映画「ミッテランコード」日本語脚本その7

66コンコルド広場

「魔笛」の舞台が始まる。
夜の女王が王女パミーナに剣を渡す。夜の女王は悪魔ザラストロを刺すように命じて去っていく。王女パミーナが悪魔ザラストロに、母の命令のことを話す。悪魔ザラストロは『この神聖な殿堂には復讐などない』と告げる。

67 1798年 エジプト テーベ近郊

絵画に描かれたナポレオンが動き出す。
軍隊を率いて馬に跨り、エジプトへ向かう。


68ルクソール神殿

6人の学術調査団が古代エジプト文字ヒエログリフの解明の鍵となるロゼッタストーンを発見するシーン。
3人のフランス兵が砂に下半身が埋まったスフインクスの鼻を遊びながら射撃している。
スフインクスの鼻が次第にかけていくシーン。


ナポレオンは学術調査段から報告を受けると、ルクソール神殿でエジプトの街を見下ろす。
ナポレオン「余は、偉大な新しいフランスのファラオになる。パリの街をこの偉大な歴史を持つルクソール神殿に似せて作り替えるぞ」
学術調査団が画家にスケッチを描くように指示する。
画家が街並みをスケッチしている。
ナポレオンはスケッチを覗き込む。
ナポレオン「なぜずれている?」
画家「よく観てください皇帝陛下、神殿と神殿に通じる道はナイル川の形に似せて6度だけ中心の軸がずらされて建設されているのです。この6度は母なるナイル川とルクソール神殿を支配したファラオを象徴する角度なのです。」
ナポレオンは建物を注意深く見ると笑みをこぼす。
ナポレオン「面白い話だ・・・」


69コンコルド広場

オペラ「魔笛」が続く。
王女パミーナと王子タミーノは、夜の女王が悪魔であり、悪魔ザラストロは新しい時代の救世主であることを知る。


70会議室

ロナルドは頷く。
バルマン「それで、教授が解読した暗号から推測してテロはいつどこで起こるとお考えですか?」
ロナルド「テロリストは、象徴的事件にしたいという強い願望から最も有名な塔と門を選ぶはずです。この二百年の間に、パリで旧市街地の高度規制が除外され、建設された高い塔が二つ、そして観光客がコンコルド広場で必ず目にする有名な塔……」
バルマン「エッフェル塔とモンパルナス・タワー、それにコンコルド広場のオベリスク…。」
ロナルド「そう、その通りです。とくに、このオベリスクこそマリー・アントワネットが処刑された場所に建設されました」
バルマン「では門といえば、それは、カルーゼル凱旋門、エトワールの凱旋門と、新凱旋門グラン・ダルシュということになりますか?」
ロナルド「そうです。素晴らしい答えです。ムッシュ・バルマン。パリの市街地図はありますか?」
バルマンが軍事作戦用の距離と方位が分かる大きな地図を取り出す。
ロナルド「そう、普段われわれが見ているパリの地図では気がつかないのですが……」
ロナルドは赤鉛筆で机にある定規を使い、地図にルーヴル美術館前の広場、カルーゼル凱旋門からエトワール凱旋門、そして新凱旋門まで、シャンゼリゼ大通りの上に線を引くと、芯が折れてしまう。
ロナルドは表情を変えずに、話を続ける。
ロナルド「二つの塔の関係は、人の目では見抜けません。この秘密の線は、聖なる女姓の器に導くミッテラン大統領のローズラインなのです。聖なるローズラインの作者、ミッテラン大統領は、秘密を隠すために巧妙な仕掛けをしました」
モンパルナス・タワーからエッフェル塔、新凱旋門を結ぶ中心線とエッフェル塔の前のシャン・ド・マルス公園とエッフェル塔、シャイヨー宮と結ぶ中心線は北東に三度ほどずらして建設されていることがわかる。

聞き入る警部たちの顔のアップ

ロナルド「ご覧下さい。中央線は北東に三度ほどずれています。そのために、今まで誰も、この秘密には気がつかなかったのです。この法則は、ミッテラン大統領がナポレオン皇帝エジプトのルクソール神殿と門の中心線の軸が六度ずれていることを模倣したのです。こうしましょう。そのチョコレートをお借りしてもよろしいですか?」

ロナルドはバルマンからチョコレートを受け取ると、地図を斜めに折りたたみ溶かしたチョコレートを、その地図の折り目の中に流し込む。
そして、地図をゆっくり傾ける。
顔を見合わせる3人。
ロナルド「そろそろいいでしょう」
ロナルド教授が地図を開くと、折り目に沿ってチョコレートが一本の線を描いている。その線上には、見事に、モンパルナス・タワーからエッフェル塔、そして、新凱旋門の三つのポイントが乗っており、先ほど赤く引いた線と交わっている。
パリの地図の上に、巨大なVの文字、神の聖杯が現れる。
ロナルド「ここが、恐らくミッテラン大統領がパリに残した暗号、ミッテラン・コードです」
バルマン「ここが!? しかし、なぜテロリストはこの場所を標的にしたのでしょうか?」
ロナルド「恐らく、死刑廃止を宣言したミッテラン大統領が残したミッテラン・コードに気がついたテロリストがその象徴として標的にしたと考えられます。これは、被害者がマリー・アントワネットの死に関係した子孫。そして、マリア・テレジアの怨念ということにつながります」
バルマン「では、日時は?」
ロナルド「パリが歓喜に満ちるフランス革命の記念日。7月14日です。」
ペレ「今日じゃないか!」


71コンコルド広場

オペラ「魔笛」の舞台。
火と水の試練に立ち向っている王子タミーノを王女パミーナが、魔法の笛を吹き助ける。やがて、夜の女王が、悪魔ザラストロを裏切ったモノスタトスと一緒に、神殿を襲撃しにやって来る。王子は「両軍が武器を捨てて、話し合いで平和な新しい希望の世界を建設しよう」と呼びかける。


72会議室

ロナルド教授が沈黙を破る。

ロナルド「『二つの太陽が出現する時間』この暗号には結構時間がかかりました」
バルマン「では、分かったのですね」
ロナルド「もちろんです。太陽は本当の太陽のことではありません。マリー・アントワネットとルイ16世が処刑されたコンコルド広場、これが『聖者の王の血が滴り落ちた大地』、ここに大きな太陽を想像させる観覧車が今年から再開します。これが一つ目の太陽」
バルマン「では二つ目の太陽は?」
ロナルド教授は壁に貼ってある一枚のポスターを指さす。
ロナルド「コンコルド広場の野外オペラ劇場で、今日の十八時から、モーツァルト生誕二五〇周年記念オペラが開かれます。オペラの開始に合わせて、観覧車にネオンの明かりが一斉に点灯されます。題目は確か、『魔笛』でしたよね?」
ロナルド教授は、自分を凝視する警部たちを見回しながら言う。
ハーバード「そうですが……」
会議室を沈黙が包む。
ロナルド「オペラ『魔笛』のラストシーン。新しい時代の指導者ザラストロが、太陽が夜に打ち勝ったと宣言します。全員がエジプトの冥界の支配者オリシスと、殺された夫を魔術で復活させた女神イシスとともに讃える合唱のうちに幕となります。
皆さん。『パリ』の語源をご存じですか?Parは『等しい』と言う言葉です。Issisは、冥界の支配者オリシスの妻、エジプトの女神『イシス』です。まさにその時こそ、パリが死者を魔術で蘇生させる冥界の女神イシスと同化するのです。そこで、舞台に大きな太陽が出現します。」
アメリー「その時が二つの太陽が出る時……」
ロナルド「そうです。帝マリア・テレジアの怨霊が冥界から呼び起こした魔界の王『赤い竜』の蘇生です。」
バルマン、腕時計を見る。
時計は19時12分を指している。
バルマン「終わるのは二十時……。あと39分!?」
バルマン、無線でベッソン副隊長に連絡する。
バルマン「テロの標的が分かった。5分後に出発だ!!」
ベッソン「了解しました」
バルマンは無線を切る。
困惑するバルマンがロナルドに尋ねる。
バルマン「でも、どこを探せば……?」
バルマンはロナルドを見つめる。
ロナルド「テロリストは次のように書いています。『聖なる竈に記された文字を持つ、三つの言葉が、時を告げる双頭の雄鶏の宮殿から水星の神を蘇らせる。水星の神は宇宙に突き出た脳をあぶりだし、薬草の神ディアン・ケヒトを呼び起こす』という言葉がありますね。邪悪な左脳と右脳というのはパリの旧市街地区のことでしょう。宇宙に突き出た脳」

ロナルド、カバンから写真を取り出す。
グラン・ダルシュのヘリポートが写された衛星写真である。
時計が19時15分を指す。

ロナルド「ここに『H』と書かれています。聖なる竈に記された文字というのは『H』です。 三つの言葉の二つはマリア・テレジア女帝の家の名前『Habsburg(鷹の城)』の『H』、もう一つが『Hatred』の『H』、憎しみという言葉です。ウィーンのシェーン・ブルン宮殿に造られた魔竜のモニュメントの頂上に輝くハプスブルク家の紋章双頭の鷲が、このグラン・ダルシュの屋上に、文字として、書かれているのです。
 最後の言葉に、『宇宙に突き出た脳』という記載があります。これは、哲学者カントが『手は外部に突き出たもう一つの脳である』と言っています。つまり運命を知らしめるのが『Hand』の『H』、手なのです。三つの言葉を合わせると、『ハプスブルクの憎しみを示す手』という意味になります」

バルマン警部が、ロナルドを見つめる。

バルマン「手……?」
ロナルド「暗号文の『双頭の雄鶏の宮殿』とはベルサイユ宮殿のことです。
庭園の中心に黄金に輝く木星の神が、水の中から宙に向かって石を投げている彫像があります。その手が爆発するのです」
バルマン「ベルサイユ宮殿が標的?」
ロナルド「いえ、パリです。グラン・ダルシュの広場に先週から、木星の神の『右手』と『左手』という彫像が展示されています」

ロナルドは、写真を取り出す。ロナルドは石を握っている右手の写真を指さす。

バルマン「まさか!? 街の真ん中で爆弾を仕掛けるなんて不可能です」
ロナルド「爆弾を仕込むことができるのは製作時です。この彫像作家ソフィア・ロドリコはこの彫像製作後に、アトリエは不審火による火災で消滅しました。また、ソフィア・ロドリコは行方不明になっています。この石の中に仕掛けられた小型の爆弾で、細菌カプセルが炸裂するのです」
アメリー「どうしてそう言えるのですか?」
ロナルド「暗号の言葉『邪悪な赤い竜が目覚め、大きく息を吐き、紅の炎が燃え盛り、小さき悪霊たちを解き放つ』、『薬草の神ディアン・ケヒト』、『ディアンの悪霊たち』というキーワードからそう推定されます。赤い竜の吐く息の中には猛毒があるという伝説があります。新種の細菌が仕組まれた爆弾に違いありません」

 ロナルド教授はそう言うと、壁に貼られた地図に赤いインクのペンで大きくグラン・ダルシュに五芒星の印を書き入れる。
バルマンは無線でベッソンに連絡する。
時計が19時17分を指す。

バルマン「爆弾処理チームを編成しろ。細菌爆弾を覆う拡散防止テントも用意しろ」

アメリーの表情が歪む。

バルマン「とにかく出発だ!」
ベッソン「了解しました!」


73パリ警察

爆発処理班の装甲車とパトカーが、物凄いスピードで警察署を出てゆく。


74ある会議室

ロナルド、アメリー、ハーバードが会議室に残っている。

アメリー「犯人は誰ですか……? 教授」
ロナルド「警部、特定は出来ませんが、指揮者のリー・ウォンが一番疑わしいと考えています。彼は一月ウィーンのあのモニュメントに行っています。完璧主義者の犯人は必ず、『魔笛』のラストシーンの太陽の出現に合わせて爆破させるはずです。その美学は守るに違いありません。ですから、犯人が爆破点火装置を持っているはずです」
ハーバード「爆破点火装置?」
ロナルド「暗号文の中に、『幽界の天籟の響きに合わせて』とあるでしょう」
アメリー「笛が悪魔の笛になる瞬間ですね。笛を持っているウォンが犯人?」

アメリーの口が薄っすらと笑っている。


75パリ市内 

装甲車の中でバルマンとベッソンが話している。

ベッソン「細菌拡散防止テントごと吹き飛ばされる可能性もありますよ」
バルマン「……」

そこにアメリーから無線が入る。

アメリー「バルマン隊長。テロリストの正体がほぼ断定できました。
テロリストは魔笛を指揮しているリー・ウォンという韓国人です。犯人は爆破点火装置を持っている可能性があります。最悪な事態に備えて狙撃準備を」
バルマン「了解。ベッソン聴こえたか?早急に配備しろ!!」
アメリー「こちらは起爆装置の捕獲に向かいます」

無線を切るバルマン。

バルマン「くそっ!! 起爆装置があるなら電波遮断幕だ……。ロナルドは、なぜ先にそれを言わないのだ」

バルマンは窓を殴る。

ベッソン「隊長。我々はあらゆる事態に対応できる特殊テロ対策班だと隊長に教えられましたよ」

隊員の一人がバルマンに箱を渡す。
バルマンはベッソンと握手を交わす。


76パリ市内 

数台のパトカーがフランス市内でサイレンを鳴らしながら猛スピードで走り抜ける。
ロナウド、アメリーがパトカーに乗っている。


77新凱旋門広場の彫刻展示会場

装甲車とパトカーが急停車する。
同時にバルマン警部とベッソン警部、数名の爆発物処理班が飛び降りて来る。
警官が一般市民を非難させる。
そこに、バルマン、ベッソンと数名の爆弾処理班が足早に彫像に向かう。

ベッソン「魔笛終了まであと約15分です」


78グラン・ダルシュ付近 高層ビル

軍隊仕様のハマーが数台停車すると、真っ黒な軍服に身を包んだ7名の狙撃兵がビルを駆け上がる。狙撃兵を護衛するように付近を警戒する数名の歩兵もいる。


79コンコルド広場

豪華にライトアップされたオペラ会場は満席状態。
観客席のあちこちで大きな扇子が動いている。
舞台中央の真上にハプスブルク家の家紋である双頭の鷲の紋章が見える。
そこに、ロナルド教授とアメリー警部が四十七名の特殊警察部隊を引き連れて、静かに会場に到着する。
時計は19時47分を指している。
舞台は最後の幕が開くと、夜の女王が侍女たちを従えて、悪魔ザラストロを裏切ったモノスタトスが神殿を襲撃しようとやってくるところである。
ロナルドは呟く。

ロナルド「あと、十三分後には、第二の太陽が昇る」


80新凱旋門広場の彫刻展示会場

ベッソンが彫像の右手付近に電波探知機をあてている。

ベッソン「右手には爆弾を示す異物が検知できません」
バルマン「ロナルド教授は右と確かに言った・・・・」
ベッソン「隊長、左の手を調べてみましょう」
バルマン「そうしてくれ」
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by masashirou | 2009-12-10 09:44  

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