GHQによる日本の洗脳工作

 豊かな日本の若者の心を《効率一辺倒》の考えが蝕んでいた。失敗は無駄であると若者達は教えられた。若者はもう冒険する心を失ってしまった。
 古い地方の造り酒屋は、焼酎ブームで日本酒離れがすすみ、経営状態が著しく悪化していた。沢田の姉の家も、今年一杯で灘の大手酒造メーカーの下請け工場に組みこまれるという。沢田は少し寂しそうに語った。

日本人の憎悪エネルギーを戦後、軍国主義者と旧秩序の破壊に向ける。そう考えたマッカーサー元帥は、日本の伝統文化を完全に否定させることが最重要課題と考えた。それは食の分野から始められた。アジアで一億人の巨大な植民地である日本の食文化を根底から変える。その目的は、アメリカの小麦と牛肉などが輸出できる国にすることである。その一番の障害になると考えられたのが、日本酒と醤油である。醤油を日本人が使うかぎり、パンやバターの需要は生まれない。そこでマッカーサー元帥は部下に指示をした。「三年間、醤油に大豆を使用することを禁ずる」
醤油が米と魚の需要をささえる元凶である。日本人が米と魚を主食とするかぎり、アメリカの小麦や牛肉が売れない。山間地での農地の米の生産があると、そこには地域社会をまとめる庄屋がいて、庄屋を中心に共同体が形成される。海辺の集落には漁村に網元がいて、漁民を束ねて共同体を形成している。強い絆で結ばれた共同体こそ再びアメリカに対抗する強い日本が蘇る種である。その種がある限りアメリカは安心できない。その種を根絶せよ。

テレビの画面から『ローハイド』『ララミー牧場』『ボナンザ』などの西部劇もの、『名犬リンチンチン』『名犬ラッシー』などの動物もの、『パパは何でも知っている』『アイ・ラブ・ルーシー』『奥様は魔女』などの明るく楽しいアメリカの家庭ものドラマが溢れ出るように流れ出す。すべてがアメリカ文化を賛美する番組であるが、それらが日本の家庭に届けられた。

老舗の日本酒醸造元や醤油醸造元が無くなれば地域のまとめをする核がなくなる。酒や醤油の蔵元は長い伝統を受け継いでいるので、地域社会の歴史文化の語り部の役割がある。それがあるかぎり、日本人はまた、団結してアメリカに歯向かう恐れがある。あらゆる日本の文化が劣ったものという刷り込みがなされていった。一万二千社あった全国の醤油醸造元が三年間で半減する。一方、学校給食でパンと牛乳、脱脂粉乳が配給され、トマト・ソース、マヨネーズ、ジャムなどが毎日子供たちに配られた。食生活のアメリカ化戦略が実行された。そして、七十年が過ぎて、その成果がみのり、醤油醸造元は千五百社までに激減してしまう。また、《お米を食べると胴長になるとか、頭が悪くなるとか、醤油を飲むと高血圧になる》とかマスコミを駆使した日本食の否定的なキャンペーンを流した。

 日本全体にアメリカの効率一辺倒の文明が支配している。
古いもの、小さなものが少しずつ、その灯を消そうとしていた。
 永六輔氏が次のように語っている。
「文明と文化の唯一の違いは、文明が時と共に滅びてゆくのに対し、文化は逆に、時とともに価値を増してゆくものだ」
時が滅亡させようと動き出したものは、人間がどうあがいても止められるものではない。もし、小さな地酒の灯が消滅するのなら、それは文明の一部だったのかもしれないと、山崎は思った。
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by masashirou | 2016-02-08 20:40  

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