映画「ミッテランコード」日本語脚本その9

94パリ市警 テロ対策室

ハーバード長官、バルマン警部、ベッソン警部そしてロナウド教授がいる。

ハーバード「ロナルド教授ご協力ありがとうございました。そして、バルマン隊長・ベッソン副隊長、細菌兵器の処理にあたりその功績を称えたい。しかし、テロはまだ終わっていない。これからの調査も引き続きバルマン隊長にお願いしたい」
バルマン「了解しました。それでは早速、ウォンの事情徴収を始めます。そこで、ロナウド教授にお願いがあるのですが」
ロナルド「何でしょう?」


95ベルサイユ警察病院のある部屋

ガラス越しにウォンが寝ている。
女性の看護士が点滴を取り替えているとウォンが意識を取り戻す。
看護士はガラス越しに目で合図を送ると部屋を出てゆくと、ロナルドが病室に入っていく。

ウォン「ここは?」
ロナルド「病院ですよ」
ウォン「あなたは……?」
ロナルド「もう忘れてしまいましたか?」
ウォン「確か……。オックスフォードの教授ですよね。その怪我は?」

ロナルドは包帯が巻かれている左腕をかばいながら撃たれた魔笛をウォンに見せると、

ロナルド「あなたには2度助けられた。これと、そして、あなたと連れの女姓に。本当に感謝している」
ウォン「マリーは無事だったのですね」
ロナルド「覚えていないのですか?」

ウォンは黙り込む。

部屋のガラス窓を覗き込むバルマン。
そこに、女性看護士が入ってくる。

バルマン「ロナルド教授はこちらに気がついているか?」
看護士「いいえ。私が警官だということすら気がついてない様子です」
バルマン「録音しろ」

警官が録音機にスイッチを入れる。
バルマンが録音機の隣に座りヘッドフォンをつける。

ロナルド「いずれ警察の事情徴収があると思うが……。その前に少し協力して下さい」

ウォン「覚えていることであれば……お話は出来ます」
ロナルド「ありがとうございます。まず、あなたはピアニストであり指揮者のリー・ウォン27歳。父リー・ケソン、母キム・スヒョンの長男で韓国人。間違えないですか?」
ウォン「母は北朝鮮から拉致された日本人です」

バルマンが驚いてガラス越しにウォンを見る。

ウォン「父も韓国で拉致されたと聴いています。二十二歳になった時、朝鮮音楽大学院の教授から、一緒にオーストリアに亡命しようと誘われました。もちろん、私は即座に亡命することを決意しました。
 その後は製薬会社ゲッペル社が運営するフェルゼン音楽財団の支援で、ピアノと指揮学をウィーン音楽アカデミー学院で学びました。そして、ゲッペル社がスポンサーの『モーツァルト生誕二五〇周年欧州イベント』で、オペラ『魔笛』の指揮をする栄誉をいただくことになったのです……」

ロナルドがアメリーの写真をウォンに見せる。

ロナルド「この人を知っていますか?」
ウォン「ルーシーさんですね」
ロナルド「……!? 知っているのですね」
ウォン「はい。マリーを紹介してくれたのも彼女です」
ロナルド「マリーさん? 彼女はフェルゼン財閥の親族ですか?」
ウォン「フェルゼン5世のお孫さんだと伺いました」

盗聴している、バルマン隊長と部下の隊員が目を合わせる。

パトリック「これで、フェルゼンを落とせる手がかりが……」

バルマン隊長の耳元で囁く。
ロナルドは一枚の写真をウォンに見せる。
その写真にはフェルゼン・ファミリー15名が写っている。ロナルドは右端に写っている長い髪の女性に指差す。

ロナルド「この女性ですか?」
ウォン「いいえ、違います」
ロナルド「この女性がマリー・アロイジア・フェルゼンですが……。この写真の中にいますか?」
ウォン「いいえ……。では、マリーは誰なのです?」
ロナルド「そうですか。それは私にも分かりせん。ただ分かっていることは、今回のテロでフェルゼン5世が関与している疑いがかけられていること、そして、貴方にもその疑いがかけられていることです」
ウォン「私が!?」

ロナルドはゆっくりと頷く。

ロナルド「私はあなたが犯人だとは思っていません。もちろん、あなたに不利になるような証言もするつもりはありません。なぜなら、あなたは私の命の恩人なのですから……。
あなたに起こったすべてのことをお話していただけますね」
ウォン「信じていただけるかは分かりませんが全てお話しします。」


96フランス パリ エリゼ官

シラク大統領とロナルドが壇上に立っている。
付近には300名を超えるジャーナリストと各局の報道がカメラを向けている。
シラク大統領からロナルドにレジオン・ドヌール勲章が授与されると会場はフラッシュの光がたかれる。
ジャーナリストがロナルドに質問する。

ジャーナリスト「ロナルド教授はテロをどうやって予測したのですか?」
ロナルド「私は、類似した歴史を研究していく間に、ユング博士の『シンクロニシティ共鳴説』とエドワード・ローレンツ博士の、混沌の中で発生する一見関係ないような出来事が、実は一つの数字的パターンに従って発生するという『カオス理論』をヒントにして、新しいロナルド仮説を完成させました。カオス—混沌の中の秩序こそ、宇宙の基本構造であると思います。私の研究は、人間の心や魂、思念という眼に見えない世界が眼に見える現実世界にどれほど大きく影響を与えているのかを証明しようという研究です。その研究において300年前のフランス革命が人類に新しい時代をもたらしたことが、この現代にも酷似していたのです。そこで、古い時代と思想の最期を生きたマリー・アントワネットについて着目しました。そして、歴史からすべてを紐解いてみたのです」

ジャーナリスト「なるほど。ところで、ミッテラン大統領は、なぜパリにメッセージを残したのでしょうか?」
ロナルド「古代エジプトのファラオは、自分を象徴する角度を持っていました。その角度に従ってピラミッドを建設したのです。ナポレオン皇帝が6度というルクソール神殿の秘密の角度をパリに再現した事は有名です。ミッテラン大統領は3度という角度を使い、偉大な皇帝に見習って『ミッテランの暗号』を残したのだと思います


ジャーナリスト「なぜテロリストはミッテラン大統領の残した暗号を利用したのでしょうか?」
ロナルド「ミッテラン大統領がマリー・アントワネットを処刑したギロチンを廃止し、死刑制度をフランスから消滅した大統領であることに、着目して、何らかの因縁を暗示させる為だと推測されます。もうひとつの可能性ですが、犯人グループは、EU連合推進に反対する勢力がミッテラン大統領の名誉を傷つける目的があったのかもしれません。今、テロ集団の背後関係を捜査している最中ですので、いずれ明らかになるでしょう。」

ジャーナリスト「パリに描かれたVの文字の意味は?」
ロナルド「ご承知のように、レオナルド・ダ・ヴィンチの名画『最後の晩餐』のなかには、聖杯を示すVの文字が描かれています。ミッテラン大統領もこのパリという巨大なキャンバスに、Vという文字を残したいと考えたのでしょう

ジャーナリスト「ミッテラン大統領がガラスピラミッドの地下に、マリアとサラの遺体を安置したという噂があります。そして、ミッテラン大統領のシオン修道会やフリーメイソンとの関係について、教授はどうお考えですか?」
ロナルド「シオン修道会の目的には二つあります。ひとつには、キリストの血脈を受け継ぐメロヴィング家の再興を願うこと。もうひとつがヨーロッパ連合体の創設です。1940年代にシオン修道会がヨーロッパ連合体の旗として提案していた紋章は、現在のEUの星の輪の紋章になっています。シオン修道会の存在を示す証拠のほとんどが、ミッテラン国立図書館に収納されています。多くの研究者は1950年以降、必要な文章がほとんど入手不可能になると口をそろえて指摘しています。もちろんミッテラン国立図書館を建設したのは、ミッテラン大統領です。23代シオン修道会総長で、有名な詩人であり、作家でもあったジャン・コクトー氏の死後1963年からプランタール氏が25代総長に就任する1981年までの謎の空白期間、ミッテラン氏が24代シオン修道会総長を務めていた可能性があります。1981年の5月に、ミッテラン氏は大統領に就任していますので、総長の座をプランタール氏に託したのかもしれません。コクトー氏の親友であったシャルル・ド・ゴール大統領もシオン修道会のメンバーでしたから、EU連合を推進したミッテラン大統領もシオン修道会に関与していても不思議ではありません。
そして、彼はアメリカの上院議会の公聴会において、ミッテラン大統領が『3』という数字を神秘の数字と信じるフリーメイソンの高級幹部であったという報告もなされています。・・・・、しかし、誰にも知られずに、その計画を実行に移すとしたら、ガラスピラミッドの建設を命じた最高権力者であったミッテラン大統領本人以外に、考えられません。私自身としては、現代と古代と繋ぐミステリーとして興味がありますが、ひとつのファンタジー、謎に包まれた都市伝説のひとつだと思います・・・」

ジャーナリスト「ロナルド教授の理論は今後の世界も予測できると伺いましたが?」

ロナルド「私の研究では、800年周期をもつ大きなパラダイムシフトの到来があると予言しています。世界は急速に危機に向かっています。しかし、私はその絶望の闇の中に光が見えます。21世紀は世界がひとつになることを考えなくてはなりません。西洋の陽の文化と、東洋の闇の文化が、融合して、新しい高度な世界文明が到来する。特に、日本文明の中にある自然と共存する知恵や、異なる神々が共存出来る『和を大切にする』知恵を学ぶべきである。その光こそが世界をひとつにする希望だと確信しています」



97パリ市警 テロ対策課

バルマンはロナルドがレジオン・ドヌール勲章を授与しているテレビ中継を見ている。
そこにパトリックが入ってきてバルマンに耳打ちする。
バルマンは表情を変えずに頷く。


98DST(フランス国土監視局)情報局

ペレ長官がバルマン、ベッソン、パトリックを集めて会議をしている。

バルマン「世界中がテロの脅威に怯えることで莫大な利益を得ている組織や国家や人物が存在するかぎり、テロ事件は永遠に終わらないでしょう。一連の事件で最も利益を得た人物は誰だろうと考えたのですが・・・」
ベッソン「今、レジオン・ドヌール勲章を受賞しているロナルド教授とでもいうのか?
バルマン「そうです」
ベッソン「たしかに、ロナルドがこう我々にしゃべっていた。『人間は見たいように事実を認識する』ってな。」
パトリック「実は、奇妙な事実があるのですが・・・」
ベッソン「なんだ?」
パトリック「アメリー警部の先祖の出身地が、北フランスのアルデンヌ地方のステネーなんです」」
ベッソン「それが?どういう意味があるのだ?」
パトリック「1070年に、シオン修道会の組織が創設された場所です。その場所で、アメリー警部の母方の先祖だった修道士が、シオン修道会の秘密をローマカソリック教会に漏らした罪で処刑されています」
ベッソン「それが?どういう意味があるのだ?」
パトリック「もう、ひとつマイケルの先祖について調査しました。
ベッソン「マイケルの先祖は、スウェーデンの国王フェルゼン公だと聞いているが、違うのか?」
パトリック「それは、父の方で、母方の先祖は、シオン修道会が再興を願うキリストの血脈を受け継ぐメロヴィング家ダゴベルト2世を、暗殺した裏切り者の肥満王と呼ばれた大宰相ピピンに行き着くのです」
ベッソン「君は何を言いたいのか?結論を言え」
パトリック「ロナルド仮説が本当だとすると、死んだ魂が共同で今回の事件を起こした可能性も否定できないと・・・・」
ベッソン「君までもが、愚かしいオカルトの学説を信じるのか?」
パトリック「我々は事件の全容をロナルド教授とアメリーやウォン容疑者からの供述からの一方的な話をベースにして組み立てきました。もし、ロナルドが事件のすべてのシナリオを書いていたとしたら・・・もし、アメリー警部もマイケルもウォンも、マリーも全員が仲間だったとしたら・・・アメリー警部もマイケルも生きているとしたら・・・」

会話の裏でイメージ映像が流れる。

シーン1)ドバイのホテルでアラブ人の王子と電話しているロナルドのシーン
シーン2)病院でウォンとロナルドが盗聴を確認しながら話すシーン
シーン3)オペラ劇場でマイケルが身元不明の男サイート(化学者、ウィルスNERO666を開発者)の死体を運び込むシーン
シーン4)オペラ劇場でアメリーが空を向けて銃を撃つシーン
シーン5)マイケルがロナルドの腕を撃つシーン
シーン6)アメリーとマイケルが身元不明の女の死体ソフィア・ロドリコ(スペインの女性彫刻家)を無線自動操縦のヘリコプターに積み込むシーン
オシン7)ロナルドがマリーとウォンに飛び立ったヘリの爆破を命じるシーン

ベッソン「死んだと思われるメアリーもマイケルも生存している可能性がるというのだな・・早速、遺体のDNA鑑定を依頼しろ」

ペレ長官「ベッソン君。ロナルドの研究所は、ドバイのファンドから巨額の資金援助を得ている。9/11事件の背後にドバイファンドがいたという報告を受けている。事実、9/11事件以降アメリカに流れていたオイル・マネーはドバイに環流した。世界が危険であればあるほど、産油国の王族の資金がアメリカや欧州に流れ込まずに、このドバイに流れ込んでいる。本当の悪魔は、正義の仮面をかぶって舞台に登場する。ロナルドはフランスを救った英雄である。ロナルドこそ真犯人である可能性があるかもしれない」

バルマンはペレ長官に言う。

バルマン「ペレ長官、今後、フランス国家警察総局長官の命令で、ロナルドの動きを
監視する旨の許可を願います。」
ペレ長官「よくわかった。今、われわれが発言したことは、すべて記録から削除される。フランス国を代表してシラク大統領がレジオン・ドヌール勲章を授与した人物に対する侮辱となる。もしもロナルド教授が真犯人だと確定された時の政治的混乱を考えるべきである。フランスの大統領閣下の恥を世界中に公表する国家的損失を考え無ければならない」
バルマン「はっ・・・・」
ペレ長官「ただしだ。極秘事項として、追跡捜査チームを組むことを命令する。すべて政治的に判断されることを前提にして捜査を続行する。いいな」
バルマン「はっ、はい」
ペレ長官はバルマンの目をジッと見つめる。

99パリ警察 玄関

バルマン、ベッソンが警察署を出てゆく。
二人が空を見上げると双頭の鷲が飛んでいるのを目撃する。


101コンコルド広場

ロナルド、空を見上げると双頭の鷲が空を飛んでいる。
ロナルド、不思議そうに見つめる。


102ロナルドの回想
1)ロナルドが幼年時代を過ごしたアイルランドの村は、ほとんどの地域が花崗岩に覆われている。村人は、石ころだらけの荒れた土地で、貧しいながらも信仰心に篤く、相互に助け合い、誇り高く、つつましく生活していた。アイルランドの土着宗教のドルイド教は、自然崇拝の多神教で、さまざまな物や動物、例えば岩や鮭や牛や豚、犬などにも神が宿ると信じていた。文字を持たないケルト民族には、口述で神のお告げや神話を伝承する「ドルイド」と呼ばれる預言者、神官が、神と民衆の間に存在した。
ロナルドの祖父は、「お前は『ドルイド』の血脈を受け継ぐ子孫であることを忘れてはならぬ。人間は輝く光は深い闇が支えられている事を知らなければならない。」と語った。


2)ロナルドの義父「歴史は繰り返すという言葉があるが、あまりにも類似点が多すぎる。どうだ、歴史は面白いだろう。歴史から学ぶべきものが多くある。しかし、ドイツの詩人ハイネが『人間が歴史から何にも学ばないことを、歴史から学ぶことができる』と嘆いている。お前は歴史から多くのものを学ぶ人間になれ。特に故国アイルランドのこと、ケルト人の文化のことなど、そうしなければ、この移民の国、歴史のないアメリカで、お金が唯一の価値を持つ愚かな根無し草のアメリカ人に堕落する……歴史には奇妙な時空を超えた「偶然の一致」、「歴史の類似性」がある・・・」


3)ロナルドと祖父が海歩いている。
祖父は波を見つめながら言う。
祖父「ロナルド。よく波をみてみなさい」
ロナルド「?」
祖父「打ち寄せる波の白い所を見てごらん」
ロナルドはジッと白波を見つめる。
祖父「打ち寄せる波の数を数えなさい。それを、よく観察しなさい」
ロナルド「1,2,3・1,2,3。あっ」
祖父「ブランコを揺らす時、なぜ、1回、2回、3回で、大きく揺さぶるのか?力を込める時、ジャンプする時、何故、3回で動き出すのか?分かるかい?」
ロナルドは不思議な顔で祖父を見つめる。
祖父「それは、③という数字が波動を最大にし、また、波動を最小にする神秘の数字なのだよ。だから、波が押し寄せる時も、引く時も、3つのピークで変動する」


103コンコルド広場

ロナルドは小さな声で呟く。

ロナルド「1,2,3.1,2,3」

ロナルドが『3』と言った瞬間に強い風が吹くと公園が真っ白く包まれる。


104イメージ映像

緑に溢れるイスラム風の宮殿が砂漠の中に現れる。
黄金のテーブルの上に赤いバラが飾っている壺が置かれている。
マイケル、マリー、アメリー警部と思われる後ろ姿がみえる。
3人の姿が黄金の扉の中に消える。
ロナルド、その後を追う。
双頭の鷲が上空からその光景を見ている。
鷲は砂漠から急上昇しながら飛んでいく。
鷲は白い雲を通り抜ける。

105イメージ映像 ウィーンの宮殿

不思議なモニュメントの上に鷲が止まるとそのまま鷲は彫像に姿を変える。
透明の双頭の鷲が鷲の彫像から抜け出すと周囲は暗闇に包まれる。
鷲は闇が支配する銀河宇宙に飛んでいく。
アンドロメダ星雲が太極図に姿を変わる。
光が消える。
再び闇の世界が現れる。
マリーが歌う「夜の女王のアリア」が聞こえてくる。


  地獄と復讐の炎が私の心の中に燃え上がる
  死と絶望の炎が私のまわりに燃え上がる
  お前のために悪魔ザラストロが破滅の恐怖から逃れたら、お前はもう私の娘ではない
  お前は、永遠に追放され、見捨てられ、永久に打ち砕かれるだろう。
  お前との絆は打ち砕かれることを覚悟せよ
  聴くがいい、復讐の神々よ
  聴くがいい、母親の呪いの誓いを

FIN
[PR]

by masashirou | 2009-12-10 09:48  

<< 私たちの文明が進化の方向性について 映画「ミッテランコード」日本語... >>