスピードで警察署を出てゆく。


74ある会議室

ロナルド、アメリー、ハーバードが会議室に残っている。

アメリー「犯人は誰ですか……? 教授」
ロナルド「警部、特定は出来ませんが、指揮者のリー・ウォンが一番疑わしいと考えています。彼は一月ウィーンのあのモニュメントに行っています。完璧主義者の犯人は必ず、『魔笛』のラストシーンの太陽の出現に合わせて爆破させるはずです。その美学は守るに違いありません。ですから、犯人が爆破点火装置を持っているはずです」
ハーバード「爆破点火装置?」
ロナルド「暗号文の中に、『幽界の天籟の響きに合わせて』とあるでしょう」
アメリー「笛が悪魔の笛になる瞬間ですね。笛を持っているウォンが犯人?」

アメリーの口が薄っすらと笑っている。


75パリ市内 

装甲車の中でバルマンとベッソンが話している。

ベッソン「細菌拡散防止テントごと吹き飛ばされる可能性もありますよ」
バルマン「……」

そこにアメリーから無線が入る。

アメリー「バルマン隊長。テロリストの正体がほぼ断定できました。
テロリストは魔笛を指揮しているリー・ウォンという韓国人です。犯人は爆破点火装置を持っている可能性があります。最悪な事態に備えて狙撃準備を」
バルマン「了解。ベッソン聴こえたか?早急に配備しろ!!」
アメリー「こちらは起爆装置の捕獲に向かいます」

無線を切るバルマン。

バルマン「くそっ!! 起爆装置があるなら電波遮断幕だ……。ロナルドは、なぜ先にそれを言わないのだ」

バルマンは窓を殴る。

ベッソン「隊長。我々はあらゆる事態に対応できる特殊テロ対策班だと隊長に教えられましたよ」

隊員の一人がバルマンに箱を渡す。
バルマンはベッソンと握手を交わす。


76パリ市内 

数台のパトカーがフランス市内でサイレンを鳴らしながら猛スピードで走り抜ける。
ロナウド、アメリーがパトカーに乗っている。


77新凱旋門広場の彫刻展示会場

装甲車とパトカーが急停車する。
同時にバルマン警部とベッソン警部、数名の爆発物処理班が飛び降りて来る。
警官が一般市民を非難させる。
そこに、バルマン、ベッソンと数名の爆弾処理班が足早に彫像に向かう。

ベッソン「魔笛終了まであと約15分です」


78グラン・ダルシュ付近 高層ビル

軍隊仕様のハマーが数台停車すると、真っ黒な軍服に身を包んだ7名の狙撃兵がビルを駆け上がる。狙撃兵を護衛するように付近を警戒する数名の歩兵もいる。


79コンコルド広場

豪華にライトアップされたオペラ会場は満席状態。
観客席のあちこちで大きな扇子が動いている。
舞台中央の真上にハプスブルク家の家紋である双頭の鷲の紋章が見える。
そこに、ロナルド教授とアメリー警部が四十七名の特殊警察部隊を引き連れて、静かに会場に到着する。
時計は19時47分を指している。
舞台は最後の幕が開くと、夜の女王が侍女たちを従えて、悪魔ザラストロを裏切ったモノスタトスが神殿を襲撃しようとやってくるところである。
ロナルドは呟く。

ロナルド「あと、十三分後には、第二の太陽が昇る」


80新凱旋門広場の彫刻展示会場

ベッソンが彫像の右手付近に電波探知機をあてている。

ベッソン「右手には爆弾を示す異物が検知できません」
バルマン「ロナルド教授は右と確かに言った・・・・」
ベッソン「隊長、左の手を調べてみましょう」
バルマン「そうしてくれ」
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by masashirou | 2009-12-10 09:44  

映画「ミッテランコード」日本語脚本その6

62コンコルド広場

ウォンの指揮棒が次第に激しくなる。舞台では「魔笛」が演じられている。

王子タミーノが笛を吹くと、神殿から逃げようとしていたパパゲーノと王女パミーナがその音色を聞きつけやって来る。王女パミーナと王子タミーノは、眼が合った瞬間、深い運命の絆を意識する。そして、深い恋に落ちる。夜の女王は自分の領土を奪った悪魔ザラストロへの復讐の思いを歌う。


63ある会議室

パトリック・ハーバード(35)DSTフランス国土監視局・情報局員。

パトリック「では、この暗号文の一節『それらの姿は、キリストの紋様がパリの空に現れる、聖なる丘からその勇姿を現す』という部分ですが、ロナルド教授、これはどこを意味しているとお考えですか?」
会議室が静まり返る。
ロナルド「聖心が現れる教会、イスラムのモスクの建築様式で作られた白亜の教会です」
アメリー「サクレ・クール寺院?」

ロナルドが深く頷く。


64サクレ・クール寺院の広場 2週間前

飛行機の轟音が聞こえる。
ロナルドが目を開けると東から西に飛行機が飛んでゆく。
ロナルドの手にした携帯からマイケルの声が聴こえる。
マイケル「何が見えます?」
ロナルド「飛行機が飛んでいる」
マイケル「では、もう一度その場所で目を閉じてください」
ロナルド「マイケル君、はっきり言ってくれないか? 私にはもう、時間がない」
マイケル「待つ忍耐を持てる人間になるかどうか、また、何を待つかによって人生の偉大さがきまるいつも教授が言っていたじゃないですか!?」
ロナルド「ことと場合による。いいから教えてくれ!! ……。マイケル君? マイケル!!」
ツーツーツー―――。電話の音
電話が切れている。
ロナルドは顔をしかめると、大きく深呼吸をする。
広場を歩く観光客がロナルドを不思議そうに見つめている。
数分後―――。
ロナルドの時計が、10時32分を指す。
飛行機の音が再び聞こえる。
ロナルドが空を見上げると、飛行機が北から南へ飛んでゆく。
ロナルド「キリストの紋章が空に現れる……」
ロナルドはマイケルに電話をかけようとすると、マイケルが丘の上に現れロナルドに向かって手を振っている。ロナルドは、教会の屋上に登り、3つの建物、モンパルナス・タワー、エッフェル・タワー、新凱旋門のあるラ。ディファンスビル群を見つめる。


65ある会議室

ロナルドがゆっくりと目を開けると、スタンが笑い出す。

スタン「ロナルド教授。そんなフライト計画に誰が許可を出したのです?」
ロナルド「フランス革命200周年記念の日から運行されています。もちろん当時の最高権力者であるミッテラン大統領が許可しました。これが当時の命令書のコピーです」
ロナルド教授は力を込めて話す。
ロナルド「そうです。マイケル助手がパリ上空で雲が消滅する五分以内に東西と南北に交差するジェット旅客機のコンピュータ・シュミレーションを解析して見つけました。フランス航空のAF234便ウィーン行きの発着が十時二十分、同じAF33便ニース行きの発着が十時三十分、東の空に向かう飛行機と、南に向かう飛行機が創るジェット雲が、このサクレ・クール教会上空で交差する時間が十時三十五分。この写真が、サクレ・クール教会で撮影された写真です。

飛行機が交差する映像のオーバーラップ
教会から見えるモンパルナス・タワー、エッフェル塔、ラ・デファンスの高層ビル群が地平線に大きな形を誇示する映像のオーバーラップ

ロナルド「聖なる丘とは、この教会が建つモンマルトルの丘です。歌と踊りの殿堂ムーランルージュのネオンが輝くこの丘こそ、暗号文の『美と歌の神である女神ダヌーが舞い降り、啓示を与える場所』なのです。この丘からパリ市内を見ると、左からモンパルナス・タワー、エッフェル塔、ラ・デファンスの高層ビル群が地平線に大きな形を誇示しています。つまり犯人はこれらの構造物の関係に何らかの秘密を込めたはずです……」
 会場は静まり返った。ロナルド教授は話を続けた。
ロナルド「それに……、犯人は今回の事件は、象徴的事件にしたいという強い願望があります。ですから最も有名な塔と門を選ぶはずです。この二百年の間に、パリで旧市街地の高度規制が除外され、建設された高い塔が二つ、そして観光客がコンコルド広場で必ず目にする有名な塔……」
スタン「エッフェル塔とモンパルナス・タワー、それにコンコルド広場のオベリスク……」
スタンが大声を出した。
ロナルド「そう、その通りです。マリー・アントワネットとルイ16世が処刑されたコンコルド広場のオベリスクの場所こそがギロチン台の場所なのです。」
スタン「では門といえば、それは、カルーゼル凱旋門、エトワールの凱旋門と、新凱旋門グラン・ダルシュということになりますか?」
スタンが得意そうに発言する。

ロナルドは、ミッテラン大統領の命令で、フランス革命200周年記念の式典で上空に祝福の白い十字架を描く為の極秘飛行実験が行われたことを示す文書とロナルドが撮影した白い十字架雲の写真、教会の屋上から見える3つの建物の写真を全員に示す。

不機嫌そうにバルマンが写真を見つめる。

バルマン「教授。申し訳ないが、もしそうだとしても、偶然の一致だと思いますが・・・。では、各自持ち場に戻ってくれ」
幹部たちは騒がしく部屋を出てゆく。
部屋にはロナルドとペレとアメリーが残る。
アメリー「私は教授を信じています」
ロナルド「ありがとう……」
バルマンがロナルドに目を合わさずにメアリーに挨拶をする。
会議室を出た時、ペレ長官がバルマンを引き止める。
ペレ長官はロナルドに聞こえないように小声でバルマン警部に言う。
ペレ「バルマン警部、私もこの21世紀の現代でも、幽霊を信じるオカルト好きな英国人は嫌いだが、会議の場では、少しはロナルド教授に敬意を払うようにしてくれ・・・」
バルマン「はっ。そのようにしているつもりですが」
ペレ「大統領から一刻でも早い解決をと言われているのでな・・・」
バルマン「かしこまりました」
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by masashirou | 2009-12-10 09:43  

映画「ミッテランコード」日本語脚本その5

44パリ市内

テロに怯えるパリの街
シャッターが閉まった繁華街。


○フランス市内 五つ星ホテル

ゲッペル社の幹部が数名、その後ろにフェンゼン会長が背中を向けて座っている。
コンコン――ドアをノックする音
幹部「入りたまえ」
ウォン、部屋に入ってくる。
ウォン「リー・ウォンです」
幹部「君にここまで来ていただいたのは、一つ忠告があるからだ」
ウォン「何でしょう?」
幹部「我がゲッペル社を脅している人物がいる。わが社の元科学者サイートだ。わが社に数々の功績を残してくれた優秀な社員だった」
ウォン「はい……」
幹部「だが、彼には理解できなかった。大勢が助かるためには、犠牲が必要ということを……。君は理解できるだろう」


45フランス大統領官邸

三十二名の暗号解読の専門家たちに、シラク大統領が話している。
その中にロナルドもいる。
シラク大統領「我が国は、テロの恐怖にさらされています。フランス総合情報中央局の必死の追跡調査にもかかわらず、三ヶ月たっても、発信元すら特定できません。恐らくこの暗号が事件解決の重大なヒントだと考えました。そこで、是非、この暗号の解読にご協力いただきたい」


47サイートの家

家の前に車が止まると、ウォンとマリーそして二人のエージェントのジェームスが降りてくる。


48サイートの部屋

質素だがいくつかの美術品が飾ってある部屋
アラブの男・サイートが座っている。
棚の上にゲッペル社の表彰状が見える。
そこに、ジェームスとウォンとマリーが入ってくる。

ジェームス「こんにちはサイートさん」
サイート「こんにちは、みなさん。どうぞ座ってください」
ジェームス「それで今回のお話は?」
サイート「先月、サンレモでお二人の競演に感動しました」

ウォンとマリーは顔を見合わせ微笑む。
サイート「ジェームスさんとマリーさん。申し訳ないですが、ちょっと席を外していただけますか?」
ジェームスは渋々部屋を出てゆく。
サイートは立ち上がるとゲッペル社の科学者たちが写っている写真を見つめる。
サイート「ウォン君。君の任務は何だね?」
ウォン「任務?」
サイート「そう。コンサートのスポンサーでもあるゲッペル社。君は何をしろと言われている?」
ウォン「パリのコンコルド広場で『魔笛』を指揮します」
サイート「私は君の出生も知っている。そう、なぜここにいるかもだ。知っていることを全部話してもらえないかね」
ウォン「いえ……。話すことはそれだけです」
サイート「では、私から話そう。私はゲッペル社の元科学者だ。NERO666を開発したのは私だ」


49ウィーン シェーン・ブルン宮殿 あるモニュメント前

ロナルドとマイケルがモニュメントを見ている。

ロナルド「マイケル君。僕の仮説をどう思う?」
マイケル「教授らしくないですね!! アメリー警部も協力してくれているし早くサイン帳を調べてみましょう」50ウィーンホテルの部屋

マイケルがパソコンのキーボードをたたいている。
その傍らで、サイン帳の名前を見ているロナルド。
マイケル「パリ市警のネットワークに接続できました」
ロナルドはマイケルの隣に座ると葉巻をくわえる。
ロナルド「さて、マリア・テレジア、マリー・アントワネット王女、モーツァルト。類似する人物が出てくるか……」
時計が7時14分を指す。

マイケル「教授!! あの有名なウォンが一ヶ月前にサインしています」
ロナルド「ウォン!?」


51パリ市警 フランス国家警察総局

ペレ・クロード(58)DGPN(フランス国家警察総局)長官が新聞を見る。
『2007年7月1日 対極図Tシャツで暴行。大学生死亡』
そこに、スタン・ハーマン(36)フランス共和国保安機動部隊 隊長
が入ってくる。
スタン「トニー巡査とアンソニー巡査が職務質問中に逃走した中国人を射殺した件でデモが過激化しています」
ペレ「テロリストの思う壺だな……」
スタン「国全体が疑心暗鬼になっています。特に東洋人に対しての不信感は……」
アメリー警部が入ってくる。
アメリー「謎の暗号文がすこし、解読されました。」
ペレとスタンは驚いてメアリーを見る。
ペレ「それで犯行日時と場所は?」
アメリー「それが……」
と、部長に解読文をわたす。
ペレとスタンが顔を合わせる。
ペレ「それで誰が解析したのだ?」
アメリーオックスフォード大学のロナルド教授です。」
ペレ「しかし、一部しか解読していないとは残念だ。ロナルド教授とはどんな人物だ。君が信用できる男か調べてくれ。」
アメリー「すでに、捜査に協力していただいています。私は信用できる人物だと思っていますが、しかし、パリ警察本部やフランス国土監視局との問題が発生していますので、困っています・・・」
ペレ「そうか。私が問題を解決する。至急ロナルド教授にパリに来ていただくように連絡を取ってくれ」
アメリー「はい」
ほほえむアメリー警部の顔

52コンコルド広場

ロナルドが広場の隅で佇んでいると立ち上がり歩き出す。


53チュイルリー公園
ロナルドは会議室の窓から、セーヌ河が茜色の光の中に包まれてゆっくりと流れていくのを見ていた。突然、セーヌ河の起伏のない表面にスクリーンが現れた。そして、スクリーンが次第に大きくなり、公園を歩く昨日の自分の姿が映し出された。ロナルドは昨日の出来事を思い浮かべた。
 ロナルド教授は、謎の解読のためにシラク大統領が用意してくれたリッツホテルにしばらく滞在していた。いつものように、朝早くホテルを出て、コンコルド広場のオベリスクの前にロナルドは佇み、見上げる。オベリスクの頭頂部が四角錐になっている。この形は太陽神ラーの力を表したもので、白い雲の間から地上に差す一条の光線を模したものである。古代エジプトでは、王であるファラオだけが、オベリスクを建設することが許されたという。ファラオたちは、死後に太陽神ラーになり、太陽神ラーの力が永遠に地上に降り注ぐ願いを込めた。より太陽に近くなるように、オベリスクの高さを競い合った。いつものようにチュイルリー公園を歩いていた。
 縦横に整然と一定間隔で木々が植えられている。
 いつもの道から外れて、公園の周辺を歩いていた。ちょうど曲がり角を通りがかった時、ルーヴル美術館の屋根から昇る、強い朝陽がロナルドの顔の右半分を輝かせた。
 ロナルドは、眩しくて眼を閉じた。そして、ゆっくりと眼を開けた。
 その時、斜めに直線に並んだ並木が、目に飛び込んできた。一つのアイデアが閃いた。

並木の道端を歩いているロナルドに朝日が当たる。
ロナルドは思わず目を閉じ、ゆっくり目を開けると、ロナルドの表情が変わる。
並木を見渡すと急に走り出すロナウド。


54リッツホテル ある部屋

ロナルドは引き出しを開け、パリ市内の地図を取り出すと新凱旋門を探す。
ロナルド「新凱旋門がない……。地図が古い」
ロナルドはフロントに電話をする。
ロナルド「パリ市内の一番新しい地図を持ってきてください」
ロナルドは受話器を置くと葉巻に火をつけて外を眺める。
トントントン―――ドアをノックする音
ロナルドがドアを開けると、コンシェルジェがパソコンを持って入ってくる。
コンシェルジェ「こちらをご使用ください」
コンシェルジェがパソコンを開くとGoogleの3DEarthサイートが開いている。
ロナルドは葉巻をもみ消すと笑顔を浮かべる。
ロナルド「ありがとう」
ロナルドは、目的の地図を開くとテーブルから裁縫セットを取り出す。
そして、モンパルナス・タワーとエッフェル塔がその糸の上にのるように注意深く地図を回転させ、ゆっくり、糸の上を眼で追っていく。
糸の左端に、新凱旋門の屋上が重なることを確認すると、マウスをクリックして地図を拡大していく。
すると、ヘリポートのHと書かれた文字が現れる。
ロナルド「やはりそうか!!」
ロナルドは、時計を見ると部屋を飛び出る。


55リッツホテル 正門

ロナルドはタクシーに乗り込むとグラン・ダルシュ(新凱旋門)へ向かう。
ロナルド「オペラ通りからシャンゼリゼ大通りを抜ける道に行って頂けますか?」
ロナルドは、パソコンと解析された文書を読んでいる。
タクシーは、エトワール凱旋門を抜け、グラン・ダルシュが見えてくる。

56グラン・ダルシュ(新凱旋門)

ロナルドはタクシーを降りると、階段を駆け上るとグラン・ダルシュの中に入っていく。


57グラン・ダルシュ 屋上

エレベーターの扉が開くと駆け足で屋上に向かうロナルド。
誰もいない屋上でロナルドはパリの町並みを見渡す。
エッフェル塔を見て首を傾げるロナルド。
そして、エッフェル塔の後ろに少し、重なって見える小さなビルを見つける。
ロナルド「あれはモンパルナス・タワーではないな……。 どこだ……」
ロナルドは一人呟きながら、注意深く街並みを見渡す。
ロナルド「やはり見えない。仮説はむなしく消えたのか……」
諦めかけたロナルドに緊張が走る。
ロナルド「いや待て。あれは、モンパルナス・タワーだ!」
シャンゼリゼ大通り―――
エトワール凱旋門―――
ルーヴル美術館―――
コンコルド広場の巨大観覧車―――
ロナルド「大いなる神聖なる器、聖なる竈がパリに現れた……」
ロナルドは走り出す。


58ある会議室

ロナルドが入り口から入ってくる警察幹部を見ている。
スクリーンにはパリ市内の地図が投影されている。
ロナルドは赤いレーザーポインタのスイッチを何度も押しながら、アメリー警部が入ってきたことを確認すると話し始める。
ロナウド「パリは、ここ、セーヌ河のシテ島の集落から始まりました。そして、パリやルーヴル宮殿が現在の姿になったのは、十九世紀半ば、ナポレオン3世の時代です。セーヌ県知事であったオスマン男爵が、現在の12区東部および13〜20区の近郊を新たにパリ市に編入し、現在のパリがほぼこの時に完成しました」

地図の数字の色が変わる。

ロナルド「二十の区が大きな螺旋状の渦、まるでわれわれが住む銀河宇宙のような渦の中に取り込まれるように形成されました。二十世紀末、そして、ミッテラン大統領の『パリ改造計画』により、ルーヴル宮殿のガラスのピラミッドや新凱旋門のグラン・ダルシュが建設されたのです。ご覧の通り、区はパリ中心部の1区から、右回りの渦巻状に番号が付けられています」
首をかしげながら、苛立つようにロナルドを見ている警察幹部たち。
若い警察幹部スタンが立ち上がる。
スタン「教授、われわれはフランス人ですよ。そんなことは小学生でも知っていますよ。地理に弱い英国人なら、ともかく……」
 険しい表情で、若い警部の一人がロナルドを睨みつけるように言った。
アメリー「皆さん、最後までお聞きしましょう。教授、失礼しました。続けてください」
 アメリー警部が優しくフォローする。
ロナルド「有難う、アメリー警部。敬愛するフランス警察の皆さん、失礼しました。これからが本題です」
ロナルドは、大きく息を吸い込む。
ロナルド「ここに、コインが有ります。皆さんもコインを手に取ってください。いいですか?コのコインの形はどんな形でしょう?」
ロナルドは二つの指でコインを挟んで大きく上に手をかざした。
「円です。丸い円」
先ほどの若い警部が答えた。
「そうでしょうか?」そう言うとドナルドは人差し指と親指に力を入れてコインを水平にして持った。
「コインの形はどうでしょうか?」
スタン警部は困惑した表情をして答えた。
スタン「長方形です。厚さのきわめて薄い長方形・・・」
ロナルド「そうです。先ほどは円だったものが、一瞬のうちに、長方形に見えるのです。これから私がお話しする内容もこれと同じです。皆さんが普段、真実と思われていることは、ひとつの方向から見た真実なのです。人間は自分が見たいようにしか見ないものなのです。これから私がお話しする内容もこれと同じです。人は過ちを犯す。それは、人は自分が見たいようにしか見ないからです。今回の事件で殺害されたロンドン・パリ・アムステルダムの被害者12名は全てマリー・アントワネットの処刑に関わった家系を持っていた。偶然にしては出来すぎていると思いませんか?」
スタン「私は全く理解が出来ません。なぜなら、テロはその行為を行う目的は西欧諸国の政治的混乱を起こす。または自由主義的な資本主義の拡大を拒むものたちの狂信的なイスラム原理主義の教徒の犯行と見るのがもっとも正しいと思いませんか?」
ロナルド「戦争やテロが世界中に拡散すると多大な利益を得る国や企業が資本主義社会に存在する事実も指摘されていますから、そう簡単に決めつけていいとは思いません。武器を輸出する全て先進諸国は動機があるのです・・・・」


59コンコルド広場 近くの楽屋

ウォンとマリーが打ち合わせをしている。
そこに、ジェームスが入ってくる。
ジェームス「失礼。そろそろ準備はいいかね。観客が二人を待ちわびている」
と笑顔を二人に向ける。
ウォン「では、参りましょう」
ウォンはマリーの手をとる。


60ある会議室

スタン「もう200年以上も過去のことですよ。家系図をさかのぼって行けば誰かに行き着くそれだけのことです」
ロナルド「そう、その200年。今年はモーツアルト誕生祭がヨーロッパ各地で開かれています。これも偶然ですか?」
スタン「では、死んだモーツアルトがテロを?」
スタンは机を叩く。
スタン「長官、ここで馬鹿げた話に付き合っている間にもテロリストたちは活動しています。早く捜査に戻りましょう」
アメリー警部「スタン警部。ロナルド教授は、我々が把握できなかった被害者の共通点を事件後3週間で導きました。そして、教授の理論に基づきテロリストの犯行を推測しているのです。最後まで話しを聞きましょう」
スタン「では、教授にお聞きしたい。暗号文章を全て、解読されたのでしょうか?」
ロナルド「そう、まだ、一部ですが、暗号分の最初の数字の意味は解読しました。12,4,2,3の数字の意味です。」
スタン「では、お聞かせください」
ロナルド「12は殺人事件の数。イスラエルの12の民が殲滅すると言う暗示です。また、12は時間が12という数字で構成される事から時間を止める事を暗示します。アダムから生まれた欧米世界の人類が支配する時間を止めるという警告です」
スタン「では、4,2,3は?」
ロナルド「スフインクスの謎に関する数字です。エジプトのスフインクスは砂漠の旅人に謎々を問いかけた。『ひとつの声を持ち、四つの足を持ち、歩く時が最も肢体の力が弱く、その速度が遅い、また、二つの足を持ち、また三つ足を持つものもいる。地を這い、空を飛び、海を泳ぐもののうち、これほど姿を変えるのものはいない。その動物とは何か?』という謎です。スフインクスは、答えが違うと、その人間を次々と喰い殺しました。ある時、賢人と呼ばれたコリント王の嫡子エディプスがその謎を解き明かしました。彼は『それは人間だ。幼児期は四つんばいで歩き、成人期は二足で歩く、そして、老人になると、杖をつき三本足になる』と答えたのです。真実の答えを聞かされたスフインクスは、その時から人を殺すのを止め、石像になったという伝説です。

CGと実写合成でスフインクスの謎を解くシーン。

ロナルド「ミッテラン大統領もスフインクスのように謎をパリに残したのです。」
スタン「ミッテラン大統領が謎を残したのですか?」?」
ロナルド「そうです。ミッテラン大統領がパリに残した謎が暗号を解くヒントになるのです」
バルマン「ミッテラン大統領がスフインクス?」
ロナルド「当時のパリ市民は、ミッテラン大統領を『スフインクス』と呼びました。」
スタン「ミッテラン大統領の残した謎と今回のテロ事件が関係しているとおっしゃるのですか?」?」
ロナルド「この事件と大統領の謎の関係についてお話しましょう。
『パリで、朝は四つ、昼は二つ、夜は三つになるものは何か?』
シャンゼリゼ大通りの陽の線の上に、四つの建物が並ぶ。カルーセル凱旋門~オベリスク~エトワール凱旋門~新凱旋門です。それに、モンパルナス・タワーとエッフェル塔の二つが加わり、陰と陽の二つの線が誕生する。そして、三つの男性の塔と三つの女性の門が、ひとつの聖なる杯を形成するのです。ミッテラン大統領が癌に冒されながら、終生、自問自答した謎とは、『人間とは何か?』という謎です。たどり着いた答えは『人間の本質』。人間とは誤謬を犯す不完全な神の創造物である。人間は人間同士で、果てしない殺し合いを続ける不完全な神の創造物である。スフインクスが人を殺すのを止めたように、ミッテラン大統領も誤謬を犯す人間が、罪を犯した人間に死刑を宣告する事を止めたのです。

その謎が今、解き明かされた。

アメリー警部「ロナルド教授。続けてください」


61コンコルド広場

大観覧車に明かりがつくと同時に観客たちの拍手が響く。
ウォンとマリーが舞台に上がると舞台を照明が照らす。

ウォンが指揮するオペラ「魔笛」が始まる。
王子タミーノが大蛇に襲われているところに三人の侍女が王子タミーノを救出する。三人の侍女たちが王子タミーノに夜の女王の娘パミーナの絵を見せる王子タミーノは彼女に一目惚れしてしまう。夜の女王は、王子タミーノに、悪魔ザラストロにさらわれて娘の救出を依頼する。王子タミーノはパパゲーノとともに姫の救出の旅に出る。夜の女王は王子タミーノには魔法の笛、パパゲーノには魔法の鈴が渡す。


62ある会議室

スクリーンに太極図の紋様が映っている。
ロナルド「ありがとう。皆さんのパリを守りたいという気持ちはよくわかりました。
それでは、続けます」

スクリーンの太極図とパリの地図が重なる。

ロナルドは自信に満ちた口調で語った。そして、ゆっくりとグラスにつがれた水を口に含むと飲み干した。

ロナルド「この紋様の特長は、『陰』の中心に、小さい『陽』、『陽』の中心に、小さい『陰』が描かれています。ご覧下さい。パリは、大きく成長する巻貝のように螺旋構造を持ちながら、円の都市として、成長しながら形成されました。パリはセーヌ河により、北と南に二分されています。右岸の中心部には、ルーヴル美術館やコンコルド広場などあります。陽の地区です。そして左岸が陰の地区です。陰の地区の中心部には多くの芸術家たちが眠るモンパルナス墓地などがあります。そして、この陰陽の螺旋の中に、『陰と陽』つまり、女と男の性器を象徴する建造物が、重要な意味を持って、重要な位置に配置されているのです。『陽の街』の中に、エトワール凱旋門があります。これこそ、太極図の『陽の中の陰』なのです。『陰の街』の中に、エッフェル塔あります。これこそ、太極図の『陰の中の陽』なのです。

バルマン「先生の言われることは、『陽』は、男性の性器、つまり男根、それは塔を意味し、女性のえーっと、それは『陰』……。つまり、門を意味すると……」

バルマンが少し恥ずかしそうに喋る。全員がバルマンを見る。

アメリー「ロナルド教授はパリ市内に存在する塔と門が次の標的だと? 特定は可能なのですか?」
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by masashirou | 2009-12-10 09:42  

映画「ミッテランコード」日本語脚本その4

34ロナルド超心理学研究所

ロナルドが連続殺人事件とマリア・テレジアの怨霊との関係を調べている。
そこにアメリーから電話が鳴る。

ロナルド「はい。ロナルドです」
アメリー「フランス公安局のアメリーです。フランスの殺人事件で調査を依頼したいのですが?」

ロナルドは言葉に詰まる。

アメリー「ロナルド教授?」
ロナルド「はい。」
アメリー「今からお会いできますか?」
ロナルド「いや、今回の事件の件は、全てロンドン市警に話しました。これ以上お話し出来ることはありません」
ロナルドは電話を切る。
―――コンコン。ドアのノックの音がする。
研究室のドアが開いて、
アメリー「フランス総合情報中央局のアメリーです」


35サンレモ駅

岩山をくり貫いて造られたトンネルの中にあるサンレモ駅の暗いホームの闇の中に、ウォンを乗せた列車は到着した。暗いホームに電車が入ってくる。
ウォンが足早に電車から出てくると、タクシーでサンレモロイヤルホテルに向かう。


36ロナルド研究所

アメリーとロナルドの長い沈黙。

ロナルド「事件の背後には、大きな歴史から生まれた怨念の影が見えてくるのです」
アメリー「どうしてそうお考えになるのですか?」
ロナルドは興味を示したアメリーの言葉に思わず顔を上げる。

ロナルド「今回の事件に酷似した事件が過去に二回あったことをご存知ですか?」
アメリー「いえ。初耳です」
ロナルド「全て、未解決事件でマリー・アントワネットの死に関係した子孫が殺害されています。今回の事件の被害者も同様です」
ロナウドは、調査した資料をアメリーに渡す。
アメリー「時空を超えた記憶の海。教授の研究テーマですね」
ロナルドは照れ笑いする。ロナルドはすぐに真剣な顔に戻る。
ロナウド「そこで、私はマリー・アントワネットの歴史的背景を研究しました。マリー・アントワネットの処刑、モーツアルトの死、そして、マリー・アントワネットの母であるマリア・テレジア。そして、ある楽曲がすべての謎を解き明かしたのです」
アメリー「ある楽曲?」
ロナウド「モーツアルトの『魔笛』です。夜の女王は自分の領土を奪った悪魔ザラストロへの復讐の思いを歌うのです。この歌が世界中のソプラノ歌手が一度は歌ってみたいと思う、有名な『夜の女王のアリア』です。歌詞はこんな内容です。
  地獄と復讐の炎が私の心の中に燃え上がる
  お前のために悪魔ザラストロが破滅の恐怖から逃れたら、お前はもう私の娘ではない。聴くがいい、復讐の神々よ。聴くがいい、母親の呪いの誓いを」
 ロナルド小さく歌詞にメロディをつけて口ずさむように語った。
ロナルド「この歌詞の内容は、まさに死んだ母親の怨霊が娘を脅迫する内容です」


37サンレモロイヤルホテル

ホテルの大広間でマリーが歌い終えるとそこにウォンが入ってくる。
会場から拍手が鳴り響く。
マリーはウォンを見つけると舞台に上がるように誘導する。
耳元でウォンが囁く。

ウォン「すいません。間に合いませんでした」
マリー「仕方ありませんわ」
マリーが微笑む。
ウォンが舞台に上がる。さらに拍手が沸き起こる。
拍手が静まる。ウォンがピアノを弾き始める。
オペラ『魔笛』の「夜の女王」である。
マリーは、ウォンのピアノに合わせて歌う。
演奏が終わると、観客が総立ちとなる。


38ロナルド研究所

ロナルド「フリーメイソンの高級幹部であり、有名な人気音楽家でもあったモーツァルトの埋葬に、友人の立ち会いもなく、今もって、その墓の場所が秘密にされているのはなぜか?」
アメリー「『魔笛』が原因?」
ロナルド「そうです。あくまでも、仮説ですが『魔笛』はモーツアルトがマリー・アントワネットにあるメッセージを伝えるために制作したのではないか?と」
アメリー「で、そのメッセージとは?」
ロナルド「『魔笛』のストーリーです」
アメリー「『魔笛』は、さまざまな解釈がなされていますが……」
ロナルド「最初は、教祖ザラストロは悪魔、夜の女王が善の存在として描かれている。しかし、後に、教祖ザラストロは聖なる存在、夜の女王が悪なる存在となります。逆転している。これが、最大の謎といわれているのですが、モーツアルトは明確な意志を持って、正悪の逆転劇を書いたと思うのです」
アメリー「それが原因で殺された?」
アメリーは理解できずに首をかしげる。
ロナルド「信じられないかもしれませんが、モーツァルトは、あのフリーメイソンに暗殺されたのかもしれません」
アメリー「でも、彼はフリーメイソンの高級幹部だったはずが?」
ロナルド「モーツァルトはオペラ『魔笛』をマリー・アントワネット王女に、新しい民主主義の時代の波を受け入れ、オーストリアへの亡命を進言するために、この作品を創作した。モーツァルトは、オペラ『魔笛』を通じて、双方が果てしなく殺し合う戦いを一刻も早く終結すべきであると訴えました。彼は、過激な血みどろの戦争を鼓舞するフリーメイソン集団には反対したのです。いつの時代も平和な無血の改革を主張する革命家は、過激な革命を望む急進派から暗殺され、抹殺される運命なのです。」

アメリー「モーツァルト敵に加担する裏切り者として毒殺された。人々はフリーメイソンの謀殺を恐れて、誰も葬儀に参加しなかったわけですね。」
ロナルド「オーストリアの急進派のフリーメイソンは王女の処刑を革命の象徴として、また、革命をオーストリアに飛び火させるためにも、王女の屈辱的なギロチン処刑は必要だったのです。」


39ロイヤルホテル スイートルーム

古びたテーブルに白い勾玉と黒い勾玉がカチッカチッとリズムよく音をたてている。
ウォンとマリーがベッドで一つになっている。
白と黒の勾玉が綺麗に重なり合うと、『TAO』の紋章になる。
ウォンとマリーの唇が一つになると白と黒の勾玉から双頭の鷲が現れる。
あたりは、光に包まれる。


40ウィーンの宮殿で開催された仮面舞踊会 イメージ映像

ウォン(モーツアルト)とマリー(マリー・アントワネット)が踊っている。
マリー「私にプロポーズしたこと覚えていらっしゃる?」
マリーが突然、マリー・アントワネットの幼少時代の女の子になる。
ウォン「今でも、忘れていません。私はあなたに永遠の愛を誓った者」
ウォンが突然、モーツァルトの幼少時代の男の子になる。
二人が微笑み、見つめ合うとウォンとマリーに戻る。
ウォン「『魔笛』は組織を裏切ってまで捧げた私のメッセージ…。なのに、なぜ?」
マリー「あなたのメッセージ確かに受け取りました。貴方が言うように、フランスを捨て新しい時代を受け入れることも出来ました。しかし、私は最期までフランス王妃として誇りをもって死ぬ決意をしました」
ウォン「ではなぜ、再び現代に蘇られたのです?」
マリー「母・マリア・テレジアから復讐を命じられました」
ウォン「確かに、パリの民衆はあなたを妬み、あなたの命を奪った」
マリー「いいえ。私は何も怨んではいません。ただ、母の命令には背けないのです」
ウォン「では、母上の怒りを静めてください。復讐は新たな憎しみしか生まないのです。欧州の国々が争い憎み合う時代は終わりました。また、新しい時代が始まろうとしているのです。ヨーロッパは一つになろうとしています。時代が変わったのです」
マリーはうなずく。
マリー「私に何ができるの?」
ウォン「この復讐を止めていただきたいのです」
マリーはウォンを見つめる。


41ロイヤルホテル スイートルーム

マリーとウォンは同時に目を覚ます。
マリー「また、あの時代と同じことが起こるのでしょうか?」
マリー・アントワネットが呼び鈴をロザリーに渡す―――。
モーツァルトが毒を飲みもがいている―――
マリー・アントワネットの首が飛ぶ―――
マリア・テレジアがフランスからの手紙を読み激怒する―――
マリーは悲しみのあまり目が潤む。
ウォン「無益な復讐を二人で終わらせるのです。希望の光は暗黒の闇から誕生する。僕は不幸な出来事が必ず幸福の道に繋がっていると信じています」
ホテルの電話が鳴りウォンが目を覚ます。
ウォンが電話を取ると電話は切れている。
ウォンが振り返るとマリーの姿はない。
窓を開けると、リビエラの黒い海が見えた。黒い雨雲が海の上に立ち込めていた。冷たい風がカーテンを揺らした。水平線の向こうに貨物船が見える。稲妻が貨物船のシルエットを浮かび上がらせる。ウォンは自分が黒い海に浮かぶ小さな貨物船のように思えた。
 雷鳴が小さく、水平線の彼方に轟いていく。


42ロナルド研究所

アメリーの携帯電話のライトが消える。
アメリー「ロナルド教授のお話が確かだとすると、犯人は亡霊?」
ロナルド「そうは言いません。あくまでも、私の研究が導いた犯人像です。それは、マリー・アントワネットがパリ市民に対する怨みを晴らすために、今回の事件を計画したということです」
アメリー「怨み?」
ロナルド「そう怨みです。フランス革命の屈辱的な裁判で、ギロチンで首をはねられた怨みです」
アメリー「なぜ、それが今、なんですか?」
ロナルド「モーツァルト生誕二五〇周年。おそらく、モーツァルトとマリー・アントワネットの魂は、われわれが想像する以上に深く繋がっているのです。複数の犯人がいると思われます。つまり、今に生きる複数の人間が、同時に何らかの記憶を共鳴して、その意思に従って動いている可能性があります」
アメリー「操られている? ……過去の亡霊に?」
ロナルド「そういう可能性もあると……」
アメリー「過去の怨みを晴らすためのテロ?」
ロナルド「フランスがEUの指導者として、巨大な経済圏を作ろうという動きがあります。時代背景もナポレオンによってフランスの領土が拡大するフランス革命の時代に類似しています」
二人の長い沈黙が続く。
そこに助手のマイケルが入ってくる。
マイケル「教授!やはり、マリー・アントワネットの首が無くなっていました」
マイケルは額の汗をハンカチで拭う。
ロナルド「そうか、やはり……」
アメリー「それがこの事件と関係があるのですか?」
ロナルド「過去の事件とすべてが一致。私の研究を信じるならば、最悪の事態を想定していただきたい」


43フランス コンコルド広場

警察官が職務質問しようと中国人達に近寄る。
中国人達があわてて逃げ出す。
トニー巡査が太極図のロゴが入ったTシャツを見る。
アンソニー巡査「とまれ!! とまらないと」
パンッパンッ―――銃声
トニー巡査が太極図のTシャツを着た中国人に向けて発砲する。
倒れる中国人。
二人の巡査は残りの中国人を追う。
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by masashirou | 2009-12-10 09:40  

映画「ミッテランコード」日本語脚本その3

○オックスフォード大学教室

学生が数人座っている。
ロナルドは学生に音叉を渡す。

ロナルド「すべての物質はひもの震動で誕生するのです。ひもは震動します。その固有の震動は、時空を超えたところに、記憶が蓄積されていて、同じ環境、思考、境遇の人が特定の場所・環境にいると、蓄積された記憶や思いやシステムが共鳴し瞬時に移動するのです。物理的に分かりやすい実験をやってみます」

ロナルドは自分の音叉を震動させると学生の持つ音叉に近づける。
二つの音叉が共鳴を始める。

ロナルド「ゆっくりと近づけると、もう一方の音叉が突然振動を始める。こんなふうに思念や怨みなど、一度形成された『記憶』が鮮明に乗り移るのです」

学生「先生がこの研究を始められたきっかけはなんですか?先生は魂が帰る闇の世界は本当に存在するとお考えですか?」
ロナルド「私が今、最も興味を抱いているテーマは、われわれ以外に別の世界が存在することを証明したいという課題です」

ロナルドの幼い頃の回想シーン
ロナルドの頭の中に過去の映像が浮かぶ

1)ロナルドが幼年時代を過ごしたアイルランドの土着宗教のドルイド教は、自然崇拝の多神教で、さまざまな物や動物、例えば岩や鮭や牛や豚、犬などにも神が宿ると信じていた。文字を持たないケルト民族には、口述で神のお告げや神話を伝承する「ドルイド」と呼ばれる預言者、神官が、神と民衆の間に存在した。
ロナルドの祖父は、「お前は『ドルイド』の血脈を受け継ぐ子孫であることを忘れてはならぬ」と語った。

2)石で造られた小さな教会が、北の海から強い風が吹く丘の上にあった。灰色の石灰岩で造られたその教会には、イエス・キリストの遺体と聖杯が隠されてあるという伝説が言い伝えられていた。十一世紀に建設された教会だった。教会の中には女神ダヌーや、アイルランドの運命の三人の女神が描かれた壁画が装飾され、奇妙な彫像が飾られていた。
3)子供にとって怖い場所であった。教会の地下に通じる通路の壁にはダビデの星の紋章が付いていた。ロナルドはこの村の村長であった祖父から、この奥にイエス・キリストの遺体と聖杯が隠されていると聞いていた。村人の誰も実際にその地下室に入った者はいなかった。

4)ロナルドが十三歳になった時、叔母の家に養子に出された。米国のデトロイトに移住した叔母は、子供に恵まれなかった。七人の男ばかりの兄弟の末っ子だったロナルドは、この貧しい村から出ることを喜んだ。祖父はロナルドに、「お前もいつか、この土地に生まれたことを誇りに思う時が来る」と語った。

5)デトロイトのフォード自動車の組立工の義父は、熱心なカトリック信者だった。勤勉な働き者で、誠実な人物であった。十五歳の誕生日に、義父がデトロイト郊外にある、広大な敷地の中に建設された自動車王ヘンリー・フォード博物館に連れていってくれた。赤瓦の旧工場の建物の中に、二十世紀のアメリカが生み出した膨大な工業製品が展示されていた。ロナルドはたくさんの車が展示されているスペースの中央に、赤いビロードの古い椅子が展示されているのを不思議に思った。義父に尋ねると、
義父「これが偉大な政治家、アメリカ大統領リンカーンが暗殺されたフォード劇場の椅子だ。よく見てごらん。背もたれのビロードに黒い血の滲みがあるだろう。頭を撃たれた時噴出した血の跡だ……」
ロナルドは、驚いた。
義父はロナルドにこう言った。
「この椅子の前にある車が、アイルランド出身の偉大な大統領ジョン・F・ケネディが暗殺された時のフォード社製の、リンカーンという車だ。暗殺された二人の偉大な大統領には奇妙な共通点がある。歴史には奇妙な時空を超えた「偶然の一致」、「歴史の類似性」がある」

アメリカの人工衛星のデトロイト地図からロンドンの市街地に瞬時に移動する。


○ロンドン警視庁前

パトカーがサイレンを鳴らして走っていく。


○ロンドン市警 捜査室

ホワイトボードに被害者リストと現場写真、暗号文などが貼られている。
ウィリアム・スミス(49)ラルフ・ウィリス(46)特殊部門S019 テロ対策課
ジョン・スコット(29)特殊部門S019 テロ対策課など数名の捜査官達が話し合っている。

スコット捜査官「20代女性ばかり5人。これは性的なコンプレックスを持った犯人だと考えられますが、どの遺体も性的行為に及んだ痕跡はありません。ただ、すべての犯行現場フランス語で書かれた文章が切断された被害者の頭部の耳の中に見つかっています」
スミス「暖かいミルクティを」

ジョン・スコット(29)特殊部門S019 テロ対策課捜査官がミルクティをスミスに差し出す。

スコット捜査官「砂糖を抜いています」
スミス「妻からお前に指令があったのか?」
スコット捜査官「はい」

スミスは苦々しい顔をする。ミルクティを口に含む。

スミス「フランス語を翻訳した文章がこれです。

『12,4,2,3、それは、パリに歓喜が満ちる日、三人の男と、三人の女と交わる時、大いなる神聖なる器がパリに描かれるであろう。 
 それらの姿は、キリストの紋様がパリの空に現れる、聖なる丘からその勇姿を現す。
 聖なる器に歌の神が舞い降り、炎の神と力を合わせ、女神ダヌーと三人の運命の女神たちを蘇らせる。女神ダヌーが邪悪な左脳と右脳に赤い魔王の竜の螺旋を描く。
 聖なる竈に記された文字を持つ、三つの言葉が、時を告げる双頭の雄鶏の宮殿から水星の神を蘇らせる。 水星の神は、宇宙に突き出た脳をあぶりだし、薬草の神ディアン・ケヒトを呼び起こす。今こそ、聖者の王の血が滴り落ちた大地に、二つの太陽が地平線に現れる時を讃えよ。 幽界の天籟が響き渡り、魔王の竜の叫びが、憎しみの暗黒の門の綱をひく。邪悪な赤い竜が目覚め、大きく息を吐き、紅蓮の炎が燃え盛り、小さき悪霊たちを解き放つ。 炎は天に向かって燃え上がり、魔女の血脈の子供たちは永遠に地獄に旅立つ』


スコット捜査官「理解不能です。ただ、パリでも全く同じ事件が発生しています」
スミス「パリでも?」
ウィリス捜査官「はい。テロの可能性があるかも知れないと……」
スミス「テロだと! 馬鹿な。単なる変質者による犯行ではないのか?」
ウィリス捜査官「昨日、SO19の連中が手に入れた資料です。これを」

と、プリントアウトされた資料を机に置く。
太極図の紋様のなかに、パリへのテロ予告が書かれている。
一同、顔を見合わせる。


○あるホテル
テレビがついている部屋にアラブの男がいる。
ミッテラン大統領没後10周年記念行事のテレビニュースが報道されている。
ミッテラン大統領「私はパリを改造する。パリという都市をひとつのメディアにする」

―――新凱旋門の完成当時の映像。
―――ギロチン処刑廃止を宣言するミッテラン大統領の映像。
―――ミッテラン大統領の就任の演説が流れる
私が最も大切だと考えることは、敵対する勢力を、力で打ち倒すことではなく、彼らを説得し、納得させることなのです。
 私が大統領に就任した今日、一九八一年五月十日という日の、真の勝利者は、「希望」であります。フランス国民が、その希望を手にするために、私は、相手への畏敬の念を持ち、意見の異なる複数主義の道、異なる立場を認める道を、立ち止まることなく、歩き続けたいと思います。
 世界は今、国と国との利害が対立し、果てしない緊張が続いています。フランスは宣言します。地球上に生きる人類の約三分の二が、餓えと屈辱の中にいる限りは、本当の国際共同社会は成立していないことを……


○オックスフォード大学内教室

ロナルド「私の講義では繰り返した歴史の中から本当に大切なものは何か?ということを真剣に学びたいと思う。諸君に、伝いたい
私は、真実は目に見えない暗い闇の中に隠れていると言うことをまず学んで欲しいと思う。
美しいバラの花は、枝や葉が支えている。枝は茎が支え、茎は大地の中の無数の根が支えている。根は地上の茎や葉や花の生命の源の養分や水を黙々と送っている。人は眼に見えない暗闇の支配する大地に存在する根を見ることはない。本当に大切な役目をしているものは眼に見えないところに存在する。この事例を見て欲しい」

ロナルドは資料を学生たちに手渡し説明する。

ロナルド「デトロイトのフォード博物館にリンカーン大統領が暗殺された椅子と、ケネディ大統領が暗殺された車が並んで展示されている。この二人は十九世紀と二十世紀を代表する最も偉大なアメリカ合衆国大統領だ。この二人はアメリカ史に残る名演説を残していることでも似ている。二人は同じ、北部の出身で、黒人の人種差別に反対し、南部人から憎まれていた。それに、初めての議会選出の年が一八四六年と百年後の一九四六年。大統領当選の年が一八六〇年と百年後の一九六〇年。リンカーンが暗殺されたのが一八六五年四月十五日。ケネディが暗殺されたのが、約百年後一九六三年十一月二十二日。しかも同じ金曜日に、妻の前で、頭を狙撃された。暗殺された場所はリンカーンがフォード劇場の椅子の上、ケネディはフォード社のリンカーンと呼ばれる車のソファの上で……。暗殺された二人の大統領、ケネディ大統領とリンカーン大統領にまつわる100年という数字に支配された歴史の類似性は、有名な歴史が繰り返す事を示す証拠だ。偶然にしてはあまりにも酷似しすぎている。これらは記憶が呼び起こした事件であり、人が同時期に同じことを考えると、それが現実になる。科学では解明できないが、この現象を私は……」

デトロイト博物館の椅子と車の映像インサート
リンカーン大統領の暗殺写真のインサート。
ケネディ大統領の暗殺フィルムのインサート

黒板に『歴史の繰り返し現象』と書くと内線電話がなる。
マイケル「ロンドン市警からお電話です」
ロナルド「ロンドン市警?」


26パリ市内 実景


27パリ市警 DCRG(総合情報中央局)

アメリー警部にロンドン市警からメールが入る。
副局長に駆け寄り、
アメリー「副局長。ロンドンの殺人事件に関して、ネット上に犯行声明とテロ予告の書き込みがあったと連絡がはいりました」
副局長「確かか?」
アメリー「もし、テロリストの仕業ならパリの事件もその可能性が……」
副局長「考えたくはないが、君はその可能性について捜査してくれないか?
どんな些細な可能性でも捜査に必要な情報を集めてくれ」


28フランス大統領官邸 実景


29官邸室内

シラク大統領とパリ警察幹部会議をしている。
補佐官がシラク大統領に駆け寄り、耳元で囁く。
補佐官「DCRG(総合情報中央局)が今回の事件は、テロと断定しました。」
シラク大統領は会議室から出て廊下を歩く。
シラク大統領「それで、次の標的は?」
補佐官「ネットの掲示板に、パリのすべてを壊滅させる破壊的な細菌テロ事件をこの夏決行すると宣言しています」
補佐官は犯行現場が掲載されたプリントを渡す。
補佐官「12名の罪深き魔女たちを殺害したと……」
シラク大統領「他に手がかりは」
補佐官「今のところは何も……。ありません」
シラク大統領は立ち止まる。
シラク大統領「どういうことだ?」
補佐官「現在、全力をあげて事件の解明をしていますが、ネット上の図面が何らかの手がかりになると……」
困った顔でシラク大統領が会議室に戻る。
一同の視線がシラク大統領に集まる。
シラク大統領「今回の事件はことによっては国家を揺るがす事件に発展する可能性がある。君がアメリー警部?」
アメリー「はい、そうです閣下」
シラク大統領「君は今回の事件をテロとしてユニークな方法で捜査していると聴いた。解決できるか?」
アメリー「全力を尽くしています。」


30オックスフォード大学内・ロナルド超心理学研究所

『666号室 ロナルド超心理学研究所』と書かれた表札。
十七台のコンピュータがデータ処理をしている。
部屋にはロナルド教授の功績を称えた額がある。
『1999年4月1日ニューヨーク・タイムズに掲載されたロナルドのコラム』
その隣に、ロナルドの祖父が写った写真。
マイケル、パリで発生した殺人現場の写真を並べ、ロンドンの殺人事件の資料がプリントアウトされるのを待って大きなあくびをする。

マイケル「あー。眠い……」
そこに、ロナルドが葉巻をくわえて入ってくる。
ロナルド「マイケル君、資料はそろったかな?」
マイケル「残りは、そこのプリンターから出てきますから・・・・(眠ってしまう)」
アムステルダムの殺人事件の記事がプリンターから出てくる。
ロナルド「これだ!!」
マイケルは目を覚ます。
マイケル「今何時です?」
ロナルドは眼鏡をはずすと、マイケルに数十枚の書類を手渡す。
ロナルド「犯罪記録資料ファイルの中にあったものだよ。これは百年前に起きた猟奇殺人事件の記事だ」
と語り、マイケルの机に置く。
『1906年1月21日ロンドン・デイリー・タイムス』の記事には『同時多発猟奇殺人事件の発生の謎を解く』と書かれた記事に、首を切れた女性の上に茎の折れたバラが置かれた写真が掲載されている。
ロナルド「パリで五名とロンドン五名、アムステルダム二名で、同じ日に、同じ殺人方法で殺害されたらしい」
と良いながら、パリの犯行現場の写真をマイケルに見せる。
ロナルド「今回の事件と類似している。やはり、歴史は繰り返す。マイケル君、私の研究が正しければこの記事と同じことが起っているはずだ。今から調べてきてくれないか?」
マイケル、新聞を持って部屋から飛び出すと急に立ち止まり新聞を見る。
マイケル「えっ!? 今からロンドンまで?」
新聞にはマダム・タッソー蝋人形館でマリー・アントワネットの首が盗まれると書いている。


31マダム・タッソー蝋人形館
皮の手袋(マイケル)がマリー・アントワネットの首を盗むと、胴体は仰向けになって倒れる。
マイケルのポケットからカレッジの紋章が入ったハンカチが見える。


○フランス 倉庫
女流彫刻家ソフィア・ロドリコが手の彫刻を制作している。
そこに、マイケルがコーヒーとフランスの焼き菓子マドレーヌを持って入ってくる。
マイケル「ソフィア! ちょっと休憩しないか?」
ソフィア、マスクを外すとテーブルに座る。
ソフィア「サンキュー」
ソフィア、石膏がついたままの手で焼き菓子を掴む。
マイケル「ソフィア! 手を洗えよ!!」
ソフィア「堅いこと言わないで」
マイケル「あとこれ」
マイケル、金属製の小さな箱を取り出す。
ソフィア「中身はなんなの?」
マイケル「聞かない方がいい」
ソフィア「何も聞かないわ。ただし、謝礼は倍にしてもらうようにあの人に伝えてくださらないかしら?」
ソフィアはマスクをつけてアトリエに戻る。
見送るマイケルの表情。


32ロンドン 警察本部長 会議室

ロナルドが資料を広げて、ウィリアム・スミス(49)ロンドン警察本部長に事件を説明している。

ロナルド「これが、150年前に起きたこの事件ですが、被害者の先祖がある人物の死に関係していたのです」
スミス「だとすると、その事件の模倣犯だということですか?」
ロナルド「いえ。模倣犯ではないのです。私の研究では、ある事件が発生すると、多くの人がそれを強く意識した瞬間、高次元の『時空を超えた記憶の海』に、ある数字に支配される事件のパターンが記憶される。その法則がカオスと思われる偶然を支配するのです。同じような条件の共通する因子の多い人や物、場所、類似性を持つ状況などが発生する時、その記憶された数字のパターンが呼び起こされる。今回の事件にあてはまるのです」
スミスはメモを取ることを辞めると席から立ち上がる。
スミス「ちょっと、理解出来ませんね。では、今回のテロでロナルドさんの学説が証明できると?」
ロナルド「こう考えて見るとわかりやすいでしょう。『死ぬ』ということは、ギターの音が消えることと同じです。弦の震動が停止することです。その時、音は消滅します。しかし、指ではじくと、再び同じ固有の音が生じます。魂とは、その生命の固有の波動の記憶なのです。この事件はマリー・アントワネットの死に関係した人たちの子孫たちが殺されています。」
スミス「マリー・アントワネット?」
ロナルド「パリはマリー・アントワネット王女が息子の王子と姦通したと追及した検察官、ロンドンは処刑執行を宣言した裁判官、アムステルダムは処刑をした男、それぞれの子孫の家系図が被害者と一致しているのです。マリー・アントワネットの魂の振動がこの事件の背景にあるのです」
スミス「では、テロリストの目的はマリー・アントワネットの魂が恨みを晴らすためとおっしゃるのですか?馬鹿な。ロナルド教授、わざわざお越しいただいて有り難うございます。捜査で忙しいのであなたの愚かしい学説とつきあう暇はありません。」
ロナルド「そうですか。残念です。これだけは申し上げておきます。ぜひ、捜査に協力したい思いだけはご理解ください」
スミス「すこし、私も言い過ぎました。この1週間、この事件の早期解決と追求するマスコミのために、十分な睡眠がとれていないものですから、ロナルド教授、ご協力を感謝いたします」
警察本部長は部屋を出ていく。
無念そうに見送るロナルドの表情。
33フランス カンヌ「モーツァルト生誕二五〇周年記念コンサート」

ウォンは、コンサートのリハーサル会場から出てくる。

浜辺のカフェにマリーがいる。
ウォンは、彼女の胸に白い勾玉のネックレスを見つけるとマリーの隣に座る。

ウォン「ここに座っていいですか?」
マリー「どうぞ。今晩のコンサート、期待していますわ」
ウォンは黒い勾玉をマリーに見せるとマリーが微笑む。
ウォン「どうして、ここにいるのですか?」
マリー「明日、サンレモのロイヤルホテルでコンサートがあるのです」
ウォン「演奏なさるのですか?」
マリー「いえ、私はソプラノ歌手です。そういえば、これ約束ですね」
マリーは白い勾玉を首から外しウォンに手渡す。
ウォン「なにを歌われるのです?」
マリー「『魔笛』の『夜の女王』です」
ウォン「素敵な曲です。聴いてみたいな」
マリー「まぁ。光栄ですわ。良かったら私のコンサートに……。いや、ごめんなさい」
ウォン「なぜです?」
マリー「私のコンサートになんて興味あるはずありませんわ」
ウォンは立ち上がり白い勾玉をマリーの首につける。
ウォン「では、これをそのときに返すっていうのはどうでしょう?」

マリーは笑顔でテーブルのナプキンを取ると携帯の番号を書く。
マリー「ここに連絡してください」
ウォン「仕事が終わり次第、サンレモに行きます」
マリー「本当に? お待ちしていますわ」
ウォン「ところで、まだお名前を伺っていませんでした?」
マリー「マリーです。本当に運命かしら?」
ウォン「私は」
マリー「ウォンさんですよね。『MIDEM』の今日の雑誌で読みました。それに街中あなたのポスターだらけですよ」

マリーが笑うとつられてウォンも笑う。
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by masashirou | 2009-12-10 09:39  

映画「ミッテランコード」日本語脚本その2

○不思議なモニュメント前の広場 夕方

ウォン「幻覚?」
ウォンは空を見上げる。ウォンは頭が二つある鷲を見る。
鷲が空に姿を消す。
ウォンは不思議そうに鷲を見る。


○シェーン・ブルン宮殿の大広間 夜

仮面舞踊会が開催されている。
欧州各地から招待された名士達が十七世紀の衣装と仮面で踊っている。
その中にウォン、ルーシー(アメリー)がいる。
ウォンはマリーに気づく。
ウォン「あの方は?」
ルーシー「フェルゼン家のお嬢様。そういえば、あなたのことを気にかけていらっしゃいました」
ルーシーがウォンをマリーに紹介する。
ルーシー「こちらは……、ごめんなさい。全て秘密のパーティーでしたわね。これも何かの縁かもしれないわ。お二人、一緒に踊ってみてはいかが?」
ウォンは手を差しマリーと踊る。
二人の踊りに注目が集まる。
二人は人目を避けるようにバルコニーに出る。


○シェーン・ブルン宮殿のバルコニー

マリー、シェーン・ブルン宮殿の『グロリエッテ』の門を見ている。
マリー、ウォンの視線に気づき、口づけを交わす。
ウォン「お名前は?」
マリー、首を振る。
ウォン「では、お顔を拝見させてください」
仮面を外すウォンの手を押さえ。
マリー「すべて、仮面下の秘密です」
ウォン「仮面?」
マリー「ラテン語の仮面を意味する『ペルソナ』が英語のパーソンの語源なのです」
ウォン「?」
マリー「人間は仮面をかぶり生きている動物なの。初めて会ったあなたにキスが出来たのも仮面のおかげかもしれません」
ウォン、去ろうとするマリーの腕を掴む。
ウォン「また、お会いできますか?」
マリー「それが運命なら、必ずお会いできると思います」
ウォン「運命?」
ウォン、思わずマリーの腕を離すと見詰め合う。
マリー「そう運命・・・」
マリーはその場から去る。
ウォン、マリーを追う。


○シェーン・ブルン宮殿 噴水前

マリーを見つけて走ってくるウォン。
ウォンは自分の首からネックレスの勾玉を外す。
ウォン「これを受け取ってください。母から『運命の人に出会ったら渡しなさい』と言われました」
マリー「まあ。これは?」
ウォン「陰と陽の勾玉です。私が陰を、貴女が陽を持っていてください」
マリーは不思議そうに勾玉を見つめる。
マリー「不思議な形ですね?」
ウォン「古代の日本の王が墓に埋葬した装飾品です。母が私にくれたものです」
マリー「そんな大事なものを・・・」
ウォン「ですから貴女にさしあげたいのです」
マリーは仮面の下で微笑むと、
マリー「わかりました。では、再会したときお返しします」
と、会釈する。
紳士淑女達がマリーを見つけて噴水の前にやってくる。
その中にルーシーとフランシナがいる。
フランシナ「ここで何しているの? 皆さんお待ちよ」
フランシナがマリーを宮殿の大広間に連れて行く。
ウォン「またお会いしましょう」
ウォンは大きな声で去っていくマリーに呼びかける。
マリーは振り返り手を振る。


○エッフェル塔広場

パリ市民が広場を埋め尽くしている。
会場のある特定の場所にゲッペル社のロゴマーク。
ウォンはオーケストラの演奏者たちを見る。
そして、指揮棒を振り上げる会場はしんと静まり返る。



蝋人形のマリー・アントワネットの表情が苦痛に歪むシーン。



ウォン、指揮棒を振り下ろす。
『魔笛』の演奏が始まる。
空から双頭の鷲が現れると辺りは光に包まれ過去へ……。


○ 10年前のフランス革命二百周年記念行事
1989年、7月14〜16日。フランス革命二百周年記念行事のメイン・イベントとして、フランスの大統領フランソワ・ミッテランは、パリ・サミットをラ・デファンスにある新凱旋門グラン・ダルシュで開催した。 完成したばかりの真っ白な姿のグラン・ダルシュは、高さと奥行が一一〇メートル、幅が一〇六メートルという、エトワール凱旋門の二倍以上の規模を誇る壮大な凱旋門である。


エトワール凱旋門の二倍以上の規模を誇る壮大な凱旋門が見える。


○ 1989年 フランス大統領官邸
デュマ外相、座っているミッテラン大統領に近づく。
デュマ「ついに成し遂げましたね」
デュマ、街を見渡しながら微笑む。
デュマ「大統領は、偉大な芸術家そして、偉大なる政治家……」
ミッテラン「私を傲慢だと思うかね?」
デュマ「まさか。しかし、閣下は、ついにレオナル・ド・ダヴィンチとナポレオン皇帝を超えたのです」
ミッテラン、立ち上がり新凱旋門グラン・ダルシュを見る。
デュマ「そして、そのナポレオンはこのパリをエジプトのルクソール神殿に似せてパリを改造しました。そして、大統領あなたはそれ以上の偉業を成し遂げられました」
デュマ、横目でミッテランを見る。
ミッテラン「念願の夢が叶った。君に感謝する。」
デュマ「閣下が、1963年にジャン・コクトー様から総長の座を引き継がれて、シオン修道会のふたつの夢である欧州統合と聖杯をお守りする事が同時に実現しました。シオン修道会が50年前に提案した旗がEUの旗になりました。喜ばしいことです」
ミッテラン「全てが、私に神が与えられた使命のように思える」
デュマ「閣下は、マリアさま、そしてその娘サラさまの遺体をガラスピラミッドの地下深いところに安置されました。それも永遠の秘密として封印されました……。歴代のシオン修道会の総長が誰も出来なかった偉業です」
ミッテラン「パリの市民が、私を『ガラスピラミッドの守護神スフインクス』と呼んでいる事は私の誇りである。私が作ったミッテラン国立図書館に、シオン修道会の存在を示す文献を全て収集させた。これらの資料が永遠に太陽の光を見ることがないようにお願いする」
デュマ「かしこまりました。シオン修道会は闇の中に封印されます。まさに、閣下は、偉大なる魂、キリストが人間であった証拠の聖杯とメロヴィング家継承されるイエスの血脈を永遠に守り抜くフランスの守護神です・・・」
ミッテラン「いつの日か、フランス人が誇りを捨てて他の国に従属しようとした時、私の魂は蘇る事を祈りたいものだ。かつてナポレオン皇帝のエジプト遠征の時、愚かなフランス兵がピラミッドの守護神スフインクスの鼻を銃で撃った時のように、スフインクスと呼ばれる私の指し示す道をフランス人が踏み違えることがあった時に・・・」
デュマ「誇り高きフランス人は決して他国に従属する道を選択することは無いと信じますが・・・」
ミッテラン「そう願いたいものだ・・・」

部屋のアナログの針が10:35分を指す。
ミッテランは、パリの蒼い空に描かれる白い十字架の紋様を見上げる。


○パリ上空

双頭の鷲がローズライン上を飛んでゆく。


○パリ市内の殺人現場

野次馬がパトカーの周りからマンションを覗いている。


19パリ郊外のマンション 404号室

切断された首と首がない女性の遺体が仰向けになって倒れている。
切断された頭部の耳の中に丸められた紙が押し込まれている。
スタン・ハーマン(36)フランス共和国保安機動部隊 隊長、
トニー巡査(32)フランス共和国保安機動部隊 隊員、
アンソニー巡査(25)フランス共和国保安機動部隊 隊員。
数名の捜査官たちが殺人現場の写真を撮る。

アンソニー巡査「また、首が切断されている。これで、この3日の内に5件目です……」
トニー巡査「被害者は、また20代の女性だ」
アンソニー巡査「犯人は何でこんな残虐な殺し方をするのか?」
トニー巡査「必ず犯人を挙げてやる」
ハーマン隊長「何か重要な手がかりを見落としていないか?」
アンソニー巡査「何故、犯人は被害者の髪を切断するのでしょうか?」
ハーマン隊長「深い意味があるはずだ・・・・」
ハーマン隊長は遺体の胸に束ねられた髪の毛を見る。
アンソニー巡査「これはなんだ……」
アンソニー巡査は耳の中の紙きれをピンセットで取り出す。
アンソニー巡査「犯人のメッセージですか?」
トニー巡査「開いてみろ」
アンソニー巡査「はい……」
アンソニー巡査はゆっくりと一枚の紙切れを開く。
『フランス語で書かれています』
トニー巡査「意味不明ですね。それにしても、18時間で殺人5件目。ただの殺人じゃないってジャーナリストたちが騒いでいますよ」
ハーマン隊長「まだ何も発表するな。とにかく被害者に共通点がないか、どんなに些細なことでもいい。徹底的に調べてくれ」


○オックスフォード大学

学生たちが大学に入っていくのが見える。
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by masashirou | 2009-12-10 09:38  

映画「ミッテランコード」日本語脚本

 劇場版
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映画「ミッテランコード」





脚本      内田 英介


























登場人物
ロナルド・ウィリス(51)
オクスフォード大学超心理学教授

アメリー・コーツ(34)
DCRG(フランス総合情報中央局)に勤務する女性警部。

リー・ウォン(27)
天才ピアニスト・指揮者

マリー・アレン(25)
ソプラノ歌手

マイケル・モーゲン(33)
ロナルド教授の助手

フランシナ・フェイル(30)
製薬会社ゲッペル社の参謀

クロード・バルマン(42)
DST(フランス国土監視局)作戦局の隊長

トミー・ベッソン(36)
DST(フランス国土監視局)作戦局 バルマンの部下

ヘンリー・エヴァンス(26)
DST(フランス国土監視局)作戦局 看護士になりすます。

パトリック・ハーバード(35)
DST(フランス国土監視局)情報局

ダニー・ベルトラミ(27)
DST(フランス国土監視局)戦略局

ペレ・クロード(58)
DGPN(フランス国家警察総局)長官
スタン・ハーマン(36)
フランス共和国保安機動部隊 隊長

トニー巡査(32)
フランス共和国保安機動部隊 隊員

アンソニー巡査(25)
フランス共和国保安機動部隊 隊員

ウィリアム・スミス(49)
ロンドン警察本部長

ラルフ・ウィリス(46)
特殊部門S019 テロ対策課

ジョン・スコット(29)
特殊部門S019 テロ対策課

モーツアルト(当時6)
天才と称されたピアノと指揮者。

マリー・アントワネット(当時7・当時37)

ロザリー(当時25)
マリー・アントワネットの待女

死刑執行人サンソン
4代続くマリー・アントワネットの死刑執行人

マダム・タッソー(当時32)
蝋で解剖模型を作る技術を学ぶ

フランソワ・ミッテラン大統領(当時66)
フランス共和国大統領

デュマ外相(当時57)
ミッテラン大統領側近

謎のアラブの王子(36歳)

ソフィア・ロドリコ(スペインの女性彫刻家)(45歳)

アラブの男・サイート(化学者、ウィルスNERO666を開発者)(45歳)

ロナルドの祖父(85歳)

幼い時代のロナルド(5歳、15歳)

























○漆黒の闇

無数の小さな光が漆黒の闇に集まってくる。
眩い光で埋め尽くされる。
しばらくすると、太陽のマグマの断面から、黄金の双頭の鷲が浮かび上がる。
鷲は太陽を抜け銀河系を光速で飛んでゆく。
バラバラに見えた恒星が、一定の法則によって並んでいるのが分かる。
太極図である。
鷲が太極図を突き抜ける。
恒星はまたバラバラになり、次第に文字へと変化する。

タイトル『4M』


○ タイトル

文字が画面に現れる。
『この世は全て陰と陽の原理で出来ている。
この世に存在するものは、全て無駄なものはない。老子』


○パリ市内のアパート
窓からエッフェル塔とセーヌ河が見える。
携帯電話が鳴っている。非通知の文字が携帯電話の画面に表示されている。
トゥルル、トゥルル・・・電話の音
女性が携帯電話を見る。女性は眉間にしわを寄せ電話をとる。
女性「もしもし……」
電話から電子音に加工された声が聞こえてくる。
電話「12、4、2,3。パリに歓喜が満ちる日、三人の男と、三人の女と交わる時、大いなる神聖なる器、聖なる竈がパリに描かれるであろう」
女性「もしもし……」
女性は電話を切る。
女性は振り返る。何者かが女性の後ろに立っている。
女性は恐怖で後ずさりする。何者か女性の顔に小さなスプレー缶で液体を吹きかける。
電子敵音声「マリー・アントワネットの呪い。12,4,2,3」

○港が見えるドバイのホテル
二〇〇七年五月—
 パリのエッフェル塔よりも高いという宣伝文句で紹介される、アラビア湾に突き出た巨大な船の帆の形をした世界最上級の七つ星ホテル。高さ三二一メートル、全室スイートの超豪華なつくり。グラスファイバーで造られた帆の壁は、毎晩内側から七色にライトアップされて、暗闇に包まれるアラビア湾に帆船の姿を映し出す。
 砂漠に誕生した“眠らない都市”ドバイが誇る「バージ・アル・アラブホテル」の二十階、2006号。

男が飛んでくる双頭の鷲をホテルの窓からが見ている。
鷲は古びたビルの屋上にとまると、翼を広げ部屋の中を覗く。
広く贅沢を尽くした部屋には大型テレビがある。CNNのニュースが流れる。
髭をたくわえたアラブの男が窓からドバイの景色を見下ろしている。
男性アナウンサーがニュースを伝える。
男はニュースの声に反応する。男はソファに座る。男はテレビの音声のボリュームを上げる。

アナウンサーの声「フランスに、アメリカの市場原理主義導入を政治スローガンに掲げた、
新しい大統領が今誕生しました。これより、欧州でアメリカに対抗する中東戦略を進めてきたフランスの大きな変化が……」

男の眼差しが緩む。
男は黄金のテーブルから携帯電話を取り、電話をかける。
窓の外の双頭の鷲が、羽を大きく広げ羽ばたく。
男は立ち上がる。男は夕焼けに染まるビルを見つめながら話す。

アラブの男「全てがうまくいった。ありがとう。支払いはあなたのジュネーブの口座に振り込まれている……」

青い海に浮かぶ椰子の木の形をした、白い砂で覆われた人工島の上に、世界最高の高さを誇るビルが見える。地上一〇〇〇メートルの高層ビルが、雲一つない青い空にそびえている。アラビア湾に沈む夕陽が、ビルの最上階のヘリポートのガラスに反射して、男の漆黒の闇の輝きを持つ瞳を明るく照らした。



○ドバイの高級ホテルの部屋

薄暗い部屋で、3人のパリ市警 DST(フランス国土監視局)作戦局たちが盗聴作業をしている。
クロード・バルマン(42)トミー・ベッソン(36)パトリック・ハーバード(35)である。パトリックがヘッドフォンで電話の会話を盗聴している。
パソコンのモニターに『逆探知検索中…25%』の数値があがっていく。
ベッソン「国際電話です」
バルマンは喋るなと口に人差し指をあてる。
バルマン「奴だ。奴が喋るぞ……」
緊張する3人の顔のアップ。
ツーツーツー―――機械音
パソコンモニター『逆探知検索中95%……検索中…検索中』
バルマン「くそっ!! 逆探知は?」
パトリック「駄目です。」


○港が見えるドバイのホテル

アラブの男はニンマリと笑う。
双頭の鷲が窓際を物凄いスピードで男を横切る。
男の顔が一瞬陰になり、夕焼けの光が男の瞳を照らし真っ白な光になる。
呼び鈴の音が聞こえてくる。
リン、リンリン――鈴の音


○牢獄

マリー・アントワネットが呼び鈴を鳴らしている。
その隣に彼女の一人息子が膝を抱えて座っている。
扉が開くと、侍女のロザリーが足早に入ってくる。

教会の鐘の音がこだまする。
カンカンカン―鐘の音。
民衆の叫び声が遠くから聞こえてくる。
「うぉおおおおおお~」群衆の叫び声

ロザリーは恐怖に怯えながら、胸で十字を切り神に祈る。
マリー・アントワネットはロザリーの手を掴む。
マリー・アントワネット「この呼び鈴は貴女に、この真鍮の笛を、義姉のエリザベートに渡してください」
ロザリー「(震えながら)ありがとうございます。いつか、王妃様の復讐を誓います」
マリー・アントワネット「いいえ。私は王が残した言葉に従います。ロザリー。あなたも、フランス国民を許すのです」

ガタンッ―――ドアが開く音
鉄の扉が開くとマリー・アントワネットを照らす。
子供がマリー・アントワネットに抱きつく。
マリー・アントワネットは必死に涙をこらえる、気丈に振舞う。


○中世のコンコルド広場

広場を埋め尽くす民衆の先に秘密結社フリーメイソンのロゴが入ったギロチンが見える。
気だるそうに話す男たちの向こうに少年が一人座っている。
男1「そんなこと信じちゃいないねぇ。魔よけだと!? 笑わせるよ」
男2「じゃなんで、お前はここに来たのだ?」
男1「俺は死体に群がる馬鹿どもから頂くのさ」
男1は男2のポケットからコインをする。
男2「へっへっへ。そうか? 俺は魔女の断頭台から滴り落ちる血をぬぐって、魔よけをその場で売っちまうのさ。ブタの血がついたハンカチーフ高く売れるぜ」
男2はすでに血がついたハンカチを男1に渡すとすられたコインを取り返す。
少年はそのハンカチを見ると急に立ち上がり、花屋のバラを一本盗み走り出すと花屋に向けてコインを投げる。
コインは花屋の前で回転しながら地面に倒れる。
コインには『寛容』と記されている。

興奮した馬をギロチン台へ引きずるよう引っ張っている兵士。
罵倒を浴びせ腐ったトマトや唾を吐きかける民衆。
その中を駆け抜ける少年。
民衆「フランスを生贄にした魔女!!! 罪を償え!」
人ごみを必死で掻き分け進んでいくと兵士の護衛を見て息を飲む少年。
少年はバラの花を肥樋に投げ込むとひらひら舞い上がったバラの花が肥樋に入る。
肥桶の覆面をかぶった罪人がバラを掴む。


断頭台に立った罪人は髪を短く切られ拘留中に白髪になったマリー・アントワネットである。
断頭台の先に死刑執行人のサンソンが立っている。
サンソンはマリー・アントワネットの覆面を剥がす。
一気に広場の狂喜に満ちた罵声が掛け声となり広場にこだまする。
民衆「死刑!! 死刑!! 死刑!! マリー・アントワネットに天罰を!!」
マリー・アントワネットは毅然とした目を向け、処刑執行人サンソンの耳元で囁く。
マリー・アントワネット「あなたたちを許します……さぁ、私を殺しなさい……」
サンソンは恐怖でマリー・アントワネットを見ることが出来ない。
教会法王がサンソンに訪ねる。
法王「彼女は何と言った?」
サンソン「あっ、その……。私たちを許すと・・・・・」
サンソンは、一瞬目を伏せ準備を整える。
広場はしんと静まり返る。
ギロチンの刃が落下するとマリー・アントワネットの首が空中を舞う。
民衆「フランス万歳! 自由万歳! 人民万歳! 革命万歳!」
生首のマリー・アントワネットが瞬きをすると広場は静まりかえる。
民衆「まだ生きているぞ!! マリー・アントワネットは本当に魔女だ」

民衆は奇声を上げて逃げまどう。
胴体部分のマリー・アントワネットの身体が崩れ落ちる。
すると、双頭の鷲が空から現れて、彼女の上に降り立つ。
逃げ惑う民衆のなかの男2が大声で叫ぶ、
男2「今だ!! 魔よけを手に入れろ!!」

数名の民衆が胴体に駆けつけると、双頭の鷲はゆっくり羽ばたき空に消えてゆく。
逃げ惑う民衆と断頭台に群がる民衆がみえる。
そこに、一瞬の隙を狙った女性がマリー・アントワネットの首を抱え走り去ってゆく。
デスマスクの第一人者・マダム・タッソーである。
そして、そのタッソーを追うように双頭の鷲が追いかけてゆく。


○マリー・アントワネットが埋められた墓地

タッソーと三人の白い頭巾をかぶった男たちが木製のスコップで土を掘り返している。
灯りが偶然まだ新しいモーツアルトの文字を一瞬照らす。
そして、タッソーは命令する。
タッソー「確かにここに埋葬されたはず……。まだ、土が固まっていないから、早く掘り起こして……」
男たちが大木の下を掘っていると、スコップが鈍い音をたてる。
ドブッ―――スコップの音
土の中から白い指が見える。
男のスコップが震える。
タッソーは男の肩に優しく手を乗せると耳元で囁く。
タッソー「ゆっくり」
首なしのマリー・アントワネットの遺体が現れる。
男の一人が口笛を吹くと、二頭の馬が馬車を引き音もなく近寄ってくる。
明かりが、馬車の扉に描かれた『双頭の鷲』の紋章を照らす。
馬車から、マントで身を隠した男が、シーツに包まれた女の死体を抱きかかえ降りて来る。
そして、三人の男たちの前に横たえる。
男たちは無言で、その死体の首を鋭いナイフで切り取る。
バサッバサッ―――首を切る音
タッソーはあたりを見渡す。
タッソー「早く……」

男たちは女の遺体を墓に埋めると、マリー・アントワネットを赤い絨毯に包み馬車に運ぶ。

馬車のきしむ音が聞こえる。
白い布で包まれた首が馬車から放り投げられる。


○パリ郊外の死体解剖室

薄暗い部屋。
タッソーと一人の白い頭巾で顔を隠した男が、マリー・アントワネットが横たわった木製のベッドのそばに立っている。
一人の男がナイフを磨き、もう一人は銀の壺を箱から出している。
室内を不安定な蝋燭の光が照らす。壁に揺らぐ作業する男たちの影。

―――作りかけの蝋人形。
―――ギロチンの刃
―――人間の髪

一人の男がナイフをタッソーに手渡すとタッソーは無言のまま、マリー・アントワネットの腹部に突き刺し心臓を取り出す。
手際よく男が銀の壺の蓋を開ける。
銀の壺には双頭の鷲の紋章が刻まれている。
タッソーは心臓を持ち上げると祈りを捧げて壺に入れる。

タッソー「これをオーストリアに届けてください。そして、マリー・アントワネット王女がこのパリに嫁がれる時に建設された、記念の石碑の中に埋葬してくださるように、エリザベート王女様にお願いしてください」
タッソーは壺を男に渡すと、
タッソー「これがマリー・アントワネット王女様の遺言です。魂は故郷オーストリアに戻りますと……」
タッソーは手際よく蝋人形を作る作業をしながら、男に壺を渡す。


○オーストリア マリア・テレジアの宮殿

銀の壺を運ぶ馬車が走りすぎる。
双頭の鷲が上空を飛んでくると、奇妙な搭の上(マリー・アントワネットが嫁いだ時に建てられた記念碑)に舞い降りる。
すると突然、雷鳴がとどろき鷲は石の彫像になり、塔と岩に挟まれた石の魔竜の目が開く。


時は現代に戻る。

にわかに空が黒雲に覆われ、雷鳴が轟くと奇妙なモニュメントが古びていく。
(時間経過を表現する)


○現代 オーストリア ゲッペル社 

ゲッペル社のロゴマークが入った『フェンゼルコンサートホール』の看板。


○コンサートホール

ゲッペル社から集まった関係者がリー・ウォン(27)の演奏を座って聴いている。
その中に、ソプラノ歌手・マリー・アレン(25)とゲッペル社・フランシナ・フェイル(30)がいる。
演奏が終わると全員立ち上って、ウォンに拍手を送る。
マリーがスカートの裾を踏み、転ぶ。ウォンはマリーの手をとる。
ウォン「(笑いながら)一緒に踊りますか?」
マリー「後ほど(驚いて笑う)」
咳払いをしてゲッペル社、会長。
会長「モーツァルト生誕二五〇周年を記念して、韓国の天才ピアニスト、そして天才指揮者、リー・ウォン君のコンサートツアーがヨーロッパ全土で開催されます。今宵の演奏と、ゲッペル社の栄光に拍手を!!」


○不思議なモニュメントの前の広場―――ウィーン

モニュメントの前にいるマリー。
そこに、フランシナとルーシーを名乗る(実は警部・アメリー)が後ろからやってくる。

フランシナ「不気味ね……」
ルーシー「ここには、あのマリー・アントワネットの心臓が眠っているそうよ」

気を失い(共鳴現象)倒れそうになるマリー。
ルーシー「冗談よ」
フランシナ「マリー! 大丈夫!?」
マリー「ええ。ちょっと眩暈がしただけ、大丈夫ですよ。戻りましょう」
宮殿に向かってゆっくりと歩き出す。


9宮殿近くの小道

マリーたちはが、ウォンとすれ違う。
ウォンはマリーに気づき立ち止まる。
マリーは恥らいながら、会釈し宮殿へ向かう。
ウォンが振り返り。
ウォン「先日は……」
ウォンは誰もいないことに気づく。
ウォンは言葉に詰まる。
ウォンはモニュメントに向かって歩いてゆく。


10不思議なモニュメント前

ウォンはモニュメントの上にある双頭の鷲を見る。
女性(アメリー)の影がウォンを横切る。
ウォン「……」
ウォンの脳裏に映像が浮かぶ。
シュテファン寺院の螺旋階段の光景――
三四三段の階段の頂上から転げ落ちる自分――
ウォンの額から汗が滴り、身体は恐怖で硬直している。
青空に突然の雷鳴が轟くと、双頭の鷲の石像が大きく羽を拡げる。
ドクンッ、ドクンッ―――心臓の鼓動
モニュメントから心臓の音に共振する。
ウォンは目を開ける。ウォンは醜く歪む魔界の王の中に銀の壺が見える。
ウォンの目の前が真っ白になる。
少年時代、モーツァルト(6)と少女時代、マリー・アントワネット(7)が姿を現す。


○オーストリア宮殿

皇帝たちと、マリー・アントワネットが座ってピアノを鑑賞している。
そこに、モーツアルト、目隠しをしたままピアノを弾いている。
マリー・アントワネット「すごい」
モーツアルト、演奏が終わり目隠しを外す。
マリー・アントワネットが立ち上がる。
マリー・アントワネットは躓いて倒れる。
モーツアルト「僕のお嫁さんにならないかい?」
倒れた、マリー・アントワネットを抱える。
マリー・アントワネット「私がモーツァルトのお嫁さん?」
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by masashirou | 2009-12-10 09:37  

インディオの偉大な先祖が眠るという伝説

昨日、サンパウロ新聞福岡支局長で、このたびベストセラー自伝小説「ヤンキー記者南米を行く」の作者である吉永拓哉氏とお話して、そのあと、お父さんからペルーのアンデス山脈の頂上にあるマチュピュツの世界遺産の写真を頂いた。
b0072881_9154880.jpg
彼は福岡とペルーの交流に生涯をささげた人である。
マピュピツの山にはインディオの偉大な先祖が眠るという伝説がある。この写真を見て初めて彼らの伝説の言い伝えの意味がわかったという。
はじめは何の意味かわからなかった。しかし、縦にしてみる。
b0072881_9144841.jpg



これも光の悪戯かもしれない。太陽の光と山々の陰影が偶然この写真を作ったのかもしれない。


スティブンセガールの写真に現れた龍のように!

私が50年ぶりに先祖の古い看板を蔵から見つけて、福萬醤油を復活し、日本人の食の原点である醤油を日本人に原風景として思い出す試みに挑戦しようと決意させたのもすべて偶然。
そうした時、みのさんのテレビ番組に、醤油ソムリエ高橋万太郎氏が突然、登場して注目されるのも偶然。
11月1日に、秋葉原で醤油ソムリエ喫茶がオープンして話題になるのも、12月に恵比寿ガーデンテラスで醤油イベントが開催されるのも偶然。
この世は偶然が溢れているワンダーランドである。
人間は二つの種類しかいない。この世の出来事をすべて偶然と思い、すべてを「科学的だから正しい」という考えで無感動で生きる人と、すべてが何かのメッセージを伝える、何か偉大な存在を感じる人である。

私あは後者の人生を歩んできた。これからもそうした出会いや出来事をそう考えたサムシンググレートな存在に感謝しながら歩むつもりだ。
皆様はどうですか?
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by masashirou | 2009-12-10 09:16