日本の本当の支配者ℋいまだにアメリカである!

「山崎さんなら、ご存知かもしれませんが?日米原子力協定には、原発を停止した場合のアメリカ企業が受けた損害についてアメリカ企業に日本政府が補償する条項が盛り込まれているのです。アメリカ側の了承なしに日本側だけで決めていいのは電気料金だけなんです。日本は戦後七十年以上たった今でも完全にアメリカの完全な植民地なんです」

「そんな・・・・・」山崎は言葉を詰まらせた。男は淡々と言葉をつないだ。
「日本の総理大臣は、・・・アメリカの傀儡(かいらい)でないと存続できません。大臣もそうです。TTPでアメリカに妥協しなかった甘木大臣が調印百万円の贈収賄事件で辞任しました。はめられたのです。アメリカの命令したことを忠実に実行する総理大臣や大臣のみが長期政権を担当することが約束されるのです。名前を言わないでもお分かりになると思います。私は田中角栄さんに二年間おつかえましたが、一番官僚として誇りを持てる日々を過ごせました。すごい総理大臣でした。いまでも、尊敬しています。
角栄さん、あえて角栄さんといわせてもらいます。角栄さんは、アメリカに無断で中国との国交回復を企てました。アメリカにとって、日本と韓国、中国に手を組まれることは脅威であり、再び、日本がアメリカに対抗できる強いアジアの大国になることに恐怖を感じるのです。あらゆる手段をつくし、CIAが三つの国を永久に憎みあうように仕掛けます。田中さんはアメリカという虎の尻尾を踏みつけた。だから、贈収賄情報を検察にリークして田中総理を失脚させたのです」

突然、男が激しく咳を始めた。ヒューヒューという音が山崎の胸を締め付ける。しばらくして、男が荒くなった呼吸を整えるように深く深呼吸をした。男は重い呼吸器系の病に侵されていた。男は数秒の間、上を見て呼吸を整えようとしたが、ふたたび、激しい咳が止まらなかった。まるで、日本を覆う闇の中の汚い塵を必死で吐き出すように思えた。

「大丈夫ですか?」
「水を・・・ください」
水をコップに継ぎ足すと、男は一気に飲み干した。再び低い声でゆっくり、喋り出した。
「欧米の国が植民地から手を引くとき、その国の周辺にトラブルの火種を仕掛けてから撤退する戦略をとるのが常套手段です。北にロシアの北方領土問題、西には韓国の竹島問題や慰安婦問題や北朝鮮の核武装問題。南には中国との南京大虐殺問題や尖閣列島問題。国内では沖縄問題こうして、アメリカは日本がアメリカの命令を聞かないと、CIAがその火薬に火をつけて日本がアメリカの軍事力を必要とする緊張状態をいつでも作れるのです。
自分の国益のためならどんなことも企てるからこそ大国になれるのです。まず、国益を最優先するのです。ロシア、中国も同じです。日本はどの大国と組むのがベターなのか?。ロシアと中国は共産主義の独裁国家、アメリカ以上に野蛮な卑劣な国です。選択肢として、これからも、おそらく、アメリカが最も信頼できる唯一の大国でしょう。だから、国を守る為に、我々官僚は政治家に少々の不条理な要求でも呑むように指導してきたんですよ・・・」

男はワイングラスに手をかけ残っていた赤ワインを飲みほした。
山崎を真正面から凝視しながらつぶやいた。

「アメリカの日本占領政策に『ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム』(戦争についての罪悪感を日本人の心に植え付けるための宣伝計画)があったことをご承知と思いますが・・・」
「太平洋戦争は、日本と米国とが戦った大戦であった。それを、日本の「軍国主義者」と「国民」とを対立させ、現実には存在しなかった「軍国主義者」と「国民」とのあいだの戦いにすり替える計画ですね」

男は、再び、グラスに残っていたワインにすべて飲み干した。
「そうです。これがまだ続いているんです。日本を分断する。古い日本と新しい日本を分断させ、対立させる。伝統的秩序を破壊し、アメリカに戦いを挑まない日本の永久革命を完成させる。日本人が大戦のために燃え上がったエネルギーは、二度と再び米国に向けられることない。恐るべきCIAの占領政策です」
「今もですか?」
「政府が、日本が『戦える普通の国』になるために憲法改正をすることを最大の政治課題にしています。二十一世紀の日本の真の独立と国益を基盤にした戦略もなく、本当に国土を焦土とする戦争の覚悟もその対策もせず、特に、慰安婦問題では、短期的な国益のために、日韓合同声明を出した政府に失望しました。未来の子供たちに禍根を残す決定です。『日本軍が二十万人の少女を拉致し、強制連行し性奴隷にしたことを日本政府が認め、10億円のお金で韓国政府と解決することに合意した』と一斉に世界中のメデイアが報道しました。産経新聞ソウル支局長の突然の無罪判決もそうです。アメリカが日本の外務官僚と韓国に命令したんです。アメリカにとって、日本や韓国の名誉など、関係ないのです。アメリカと戦った日本の軍隊の名誉を貶める・・・それこそが目的なのです・・」
男はしばらく上を見上げていた。まるで神に問いかけるような仕草をした。

「原発再稼働デモには、日の丸の旗を掲げ、街宣車から大きな声で『愛国日本』を叫ぶ過激な右翼団体が妨害行為をします。英国のテレビBBCによると、その中には、韓国や北朝鮮の在日エージェントが組織した団体が紛れているそうです。日本のマスコミではタブーですが・・、街宣車に《韓日同盟》と書いて北朝鮮の核ミサイル反対を叫びます。これが、韓国系。《竹島返還》《慰安婦像撤去》という旗を掲げているのが、北朝鮮系です。どちらも「《中国の尖閣問題とロシアの北方領土問題、反原発撲滅》は同じ活動目標にしています。彼らは、日本で過激なヘイトスピー・デモなどの反韓国運動や反北朝鮮運動を展開しています。いわば、南北対立を愛国右翼に偽装して、日本で活動しているのです」
「《日韓同盟》と書いてないので、すぐわかりますが、しかし、どうして、尖閣問題、北方問題、原発再稼働には、両方の右翼団体は協力して行動をしているのですか?」と山崎が尋ねた。
「どちらも、CIAから命令を受けているのです。アジアの三つの国を永遠に分断させるためです。『美しい国日本を守る・・・』とかいう美名のもとで活動しているので、普通の日本人には,彼らを愛国的日本人が運営していると勘違いしています。彼らを使い、反米的な政治家や経営者に対し、ほめ殺し、殺人や脅迫などの右翼テロを仕掛けるのです・・・、日本人による愛国運動という仮面を被って行動しますから、国際問題にならないで、テロ活動ができるのです。
かつての玄洋社の頭山満や西郷隆盛のような、欧米の理不尽なアジアでの行動に抗議するような本当の愛国者とは異質の右翼といえます・・・」
「よく、敵対している相手が実は協力関係にあるという、よくある例ですね。六十年安保の時も極左と極右にアメリカの資金が流されていましたから・・・、アメリカはそういう仕組みを作るのがうまいですからね」と答えると、男は笑みを浮かべた。

「そうなんです。『美国日本』を主張する右翼的な組織は、韓国の世界真理キリスト教会が資金を提供しています。この宗教団体は北朝鮮の金ファミリーとも強いパイプをもっています。日本の保守の先生方も知りながら、選挙協力やお金目当てに彼らの会合に参加します。何しろ『美しい日本を取り戻す運動』ですから保守としては反対できません・・・韓国や中国ではアメリカを美国と書きます。日本が《美しい国》になるということは、日本がアメリカの属国になるという意味です」
「先生は、・・・憲法改正に反対のお立場なんですか?」
山崎は目を大きく開いて、見上げるように質問した。

「この憲法はアメリカが、二度とアメリカと戦えなくするために、日本を弱体化する目的で敗戦国日本に押し付けた憲法ですよ。自衛権や交戦権も認めないような憲法ですから、海外で働く百二十万の日本人や観光で海外旅行する千六百万の日本人が戦争に巻き込まれて、帰国できなくなっても、自衛隊が救出に行けない。また敵が本土に上陸しも、国内で国民を守るために戦えないように縛っているのが、今の憲法です。日本には保守派は存在しません。保守とは《伝統文化、国土と国民、国体を守る》のが保守ですが、その意味で保守は、敗戦後、この国には、存在していません・・・」
「私もそう思います」
「しかしね、山崎さん・・・国の形を変える、国の憲法を変えるには、国民自身が自からが考え、国民自らの意思で変えるべきものです。ところが、今回の憲法改正は国民に十分論議もさせずに進めようとしています。今までの日本政府は、アメリカが強く自衛隊を戦場に派兵することを求めても、『これはあなたから創っていただいたアメリカがおつくりになった素晴らしい平和憲法ですから、派兵できません』と答弁してきたのですが、・・・アメリカは、そうした日本の対応が気に食わなくなったのです。二〇〇四年、リチャード・アーミテージは当時の中川防衛大臣に対し、『憲法9条は日米同盟関係の妨げの一つになっている』と発言しています。つまり、

『平和憲法を改正してアメリカと集団的自衛権を発動してシリアやイラクでの軍事行動がとれるようにしろ』と命令しているのです。安保関連法案、特定秘密保護法、原発再稼働、従軍慰安婦問題は、すべてアメリカが政府に提出したアーミテージ・ナイレポートを、そのまま実現したものです。日米合同委員会という組織でアメリカが直接、霞が関の高級官僚とあらゆる分野について毎月二回話し合い、すべてが合意した密約として決まります。政治家は手足にすぎないんです。
日本が原発を受け入れた時と同じです。原発導入にはCIAのエージェント名『PODAM;我、通報す』である正力松太郎が動きました。十分な国民の合意を形成する手段を踏まずに、一部のアメリカに追従して利権を得ようとする《正力》のような日本人たちにより、すべてが既成事実として進められていく。
国民全員の理解と合意を取った上で行動してゆくことが一番の国の安全保障の要のはずです。山崎さん、未来永劫、日本の経済と政治を、今度は軍事を裏でコントロールする。アメリカにとって日本をいかにコントロールするかは、アジア戦略上最大の問題であり、安全保障にかかわる重要な問題なんです。これは戦後、少しも、かわっていないですよ・・・」

山崎は沈黙した男につぶやくように話した。
「僕の友人で防大出身の官僚が、日本蜜蜂について話をしてくれました」
「蜂?」男が不思議そうな顔をして山崎を見た。
「僕は子供のころスズメ蜂にさされたことがあり、もう一度刺されたらアレルギー反応で死ぬと医者から言われています。そういう話をしたときに、友人がこの蜂の話をしたんです。日本蜜蜂は小さな体しかありませんから、最初から集団で戦う戦法でスズメ蜂と戦うのです。日本蜜蜂が羽を高速振動させて出す熱エネルギーは相当なものです。スズメ蜂などの外敵の襲来にあったとき、スズメ蜂を大群で取り囲み、中心の温度を摂氏五十度近くまで上げて熱で殺してしまいます。蜂球と呼ばれます。自分の身体より十倍もあるスズメ蜂でも、この集団攻撃で倒すことができるのです」
男が深くうなずく。
「彼は、その話の後こう言いました。『自衛隊だけで日本の本当の国防はできない。国民全員が自分の国土や国の文化、伝統を愛し、守るという強い合意形成が不可欠なんです。軍隊まかせの武器だけの防衛は弱い』って。今回の原発事故は大型のドローン、わずか六機で日本を破壊しました。《ドローン》とは戦う雄の蜂を意味します。今こそ、この強大な大国、スズメ蜂と戦うには日本蜜蜂のように国土と文化を守るために、集団で戦う情熱が必要だと思います・・・・」

桝井幸三の目に涙がかすかに光るのを見た。
山崎が立ち上がり、深くお辞儀をして、まだ語りたい様子の桝井幸三に別れを告げた。
ひとり漆黒の闇が広がる皇居前広場の森の中をひたすら歩いた。山崎は言いようのない深い悲しみの中にいた。その闇は日本の中枢部、東京の霞が関まで広がっているように、いや、日本全体を包み込んでいるようにも見える。高校の修学旅行以来五十年ぶりに、靖国神社についた。鳥居前に立つと、靖国のうっそうと広がる闇の中に参道にともされた小さな灯篭の薄暗い灯りが見える。確かにこの森にはアジアを五百年間、侵略の限りを尽くした欧米列強諸国に勇気をもって戦い、死んでいった無名の《日本蜜蜂》たちの魂たちが眠っているように思える。

そして、目を凝らすと、この漆黒の森には鎮魂されてない、無数の孤高の《日本蜜蜂》の魂が悲しげに覆っている。日本古来の道義を失わせる魂の西洋化に異を唱え、独立自尊を訴え、強大な明治政府に戦いを挑んだ英雄たち。反乱者という汚名を着せられた西郷隆盛や玄洋社の頭山満、そして、佐賀の乱、神風連の乱、萩の乱、秋月の乱、福岡の変などの、九州や長州で決起した真の愛国者たちの魂がこの深い森に向かって、言葉に出せない悲しみを訴えているように思えた。
山崎は神殿のある方向に、しばらく目を閉じ、頭を下げた。

地下鉄虎ノ門駅から品川駅まで地下鉄で移動し、品川駅前から『相模屋』旅館跡まで歩いた。旅館『相模屋』は、十七人の水戸浪士と一人の薩摩藩士が宿泊した宿である。桜田門外の変の刺客たちは、アメリカとの不平等な条約、日米和親条約を調印した井伊直大老暗殺の為に、ここから黎明に愛宕山にある愛宕神社に詣で、ことが成就することを祈念し、桜田門に向かったという。
山崎はその旅館跡に建てられたビジネスホテルに宿泊した。

我々は時間と共に進化していると考える進歩史観は、ここ200年くらいの話なのだ。科学が人類を進化させているのは物の世界だけに限られている。むしろ、精神世界では退化している。現代人が2000年以上前に誕生した宗教や哲学を心のよりどころにしているのがその証拠だ。天皇が支配した古代が本当の国の形であるという水戸史観も同じだ。素晴らしい未来は過去にあった。イスラム国の原理主義も、ムハンマドの時代に戻ろうという下降史観に起因している。西洋でも同じだ。ローマ・ギリシャ文明を復興しようという中世のヨーロッパのルネサンス運動も、キリストの時代のキリスト教に戻ろうというプロテスタント運動も、世界を2分したマルクスの共産主義も原始社会に素晴らしいユートピアが存在したという歴史観をベースにしているのだ。古いものから新しいものが産れる。これが、人類共通の歴史観といえるのだ。過去を学ぶことでより良い未来を創る。『温故知新』『初心忘るべからず』の日本人の知恵は現在でも生きている。「昔はよかった」と年寄りが語るのも5000年以上から世界中の老人たちが口にしている。21世紀は科学に対する信頼が崩れ、古い精神文化が蘇る世紀だと言えるのだ。

山崎は朝早く、品川駅から浜松町へ向かい、モノレールに乗り換えて、新しく生まれ変わった新羽田空港に到着した。モノレールの車窓から見えた光景は、アメリカの都市そのものだった。高層ビルが林立する東京が山崎の眼前にあった。巨額の負債を抱えて一度、破たんした日本航空は、JALという英語の会社名を斜線で分断した不吉なマークから、日本を象徴する鶴のマークに戻し、見事に再生した。山崎はその鶴のマークを尾翼に大きく描いた日本の翼、日本航空の飛行機で、アメリカのコロラド州ダラスに飛び立った。

三十五年前にロスに逃げるように、飛び立ったときに感じた日本に対する否定的な感情は無かった。むしろ桝井幸三のような、真剣に信念を持ち日本を変えようとする官僚たちがいることに誇りをもった。また、いつの日か日本に戻ろう。

山崎はこの日本が好きだ。
自由を求める移民を受け入れ、多様性を受け入れるアメリカも好きだ。
しかし、いつの日か、アメリカから独立した誇りある日本を見てみたい。
それは見果てぬ夢かもしれない。
時代が移り変わる。
世代が交代する。
肉体が滅びても生きざまが継承される夢がある。
この夢の中でしか生きることができない「龍」の物語は日本人が夢を見る限り長く語り継がれるであろう。



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by masashirou | 2016-02-08 20:13  

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