映画「ミッテランコード」日本語脚本その4

34ロナルド超心理学研究所

ロナルドが連続殺人事件とマリア・テレジアの怨霊との関係を調べている。
そこにアメリーから電話が鳴る。

ロナルド「はい。ロナルドです」
アメリー「フランス公安局のアメリーです。フランスの殺人事件で調査を依頼したいのですが?」

ロナルドは言葉に詰まる。

アメリー「ロナルド教授?」
ロナルド「はい。」
アメリー「今からお会いできますか?」
ロナルド「いや、今回の事件の件は、全てロンドン市警に話しました。これ以上お話し出来ることはありません」
ロナルドは電話を切る。
―――コンコン。ドアのノックの音がする。
研究室のドアが開いて、
アメリー「フランス総合情報中央局のアメリーです」


35サンレモ駅

岩山をくり貫いて造られたトンネルの中にあるサンレモ駅の暗いホームの闇の中に、ウォンを乗せた列車は到着した。暗いホームに電車が入ってくる。
ウォンが足早に電車から出てくると、タクシーでサンレモロイヤルホテルに向かう。


36ロナルド研究所

アメリーとロナルドの長い沈黙。

ロナルド「事件の背後には、大きな歴史から生まれた怨念の影が見えてくるのです」
アメリー「どうしてそうお考えになるのですか?」
ロナルドは興味を示したアメリーの言葉に思わず顔を上げる。

ロナルド「今回の事件に酷似した事件が過去に二回あったことをご存知ですか?」
アメリー「いえ。初耳です」
ロナルド「全て、未解決事件でマリー・アントワネットの死に関係した子孫が殺害されています。今回の事件の被害者も同様です」
ロナウドは、調査した資料をアメリーに渡す。
アメリー「時空を超えた記憶の海。教授の研究テーマですね」
ロナルドは照れ笑いする。ロナルドはすぐに真剣な顔に戻る。
ロナウド「そこで、私はマリー・アントワネットの歴史的背景を研究しました。マリー・アントワネットの処刑、モーツアルトの死、そして、マリー・アントワネットの母であるマリア・テレジア。そして、ある楽曲がすべての謎を解き明かしたのです」
アメリー「ある楽曲?」
ロナウド「モーツアルトの『魔笛』です。夜の女王は自分の領土を奪った悪魔ザラストロへの復讐の思いを歌うのです。この歌が世界中のソプラノ歌手が一度は歌ってみたいと思う、有名な『夜の女王のアリア』です。歌詞はこんな内容です。
  地獄と復讐の炎が私の心の中に燃え上がる
  お前のために悪魔ザラストロが破滅の恐怖から逃れたら、お前はもう私の娘ではない。聴くがいい、復讐の神々よ。聴くがいい、母親の呪いの誓いを」
 ロナルド小さく歌詞にメロディをつけて口ずさむように語った。
ロナルド「この歌詞の内容は、まさに死んだ母親の怨霊が娘を脅迫する内容です」


37サンレモロイヤルホテル

ホテルの大広間でマリーが歌い終えるとそこにウォンが入ってくる。
会場から拍手が鳴り響く。
マリーはウォンを見つけると舞台に上がるように誘導する。
耳元でウォンが囁く。

ウォン「すいません。間に合いませんでした」
マリー「仕方ありませんわ」
マリーが微笑む。
ウォンが舞台に上がる。さらに拍手が沸き起こる。
拍手が静まる。ウォンがピアノを弾き始める。
オペラ『魔笛』の「夜の女王」である。
マリーは、ウォンのピアノに合わせて歌う。
演奏が終わると、観客が総立ちとなる。


38ロナルド研究所

ロナルド「フリーメイソンの高級幹部であり、有名な人気音楽家でもあったモーツァルトの埋葬に、友人の立ち会いもなく、今もって、その墓の場所が秘密にされているのはなぜか?」
アメリー「『魔笛』が原因?」
ロナルド「そうです。あくまでも、仮説ですが『魔笛』はモーツアルトがマリー・アントワネットにあるメッセージを伝えるために制作したのではないか?と」
アメリー「で、そのメッセージとは?」
ロナルド「『魔笛』のストーリーです」
アメリー「『魔笛』は、さまざまな解釈がなされていますが……」
ロナルド「最初は、教祖ザラストロは悪魔、夜の女王が善の存在として描かれている。しかし、後に、教祖ザラストロは聖なる存在、夜の女王が悪なる存在となります。逆転している。これが、最大の謎といわれているのですが、モーツアルトは明確な意志を持って、正悪の逆転劇を書いたと思うのです」
アメリー「それが原因で殺された?」
アメリーは理解できずに首をかしげる。
ロナルド「信じられないかもしれませんが、モーツァルトは、あのフリーメイソンに暗殺されたのかもしれません」
アメリー「でも、彼はフリーメイソンの高級幹部だったはずが?」
ロナルド「モーツァルトはオペラ『魔笛』をマリー・アントワネット王女に、新しい民主主義の時代の波を受け入れ、オーストリアへの亡命を進言するために、この作品を創作した。モーツァルトは、オペラ『魔笛』を通じて、双方が果てしなく殺し合う戦いを一刻も早く終結すべきであると訴えました。彼は、過激な血みどろの戦争を鼓舞するフリーメイソン集団には反対したのです。いつの時代も平和な無血の改革を主張する革命家は、過激な革命を望む急進派から暗殺され、抹殺される運命なのです。」

アメリー「モーツァルト敵に加担する裏切り者として毒殺された。人々はフリーメイソンの謀殺を恐れて、誰も葬儀に参加しなかったわけですね。」
ロナルド「オーストリアの急進派のフリーメイソンは王女の処刑を革命の象徴として、また、革命をオーストリアに飛び火させるためにも、王女の屈辱的なギロチン処刑は必要だったのです。」


39ロイヤルホテル スイートルーム

古びたテーブルに白い勾玉と黒い勾玉がカチッカチッとリズムよく音をたてている。
ウォンとマリーがベッドで一つになっている。
白と黒の勾玉が綺麗に重なり合うと、『TAO』の紋章になる。
ウォンとマリーの唇が一つになると白と黒の勾玉から双頭の鷲が現れる。
あたりは、光に包まれる。


40ウィーンの宮殿で開催された仮面舞踊会 イメージ映像

ウォン(モーツアルト)とマリー(マリー・アントワネット)が踊っている。
マリー「私にプロポーズしたこと覚えていらっしゃる?」
マリーが突然、マリー・アントワネットの幼少時代の女の子になる。
ウォン「今でも、忘れていません。私はあなたに永遠の愛を誓った者」
ウォンが突然、モーツァルトの幼少時代の男の子になる。
二人が微笑み、見つめ合うとウォンとマリーに戻る。
ウォン「『魔笛』は組織を裏切ってまで捧げた私のメッセージ…。なのに、なぜ?」
マリー「あなたのメッセージ確かに受け取りました。貴方が言うように、フランスを捨て新しい時代を受け入れることも出来ました。しかし、私は最期までフランス王妃として誇りをもって死ぬ決意をしました」
ウォン「ではなぜ、再び現代に蘇られたのです?」
マリー「母・マリア・テレジアから復讐を命じられました」
ウォン「確かに、パリの民衆はあなたを妬み、あなたの命を奪った」
マリー「いいえ。私は何も怨んではいません。ただ、母の命令には背けないのです」
ウォン「では、母上の怒りを静めてください。復讐は新たな憎しみしか生まないのです。欧州の国々が争い憎み合う時代は終わりました。また、新しい時代が始まろうとしているのです。ヨーロッパは一つになろうとしています。時代が変わったのです」
マリーはうなずく。
マリー「私に何ができるの?」
ウォン「この復讐を止めていただきたいのです」
マリーはウォンを見つめる。


41ロイヤルホテル スイートルーム

マリーとウォンは同時に目を覚ます。
マリー「また、あの時代と同じことが起こるのでしょうか?」
マリー・アントワネットが呼び鈴をロザリーに渡す―――。
モーツァルトが毒を飲みもがいている―――
マリー・アントワネットの首が飛ぶ―――
マリア・テレジアがフランスからの手紙を読み激怒する―――
マリーは悲しみのあまり目が潤む。
ウォン「無益な復讐を二人で終わらせるのです。希望の光は暗黒の闇から誕生する。僕は不幸な出来事が必ず幸福の道に繋がっていると信じています」
ホテルの電話が鳴りウォンが目を覚ます。
ウォンが電話を取ると電話は切れている。
ウォンが振り返るとマリーの姿はない。
窓を開けると、リビエラの黒い海が見えた。黒い雨雲が海の上に立ち込めていた。冷たい風がカーテンを揺らした。水平線の向こうに貨物船が見える。稲妻が貨物船のシルエットを浮かび上がらせる。ウォンは自分が黒い海に浮かぶ小さな貨物船のように思えた。
 雷鳴が小さく、水平線の彼方に轟いていく。


42ロナルド研究所

アメリーの携帯電話のライトが消える。
アメリー「ロナルド教授のお話が確かだとすると、犯人は亡霊?」
ロナルド「そうは言いません。あくまでも、私の研究が導いた犯人像です。それは、マリー・アントワネットがパリ市民に対する怨みを晴らすために、今回の事件を計画したということです」
アメリー「怨み?」
ロナルド「そう怨みです。フランス革命の屈辱的な裁判で、ギロチンで首をはねられた怨みです」
アメリー「なぜ、それが今、なんですか?」
ロナルド「モーツァルト生誕二五〇周年。おそらく、モーツァルトとマリー・アントワネットの魂は、われわれが想像する以上に深く繋がっているのです。複数の犯人がいると思われます。つまり、今に生きる複数の人間が、同時に何らかの記憶を共鳴して、その意思に従って動いている可能性があります」
アメリー「操られている? ……過去の亡霊に?」
ロナルド「そういう可能性もあると……」
アメリー「過去の怨みを晴らすためのテロ?」
ロナルド「フランスがEUの指導者として、巨大な経済圏を作ろうという動きがあります。時代背景もナポレオンによってフランスの領土が拡大するフランス革命の時代に類似しています」
二人の長い沈黙が続く。
そこに助手のマイケルが入ってくる。
マイケル「教授!やはり、マリー・アントワネットの首が無くなっていました」
マイケルは額の汗をハンカチで拭う。
ロナルド「そうか、やはり……」
アメリー「それがこの事件と関係があるのですか?」
ロナルド「過去の事件とすべてが一致。私の研究を信じるならば、最悪の事態を想定していただきたい」


43フランス コンコルド広場

警察官が職務質問しようと中国人達に近寄る。
中国人達があわてて逃げ出す。
トニー巡査が太極図のロゴが入ったTシャツを見る。
アンソニー巡査「とまれ!! とまらないと」
パンッパンッ―――銃声
トニー巡査が太極図のTシャツを着た中国人に向けて発砲する。
倒れる中国人。
二人の巡査は残りの中国人を追う。
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by masashirou | 2009-12-10 09:40  

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